遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

堅手粉引(?)茶碗

2021年08月06日 | 古陶磁ー高麗・李朝

今回の品です。

古い木箱に入っています。

箱には、「粉引茶碗」とあります。

 

古い更紗に包まれていました。

 

 

径 13.8㎝、高台径 4.6㎝、高 6.8㎝。時代不明。

 

見込みは平凡で、これといった見所はありません(^^;

 

裏側は、それなりに時代を感じさせます。

高台は、三日月高台、内側には兜巾も見られます。いくつかの雨漏りも。

外側には、火間(釉薬の掛け残し)が。

これは、粉引(粉吹)茶碗の約束ですね。

箱の底には何やら謂れが書かれています。

この品は、加藤清正の遠縁にあたる、尾張国加藤仲左衛門の所に伝わった古物で、寛政元年に、柳星山(常念寺)に招来した。

「寛政元年ノ事」と書かれているので、この箱に入れられたのはもう少し後でしょう。箱の状態からすると、江戸後期~幕末というところでしょうか。

で、問題の「粉引茶碗」です。

粉引茶碗は、粉吹茶碗とも言われ、高麗末期から李朝初期にかけて焼かれた茶碗です。鉄分の多い素地に白化粧をし、薄く釉薬をかけた物で、白い粉が吹いたような感じがすることから、このように呼ばれるようになったそうです。

今回の品は、それらしい姿はしていますが、粉が吹いた雰囲気はありません。素地もそれほど鉄分が多いとは思われません。

手にとってみると、重く冷たく感じます。しかも、硬い(^^;

これは、いわゆる堅手茶碗に入る部類の品ですね。粉吹きなら、柔らか手です。柔らかく、温かみがあるはず。

むしろ、毎日使っている、10年選手のコーヒードリッパーの方が、ふわっとした温かさを感じます(^^;

今回の茶碗が、悪意のある品物かどうかはわかりませんが、看板に偽りあるのは確かです。

粉引茶碗は、茶人が朝鮮の雑器を茶器として取りあげた物ですが、当初から稀少品で、簡単に入手できる物ではなかったでしょう。

ということで、幕末期に何とかそれらしい品を「粉引茶碗」に仕立て上げた・・・・これが、今回の品の一番マシなストーリーだと思います(^.^)

ps:今一度、箱を眺めてみました。箱の表に、「粉引 茶碗」と書かれていますが、よく見ると、「粉引」と「茶碗」の文字が異なるのです。しかも、「茶碗」の文字が擦れているのに対して、「粉引」は新しい。箱には、もともと、「茶碗」としか書かれていなかったのですね。それに対して、近年、「粉引」が書き加えられた(^^;

ということで、幕末期、火間のあるそれらしい朝鮮茶碗に対して、「粉引茶碗」という名称は使わず、ただ、「茶碗」と箱書きされた堅手の茶碗が、今回の品だといえるでしょう。

元々の箱と茶碗は素直な物だったのですが、そこへ「粉引」を加えた悪巧みに、危うく一杯食わされるところでした(^.^)

 

 

コメント (6)
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