沖縄防衛局は、大浦湾の地盤改良工事を検討するために、土木工学の「有識者」による技術検討会を立ち上げた。しかし、この技術検討会の委員は、半数が政府系機関の出身者で占められている。9月6日の第1回検討会の議事録を見ても、防衛局の計画に「お墨付き」を与えるものにすぎないことは明らかである(下記のブログ参照)。
・2019.10.10 ブログ(技術検討会の議事録が公開された)
特に問題となるのは、9月6日のブログにも書いたが、技術検討会委員長の清宮理早大名誉教授である。彼は、もともとは大学の研究者ではなく、運輸省港湾技術研究所出身。さらに早大を退官後、ジェコス㈱の取締役に就任している。この会社は仮設鋼材のリース会社で、JFEホールディングの子会社である。
<参考>
JFEスチールのホームページにはジェコス㈱が系列会社としてあげられている。同社の業務内容は下記のとおりだ。
地下基礎工事等、建設現場における仮設材の賃貸・販売および設計施工、加工製品の製作・販売、仮設橋梁および建設機械の賃貸等を行っています。 |
JFEホールディングは、今回の工事で大浦湾のケーソンを製造すると言われているJFEエンジニアリングの親会社でもある。
さらに大きな問題が判明した。JFEホールディングの中核会社は、川崎製鉄と日本鋼管が合併してできたJFEスチールという製鋼メーカーだ。JFEスチールの主要製品の一つが鉄鋼スラグである。
(JFEスチールの「鉄鋼スラグ製品総合カタログ」より)
鉄鋼スラグは、製鉄の過程で大量に発生する滓で、年間約4000万トンも生成されている。そもそもは廃棄物だが、近年はセメント製造用原料として使われるだけではなく、コンクリート用骨材、道路用の路盤材として再利用されている。そして最近になって増加しているのが、サンドコンパクションパイル工法等の地盤改良工事で、砂の代わりに利用されることが多いという。
今回の大浦湾の地盤改良工事では、650万㎥もの大量の砂が必要となるが、これは沖縄の年間海砂採取量の3~5年分にもなる。海砂採取による環境破壊は深刻なことから、どこから砂を調達するのかが問題となっている。
そこで浮上しているのが鉄鋼スラグの利用だ。防衛局も、地盤改良工事の「検討報告書」(2019.1)でも、使用材料として「スラグ」もあげられている。
しかし、鉄鋼スラグは、フッ素や六価クロム等の有害物質を含み、さらに強度のアルカリ性を示すことから、大浦湾の環境に与える影響が危惧されている。かっては、瀬戸内海の塩田跡に鉄鋼スラグを埋立てて周辺の海藻が全滅したり、八ツ場(やんば)ダム(群馬県)の移転代替地に鉄鋼スラグが使われて六価クロムが検出されるなど、各地で大きな問題が発生している。
ケーソンを製造するというJFEエンジニアリング、そして地盤改良工事で使用される可能性がある鉄鋼スラグを扱っているJFEスチール。これらJFEホールディングの関連会社と同系列のジェコス㈱の取締役を技術検討会の委員長に据えたのだから、これはもうあまりに露骨な人事と言わざるをえない。