四国といえばカルスト地形、カルスト地形といえば鍾乳洞という
連想で、観光洞ではなく、自由にケイビングできる洞窟はないかと
調べていたら、野村町に羅漢穴(らかんあな)という洞窟があると
いうことがわかった。
昨晩、コテージで福山在住のいーぴんM本氏を加え、11名と
なった我々は、山岳部では初めて、ケイビングに挑戦することにした。
【メンバー】
Mr.Dash、ともちゃん、宇宙人I村氏、テレマーカーI島氏、
元気者ふみちゃん、”タイプR”N尾氏、フットワークT橋氏、
ポチK本さん、エレガントF原さん、カメラマンY井氏、いーぴんM本氏。
あまり資料が整わないままのケイビングであるが、カメラマンY井氏が、
あらかじめ、ケイビング経験者である大学時代の友人から対策を聞いて
くれていたので、それに従い、上下カッパのつなぎ目にはテープで目止め
(本来は上下つなぎが最適)し、ヘルメットにヘッ電を装着。足回りは
沢靴で武装した。もちろん洞窟入口からビニール製の荷造り紐を這わせる。
ハーネスなどはつけず、今日はザックも持たない。
羅漢穴は、斜面の中腹にある。アクセスは2通りあり、上の林道から下りて
くるものと、下の林道の舗装が切れるところから沢を渡り、植林帯を
登っていくものである。
我々は、下の林道からアプローチした。車は5台ほど林道脇の草地に置ける。
地元の山菜採りの人が通りかかり、ごくろうさんやねぇと言いたげな雰囲気。
洞窟に近づくにつれ、なにやら冷たい風が吹いてくる。入口には洞内説明の
看板がある。荷造り紐を入口に固定し、若手メンバーを先頭に探検開始だ。
入口からしばらくは天井も迫り、狭い。
とにかく、ドロドロになるという話だったが、のっけから滑る、滑る。
暗闇をよろめきながら進むのだが、頭をよくぶつけてしまう。ヘルメットの
ありがたさを実感する。
さっそく、コウモリが天井からぶら下がっているのを発見した。
やがて洞内は広々とした空間になる。高さ3~5mはあろう。
こんな空間が自然にできるというのが不思議でならない。
鉄製の階段があった。唯一の公式な人工物か。
鍾乳石の柱がいくつもあるY字分岐で、まず右に進む。
泥の坂を用心しながら進む。何人か、転倒しているようで、
悲鳴が絶えない。
右の道の終点には、地獄に続くような細い竪穴が続いている。
「マサカリ落ち」というらしい。人一人がようやく通れそうだが、
今はザイルを持参していない。仮にあったにしても、11人が通れる
わけない。どこまで続いているかの保証もない。ザイルが泥まみれに
なるのも、あとあと面倒だ。竪穴には、古いロープが垂れていたから、
過去に誰か奇特な人が潜っているに違いないが、我々は遠慮した。
もとの分岐に戻る。テレマーカーI島氏が「こっちにも道がある」
と云ったが、いや、それは来た道だって! それほどに洞窟の暗闇では
往路と復路の風景が変化して見える。
上下感覚もなくなるようで、二む、三歩のアップダウンは把握できる
ものの、全体として、登り基調なのか、下りなのかが、よくわからなくなる。
そいでもって、今度は左洞へ。一抱え以上ある大きな鍾乳石柱がある。
足元はぬかるみがひどい。
「これかな?」と思う程度の「一の池」を通り抜け、長細い水溜りに
右から岩壁が迫る箇所に出る。「二の池」だろうか。
泥水を避けるようにトラバースするのが案外難しい。
先頭集団が、「天井に絶対に頭をつけないように」と知らせてくる。
「なぜ?」「いや、来たら分かります」
低くなった天井をかいくぐり、横目でおそるおそる見たら、
なんと天井にびっしりとコウモリが留まっているではないか。
このおびただしい数! 動物園でも見られない光景だ。
これだけで、来た甲斐があったというものだ。
いきなりヘッ電で照らされ、夜行性の彼ら、彼女らは、
「なんだなんだ、迷惑な」とでも言いたげに、小刻みに身体を
