現在、与那国町は、島南部の樽舞湿原一帯を浚渫・掘削し、全長約1.2km、幅約300mもの巨大な新港(比川港湾)建設を政府・県に要請している。「有事」に備え、自衛隊等が使用するためのものだが、当然、米軍の使用も想定されているのだろう。この樽舞湿原は、保全配慮が必要な環境省の「重要湿地」にも選定されている貴重な湿原であり、このような巨大な港湾建設は許されない。
Aさんから相談があったので、与那国町に対して、「樽舞湿原で予定されている新たな港湾計画に関する全ての文書(但し、国に提出した文書や、国との協議録、--- 等を含む)の情報公開請求を行った。
この開示請求に対し与那国町は、昨年11月14日の糸数町長の国土交通大臣宛の要請書と計画平面図だけを公開し(末尾に添付)、他の「計画文書、設計図書、国との協議議事録、要請先へのアポイントのための文書」等は全て「不存在」として、「請求を拒否する」と通知してきた。その理由は、「国への要請は町長のみであり、協議議事録は作成していない」、「要請書以外の計画文書は未策定」、「要請先へのアポイントは国会議員事務所へ依頼しており、メールのやりとりはない」という。
しかし糸数町長は昨年11月だけではなく、2022年9月、23年4月、7月、11月等にも政府・自民党関係者、沖縄県等に要請書を提出しているが、それらの文書には全く触れていない。
また、要請の際の議事録等についても、町長が公務出張したものであるのに作成していないというのは信じがたいことだ。何故、町長が、何時、誰と会い、どのような要請をしたのかという文書がないのか?
今回、情報公開請求をして初めて知ったのだが、与那国町の情報公開条例は、国の情報公開法、沖縄県や多くの都道府県の条例とは異なった素晴らしい規定がある。次のような条文だ。
第10条 実施機関は、公開請求に係る公文書を保有していないときは、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
(1) 公開請求に係る公文書を作成し、又は拾得することが可能であり、かつ、そのことが町の利益に資すると認められるときは、新たに文書を作成し、又は取得して当該文書等を公開する旨の決定をする。
⑵ 公開請求に係る公文書を作成し、若しくは取得することが不可能であるとき、又は新たに文書等を作成し、若しくは取得することに合理的理由がないときは、不存在であることを理由として公開しない旨の決定をする。
国や他の都道府県は、請求に係る文書がない場合は「不存在」ということで終わりだが、与那国町の条例では、「不存在の場合、その文書を作成する」というのだ。
今回、与那国町長は、この10条2項を適用して、「請求を拒否する」としたが(この強い表現にも驚いたが)、町長の要請の際の記録等は、今からでも作成が可能であり、町政に資するという合理的理由があるから、新たにそれらの文書を作成しなければならない。
ともかく今回の不開示決定の取消しを求め、町長に対して、行政不服審査法に基づく審査請求を行う。
(開示されたのは、この計画平面図と下の要請書のみ。計画平面図は原版はカラーだが、モノクロのA4版であり、文字も小さくてほとんど読めない。)