先回、李朝の染付大徳利を紹介しましたが、どうも腑に落ちない品でした。
それが、これ。
疑念が疑念をよび、そういえばここがおかしい、あそこも怪しいとなって、全面的に見直すことにしました。
まずは、はっきりとした箇所から。
胴に大きなニュウがあります。写真では見難いですが、ニュウの両側、釉薬が剥がれたようになっています。ナイフでつついたら、ボロボロと剥がれてくるではありませんか。
厚めに塗料がぬってあったのですね。さらに、ニュウから離れるにしたがい、薄塗りになっています。芸が細かい。でも、時間がたつにつれ、厚塗りの部分から少しずつ自然に剥がれてきたようです。化粧みたいなものですね(^^;
周辺の薄塗り部もふくめて、一皮むけば、これこの通り。本当の顔が表れました。やはり、この方が素直です。釉薬の自然な光沢が戻りました。
次に疑ったのは首です。胴のニュウのようには、はっきりしていませんが、妙にのっぺりとした質感です。そして、質感が違う所がグルッとあります。これは怪しい。継ぎ目では?
ナイフで削ると、上側の方が柔らかく、削れてきます。そして、継ぎ目表れました。
下は陶磁器なのですが、首(10㎝ほど)の部分は、石膏。その上に、塗料が塗ってありました。やはり、継ぎ目部分には厚く、周辺になるにつれて薄く、全面的にぬってありました。しかも、まっすぐに継いでない。首が曲がっています。これなんかも、以前の段階では、少し傾いだ様子が味わいだ、となっていました。しかし、その実態は、あばたもえくぼではなく、あばたはあばた(^^;
石膏で作ったのですから、首の部分がのっぺりしているはずです。当然、内側に轆轤目もありません(^^;
一方、大きな疵のない胴の部分には、ボヤッとした染付で草紋が描かれていますが・・・・
少し研磨剤で擦ってみると、一皮剥けます(左側半分弱)。
力を入れて全面的に磨けば・・・
塗料がとれて、本来の染付草紋が表れました。
反対側の染付草紋も同様に綺麗になりました。
結局、この大徳利のぼやっとした感じは、
李朝の素朴な造りによるものではなく、
大疵、大欠けを補修し、灰色がかった塗料で器全体を糊塗した結果の産物だったのです(^^;
今回の品は、たとえ完品であっても、ワーワーいうような代物ではありません。いわば、駄品。ま、こんなのが一個あってもいいかな、ぐらいのつもりで入手した物です。
しかし、そこに落とし穴が😢
こんな品に、手間暇、金をかけてまで、人を引っ掛けるような細工をするはずがない、という駄品バイアスがかかっていたのですね😢