今日(4月8日)、国土交通大臣は、軟弱地盤改良に伴う防衛局の辺野古・設計変更申請を不承認とした沖縄県の処分を取消す裁決を出した。
国が、私人の権利救済を目的とした行政不服審査制度を使うことについては、多くの行政法学者からの批判が相次いでいる。同じ内閣内で、それこそ右手で提出した申請書を左手で受け取って認めるようなものだから、茶番としか言いようがない。
しかし、不承認を取消しても設計変更申請が承認されたことにはならず、これだけでは防衛局は変更申請部分の工事に着手することはできない。そのため国土交通大臣は前記の裁決と同時に、地方自治法第245条の4第1項に基づき、沖縄県に対して、本件申請について4月20日までに承認するようにとの勧告を行った。
これはまだ「勧告」だから県は無視すればよい。国土交通大臣は次に前条の4第2項に基づく「是正の指示」を出してくるだろうが、それも県が無視すれば、国は「違法確認訴訟」や「代執行訴訟」を行う他ない。防衛局が設計変更申請部分の工事に入ることができるのは、国がこれらの法廷闘争の全てに勝利してからなので、遥か先のことだ。
辺野古新基地が完成するのは、国が変更部分の工事に着手してから12年先である。国は口を開けば「辺野古新基地建設が普天間基地の危険性を解決するための唯一の手段」というが、辺野古にこだわることが、逆に普天間基地の危険性を長く放置することになることは明らかだ。
裁決書にも目を通したが、防衛局の言い分をそのままコピペしたものにすぎず、目新しい点はない。
B27地点での地盤の強度を調べるボーリング試験を実施していないことについても、「3地点での力学的試験の結果から推認でき、合理性がある」としている。しかし、全76地点のうち8割の地点でボーリング試験を実施したのに、海面下90mまで軟弱地盤が続いている最も重要なB27地点で何故、ボーリング試験を実施しないのか、それこそ合理性のある説明はない。
隣のB28地点では、海面下100mまでボーリング試験を実施したが、40日で完了した。B27地点のボーリング試験は、準備期間を含めても2ケ月もあればできる。県の不承認の最大の理由は、B27地点でボーリング試験を実施していないという点だから、実際にボーリング試験を行って問題がないというデータを示せば、県の今回の不承認理由はなくなってしまう。これからの法廷闘争で決着が着くまで時間はたっぷりとある。
何故、防衛局はB27地点でのボーリング試験実施をかたくなに拒否し続けるのであろうか?