大浦湾の地盤改良工事のためのサンドコンパクション(SCP)作業船は、既に12月初めから金武湾や中城湾港に待機しており(本ブログ12月5日、12月7日参照)、年内にも大浦湾に入ってくるといわれている。今日(25日)、作業船を大浦湾に回送し、明日から作業に着手するという情報があったので、県の担当課にも確認したが、「現時点で防衛局からの連絡はない」とのことだった。
そもそも、大浦湾では地盤改良工事に着手する準備が整っておらず、未だ、SCP工法で砂杭を打ち込むような状況ではない。さらに年末に近いこの時期に、地盤改良工事を始めることなど考えられない(ただ、A護岸工の鋼管打設の際のように、本施工の前に試験杭を打設しようとしているのかもしれない。ただ試験杭であっても、後述のように、事前に敷砂等の対応が必要である)。もし、入れるとすれば、「2024年のうちにSCP作業船を入れた」という形式を整えることだけが目的ではないかと思われる。県民を諦めるさせのためのものだ。
国が代執行で承認した設計変更申請書では、地盤改良工事の前に、トレミー船で地盤改良する海底一面に厚さ1.5mの敷砂を投入するとされている(設計変更申請書 P26、環境保全図書 1-96)。これは、地盤改良工の杭打設による汚濁防止と圧密促進を目的としたものだ。辺野古新基地建設事業では、他にA護岸工の中詰土等を合わせれば総量394万㎥もの海砂が必要となる。これは沖縄の年間海砂採取量の~3年5年分にもなる膨大な量だ。
海砂採取は環境・海底地形・水産資源等への影響が大きく、西日本各県では海砂採取そのものを禁止、少なくとも年間採取量の総量規制を設けている。全く規制がないのは、沖縄県のみである。沖縄平和市民連絡会は、数年前から、海砂採取の総量規制を求める取組を続け、いくつかの改善策も講じさせてきた。
辺野古への海砂採取状況を調べるために、2024年の海砂採取許可書を公文書公開請求したところ、24件の許可書が開示された。海砂採取は、沖縄砂利採取事業協同組合、沖縄海岸資源開発㈱が中心で(その他は数社にすぎない)。東村新川沖、名護市天仁屋崎沖、バン崎沖、安部沖、国頭村安波沖、佐手沖、伊平屋島沖、大宜味村大兼久沖、渡嘉敷島沖等で採取されている。
特に注目されるのは、安部や天仁屋沖での採取許可書に、「採取の際には事業者において、採取区域や採取期間等の説明を関係各区(安部区、嘉陽区、天仁屋区)に行うこと」と記載されていることだ。
11月28日の沖縄タイムスは、「11月25日、海砂採取業者が名護市安部区を訪れ、海砂採取に同意すれば200万円の協力金を支払うと申し入れたが、安部区は26日の総会で安部沖での海砂採取はさらなる環境変化の要因になるとして反対する決議をあげた」と報じた。少なくとも安部区は同意しておらず、説明会も開かれていないので、上記の許可条件は満たされておらず、このまま安部沖での海砂採取が行われれば、許可の取消が必要となる。
県は12月10日の県議会一般質問で、「供給先が辺野古の許可は、本年11月末現在で10件、約25万㎥。実際の採取は未だ確認されていない」と答弁した。現状では未だ、辺野古新基地建設事業のための海砂採取はしていないのだから、SCP作業船が稼働するはずはない。もし、敷砂なしで地盤改良工事に着手すれば、設計変更申請書の内容に違反する。当面、厳重な監視が必要となる。
金武湾で待機中のサンドコンパクション作業船