震わせている。超音波でも測定しているのかな。
洞内はケモノの臭いというか、アンモニア臭がたちこめ、
床には時折、コウモリの真っ黒な糞が広く積もっていた。
滑りやすい泥といい、糞といい、長居はしたくない。
洞窟は「三の池」で一応の終点となる。水が青く澄んでいるが、
生態系を考えると飲む気は起こらない。
よく見ると、水面の右奥に隙間がある。洞窟としては続いている様子だが、
大半が水に没しているようだ。これも、潜って行って確かめる気力は
もうなかった。沢で泳ぐのが大好きなエレガントF原さんも、さすがに
突入しなかった。
Mr.Dashは腰痛持ちなので、中腰で進むケイビングは、たぶん
向かない。立位体前屈の生涯記録27cmを誇る、テレマーカーI島氏は
その軟体動物ぶりを発揮して、本来は通れないような隙間をすり抜け、
メンバーの拍手を誘った。
結局、長居はしたくないと思いつつも、2時間以上も洞内にいた。
懐かしい外界に出ると、ムッとした空気。これが正常なのだが。
それにしても、泥と糞にまみれてたいへんだ。みんな、お尻は
茶色くなっている。
沢で靴とカッパをきれいに洗い、やっと、この初ケイビングが終了した。
「いい経験やったけど、もうええわ」というのが、皆のだいたいの感想
であった。やっぱり山岳部は、清流と、雄大な景色のほうが向いている。
このところ、山岳部では通常のハイキングやトレッキングだけでなく、
コースをバリエーションルートにしてみたり、夏の沢登り、合間の
ロッククライミング、冬のスノーシューやクロスカントリースキーと、
活動の幅を拡大してきたが、ケイビングは、どうも、これ限りになりそうだ。
遅めの昼食を済ませた我々は、四国カルストをドライブして、
久万高原の民宿に泊まった。今回の旅で初めて、食事が標準装備に
なっている宿である。ここでもまた、酒宴になだれ込んでいくのだった。
GWの四国への旅は、こうして愉しく、事故なく終了した。
連想で、観光洞ではなく、自由にケイビングできる洞窟はないかと
調べていたら、野村町に羅漢穴(らかんあな)という洞窟があると
いうことがわかった。
昨晩、コテージで福山在住のいーぴんM本氏を加え、11名と
なった我々は、山岳部では初めて、ケイビングに挑戦することにした。
【メンバー】
Mr.Dash、ともちゃん、宇宙人I村氏、テレマーカーI島氏、
元気者ふみちゃん、”タイプR”N尾氏、フットワークT橋氏、
ポチK本さん、エレガントF原さん、カメラマンY井氏、いーぴんM本氏。
あまり資料が整わないままのケイビングであるが、カメラマンY井氏が、
あらかじめ、ケイビング経験者である大学時代の友人から対策を聞いて
くれていたので、それに従い、上下カッパのつなぎ目にはテープで目止め
(本来は上下つなぎが最適)し、ヘルメットにヘッ電を装着。足回りは
沢靴で武装した。もちろん洞窟入口からビニール製の荷造り紐を這わせる。
ハーネスなどはつけず、今日はザックも持たない。
羅漢穴は、斜面の中腹にある。アクセスは2通りあり、上の林道から下りて
くるものと、下の林道の舗装が切れるところから沢を渡り、植林帯を
登っていくものである。
我々は、下の林道からアプローチした。車は5台ほど林道脇の草地に置ける。
地元の山菜採りの人が通りかかり、ごくろうさんやねぇと言いたげな雰囲気。
洞窟に近づくにつれ、なにやら冷たい風が吹いてくる。入口には洞内説明の
看板がある。荷造り紐を入口に固定し、若手メンバーを先頭に探検開始だ。
入口からしばらくは天井も迫り、狭い。
とにかく、ドロドロになるという話だったが、のっけから滑る、滑る。
暗闇をよろめきながら進むのだが、頭をよくぶつけてしまう。ヘルメットの
ありがたさを実感する。
さっそく、コウモリが天井からぶら下がっているのを発見した。
やがて洞内は広々とした空間になる。高さ3~5mはあろう。
