*こちらは試乗当時に書いた文章です。今はなき、当時浜松にあったランボルというお店で試乗しました。
中古でも1300万円はくだらない高級車。さすがにコックピットに潜り込むときは軽く緊張しました。内装は これみよがしな高級感こそありませんが、細かいところまで張られた皮やアルミ無垢のシフト周り等、お金がかかっていることは一目瞭然。はやる気持ちを押さえながらもキーを捻り・・・といきたいところですが、イモビライザーが装着されているのでエンジン一つかけるにも色々と儀式が必要なのです。面倒ですが、ちょっと昔のスーパーカーを彷彿させていいかんじですね。
ブォン!!と気持ち低めのサウンドとともに至極のV8ユニットが目を覚ます。その後はコォォーーーーーーーといかにもフェラーリらしい高めのアイドリング音が続き、気分が徐々に高まっていきます。ちなみにシフトはF1シフト(クラッチレスMT)。難しいクラッチワークとは無縁で、右手のパドル操作一つで1速に繋がり、ゆるゆるとモデナはその大柄なボディを進めはじめました。
まずはショップスタッフに同乗してもらい、コックピットドリルを教わりつつ練習走行の開始です。
”シフトアップ時はアクセルから足を離さないほうが実はスムーズにシフトできます”
ほうほう、それは意外。
”まずは3000回転を目安にシフトしてください”
3000回転?高回転型ユニットの3000回転といえば、まだトルクピークにも達しないスカスカなところじゃないか?ずいぶん慎重なんだな。S2000なら坂も登らないぞ。
敷地から大通りに。前に車のなくクリアラップ。じゃあ行きますか。3000回転ね、ハイハイ。アクセルをゆっくり踏み始めぇブワァァアアアアーーーー!!!うわ!なんだこの鬼のような吹けあがりは!!!タコメーターは既に4000回転超!急いでシフトアップ。メーターの針がストンと落下するのも一瞬、踏み込みと同時に1速と全く変わらぬ速度で、より激しくイキオイを増す車体!!!2速で既に法定速度。すごいトルク感。すごい加速感。そして経験したことのない吹けあがり!!これがモデナ!
”交差点では特に気をつけて下さいね。直ぐにスピンしますから。”
それも納得。フェラーリって高回転命で低速スカスカなイメージだったけど、こんだけトルクがあって吹けあがりが速けりゃ関係ないわ。
いよいよ高速ステージへ
練習走行も終り、いよいよツーリングの開始です。先導役のボクスターを先頭に、カウンタック、マラネロと続き、モデナは最後尾からついていきます。まぁ癖があるとはいえクラッチレスですから、ちょっと慣れれば市街地走行はラクラク。前を行くカウンタックは発進加速の度にかなり大変そうですが、こちらは調教されたサラブレッド。どちらかと言うと、馬というよりジャガーに近いかもしれません。獰猛な唸り声をあげるモデナの手綱をしっかり握り、自らのテンションを押さえつつ、ひたすら静かに高速へ向かいます。爆発させる時を睨みつつ。弓を引き絞り、我慢できなくなる限界まで力を蓄えるように。
いよいよ高速ステージ!我慢も限界。60kmからシフトを落とし、床までアクセルを踏みつける!
クワァァァガガガガガガァァァアアアアアア!!!!うわ、壊れたのか!??と思うほど、ある回転数からマフラーが外れたのかと思うほどバイブレーションが高まります。ものすごい加速感!間違いなく、今までに乗ったクルマの中で最速。操作性も348とはまったく別モノで、まるでポルシェのようなボディ剛性と正確性。しかし、ポルシェとは比較にならないエモーショナルな雄たけび!!これがフェラーリか!!
トロトロ走るマラネロをさっさとパスし、カウンタックも続けてパス。しかしカウンタックのドライバーは遊び心があるようで、加速して追いついてきます。同乗者と一瞬目を合わせ、瞬時に意志疎通。いくでしょ、これは。2速からもフル加速!!弾けるタコメーター!
パイロンのように後方へ跳んでいく隣のレーンの車たち。”ヒイーーフゥ-!!”思わず雄たけびを上げる同乗者。さすがに○○○km付近ではフロントの接地感が薄れてきたので、アクセルオフ。高速道路の最後を締めくくるトンネルが見えてきました。あえて速度を落とし車間をキープ。トンネルに向けての最後の加速に備えます。窓を開け、トンネル進入直前から加速開始!ファァァァァァカァァァァァァァアア!!
まさしくF1サウンド!素晴らしい!!サウンドフェチな私にとって、トンネル内のモデナサウンドは、まさしく至宝と言える生涯で最高のサウンドを奏でてくれました。
高いボディ剛性。車重を感じさせない機敏かつ正確なハンドリング。超官能的なエンジン。冷静に考えられる今、モデナは私が試乗したクルマの中でもっとも欲しい車の1台です。
しかし、そんな素晴らしかったはずのモデナの印象もあまり思い出すことができないのです。
何故なら、私はその後にランボルギーニ カウンタックに乗ってしまったから。