辺野古新基地建設事業は、昨年12月末、大浦湾海底に敷砂が散布され、本年1月には地盤改良工事のための砂杭打設が始まった。今後、同事業では、地盤改良工事(敷砂・砂杭)やA護岸・ケーソン護岸の中詰材等のために、約400万㎥という大量の海砂が必要となる。沖縄の年間海砂採取量は、ここ数年、約80~140万㎥程度であるから、3年~5年分もの海砂が辺野古新基地建設事業のために使用される。
海砂採取は、海底の泥を根こそぎポンプで吸い上げ、砂だけをふるい分けた後に、礫・泥等を高濃度の濁水とともに海に戻すという荒っぽい方法(末尾の写真参照)で行われるため、自然環境や水産資源、さらに海岸の浸食・砂流出等、深刻な影響を与える。1月30日、名護市安部区長が、「海砂利採取の中止の陳情書」を提出されたが、そこでも、許可区域を無視した岸近くでの採取や、早朝・夜間での作業による騒音被害、海岸の地形変化等が訴えられている。今後、辺野古新基地建設事業が本格化すれば、海砂採取はさらに増大することから、その影響はさらに深刻なものになるだろう。
県は、海砂採取の総量規制について、「海砂利は建設用骨材等として必要不可欠。総量規制については慎重に検討していく」と繰り返しているが、大量の海砂採取は、逆に建設用骨材等の需要にも支障となるおそれがある。海砂採取の総量規制に踏み切ることが喫緊の課題である。
こうした状況の中、2月14日(金)に、沖縄県土建部長への申入れを行うこととなった(本部塩川港のベルトコンベアの許可条件に違反した使用問題と海砂採取の規制を求め、本部町島ぐるみ会議と沖縄平和市民連絡会が共同して取り組む)。
海砂採取問題については、主に次の4点を申し入れる。
1.海砂採取の「総量規制」について
土木建築部長は、昨年2月15日の沖縄平和市民連絡会の要請の際、「海砂採取の総量規制については、漁業関係者や採取業者、学識経験者等の意見を聞く作業が(コロナの影響等もあって)途中で滞ってしまったが、今後進めていきたい」と回答した。また、昨年5月27日、辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会の知事要請後の面談の際、土建部長は、「(総量規制の問題については)関係者への意見聴取や各県の状況調査については、今年度から調査を開始していきたい」と明言している。
その後、沖縄県は、総量規制に向けた検討作業をどのように行ったか、具体的に説明されたい。
2.県が許可書で指示した内容を遵守させること
県は、昨秋許可した名護市北部東海岸沖の3件の許可書で、「採取区域や採取期間等の説明を関係各区(安部区・嘉陽区・天仁屋区)へ行うこと」等と指示したが、採取業者は安部区に説明がないまま採取を開始してしまった。
市民からの訴えを受けて、県は当初、業者に「採取には3区への説明が必要。許可書の内容を遵守するように」と通知していたが、1月30日、土木建築部統括監は、名護市安部区長の要請の場で、「3区への説明は名護市長からの要請であり、許可条件ではない。中止を求める要件には該当しない。業者には昨日、採取承認と伝えた」と対応を変更してしまった。
県の許可書には、「許可の条件」以外にも、「市町村からの要請」、「採取船の積載量の順守」、「損害の賠償等」、「廃止届」、「権利の譲渡禁止」、「認可の取消し」、「特記事項」等の指示事項がある。「許可条件」だけではなく、他の指示事項も、遵守させる必要があるのは当然である。
特に、「3区への説明」、「毎月の海岸線の写真撮影・報告」、「ジュゴンの回遊への影響の軽減策」等は、「名護市長からの要請」だが、県として、「遵守すること」と指示した項目である。
許可書の「許可の条件」以外の指示事項についても遵守させるよう徹底すること。
3.岸から10Km以上離れた航行の遵守
許可書の「特記事項」では、辺野古新基地建設事業の環境保全措置である「(ジュゴン保護のために)岸から10km以上離れて航行すること」と指示している。毎月5日までに提出させる報告書類に、採取船の航行履歴が分かる資料を添付させること。
4.「海洋保護区」(共同漁業権区域を含む)での海砂採取の禁止
沖縄県海砂利採取要綱では、自然公園区域、自然環境保全区域等での海砂利採取を禁止しているだけだが、環境省が指定した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」や、同省が指定した「海洋保護区」である共同漁業権区域での海砂採取も禁止すること。
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下は、大宜味村沖での海砂採取の状況。凄まじい汚濁が広がっている。
(2024.7 沖縄ドローンプロジェクト撮影)