こんな空間が自然にできるというのが不思議でならない。
鉄製の階段があった。唯一の公式な人工物か。
鍾乳石の柱がいくつもあるY字分岐で、まず右に進む。
泥の坂を用心しながら進む。何人か、転倒しているようで、
悲鳴が絶えない。
右の道の終点には、地獄に続くような細い竪穴が続いている。
「マサカリ落ち」というらしい。人一人がようやく通れそうだが、
今はザイルを持参していない。仮にあったにしても、11人が通れる
わけない。どこまで続いているかの保証もない。ザイルが泥まみれに
なるのも、あとあと面倒だ。竪穴には、古いロープが垂れていたから、
過去に誰か奇特な人が潜っているに違いないが、我々は遠慮した。
もとの分岐に戻る。テレマーカーI島氏が「こっちにも道がある」
と云ったが、いや、それは来た道だって! それほどに洞窟の暗闇では
往路と復路の風景が変化して見える。
上下感覚もなくなるようで、二む、三歩のアップダウンは把握できる
ものの、全体として、登り基調なのか、下りなのかが、よくわからなくなる。
そいでもって、今度は左洞へ。一抱え以上ある大きな鍾乳石柱がある。
足元はぬかるみがひどい。
「これかな?」と思う程度の「一の池」を通り抜け、長細い水溜りに
右から岩壁が迫る箇所に出る。「二の池」だろうか。
泥水を避けるようにトラバースするのが案外難しい。
先頭集団が、「天井に絶対に頭をつけないように」と知らせてくる。
「なぜ?」「いや、来たら分かります」
低くなった天井をかいくぐり、横目でおそるおそる見たら、
なんと天井にびっしりとコウモリが留まっているではないか。
このおびただしい数! 動物園でも見られない光景だ。
これだけで、来た甲斐があったというものだ。
いきなりヘッ電で照らされ、夜行性の彼ら、彼女らは、
「なんだなんだ、迷惑な」とでも言いたげに、小刻みに身体を
震わせている。超音波でも測定しているのかな。
洞内はケモノの臭いというか、アンモニア臭がたちこめ、
床には時折、コウモリの真っ黒な糞が広く積もっていた。
滑りやすい泥といい、糞といい、長居はしたくない。
洞窟は「三の池」で一応の終点となる。水が青く澄んでいるが、
生態系を考えると飲む気は起こらない。
よく見ると、水面の右奥に隙間がある。洞窟としては続いている様子だが、
大半が水に没しているようだ。これも、潜って行って確かめる気力は
もうなかった。沢で泳ぐのが大好きなエレガントF原さんも、さすがに
突入しなかった。
Mr.Dashは腰痛持ちなので、中腰で進むケイビングは、たぶん
向かない。立位体前屈の生涯記録27cmを誇る、テレマーカーI島氏は
その軟体動物ぶりを発揮して、本来は通れないような隙間をすり抜け、
メンバーの拍手を誘った。
結局、長居はしたくないと思いつつも、2時間以上も洞内にいた。
懐かしい外界に出ると、ムッとした空気。これが正常なのだが。
それにしても、泥と糞にまみれてたいへんだ。みんな、お尻は
茶色くなっている。
沢で靴とカッパをきれいに洗い、やっと、この初ケイビングが終了した。
「いい経験やったけど、もうええわ」というのが、皆のだいたいの感想
であった。やっぱり山岳部は、清流と、雄大な景色のほうが向いている。
このところ、山岳部では通常のハイキングやトレッキングだけでなく、
コースをバリエーションルートにしてみたり、夏の沢登り、合間の
ロッククライミング、冬のスノーシューやクロスカントリースキーと、
活動の幅を拡大してきたが、ケイビングは、どうも、これ限りになりそうだ。
遅めの昼食を済ませた我々は、四国カルストをドライブして、
久万高原の民宿に泊まった。今回の旅で初めて、食事が標準装備に
なっている宿である。ここでもまた、酒宴になだれ込んでいくのだった。
GWの四国への旅は、こうして愉しく、事故なく終了した。