22校目となる募集停止です。今日の14時25分付で、静岡新聞社が「学生募集停止を発表 実績低迷の静大法科大学院」として報じており、静岡大学の公式サイトには今日付で「静岡大学大学院法務研究科の学生募集停止について」という文書が掲載されています。なお、静岡新聞社は、既に10月7日7時49分付で「静大法科大学院 2015年度で募集打ち切りへ」として報じていました。
国立大学(法人)としては6校目となる募集停止で、時期は2016年度からです。つまり、東洋大学と同様に来年には入学試験を行わないということになります。
日本経済新聞2014年9月20日(土)付朝刊42面13版に掲載された「法科大学院を5分類 文科省『最低』7校、補助金半減」という記事でも報じられているように、文部科学省は、これまでの合格率などの実績を基にして2015年度に交付する補助金を、2014年度分に対する割合によって5段階に分類しています。次のようになっています(日経の記事を引用します)。
補助金の基礎額90パーセント:北海道大学、東北大学、筑波大学、東京大学、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、学習院大学、慶応義塾大学、上智大学、中央大学、早稲田大学
補助金の基礎額80パーセント:千葉大学、横浜国立大学、神戸大学、九州大学、成蹊大学、創価大学、愛知大学
補助金の基礎額70パーセント:岡山大学、琉球大学、立教大学、同志社大学、甲南大学
補助金の基礎額60パーセント:金沢大学、静岡大学、広島大学、熊本大学、青山学院大学、東洋大学、日本大学、法政大学、明治大学、神奈川大学、山梨学院大学、中京大学、南山大学、名城大学、立命館大学、関西大学、近畿大学、関西学院大学、西南学院大学、福岡大学
補助金の基礎額50パーセント:北海学園大学、国学院大学、駒沢大学、専修大学、桐蔭横浜大学、愛知学院大学、京都産業大学
既に2015年からの募集停止を表明している大学などはここに入っておらず(そのために大東文化大学も登場しません)、また大阪市立大学と首都大学東京は国からの補助金を受けていないとのことです(従って対象外となります)。
静岡大学は補助金の基礎額60パーセントのランクに入っています。御覧のように有名大学もかなり入っていますが、既に東洋大学が2016年度からの募集停止を決めています。静岡大学の公式サイトでは触れられていないのですが、静岡新聞社の今日付報道は「静岡大の場合、年間4千万円程度の補助金カットが見込まれることから、開設からわずか10年で1校単独での運営継続が難しい状況に追い込まれた」と述べています。たしかにこの額は大きいもので、募集停止の決め手となったのではないかと思われます。もっとも、静岡大学の公式サイトでは「一方、国立大学においては、平成28年度からの第3期中期目標・中期計画の策定に向けて、『国立大学改革プラン』に基づく教育研究組織の見直しが求められており、本学においても、地域における中核的な教育拠点として、法科大学院を含め学部・大学院全体の組織見直しを進めているところで」あると述べられていますが、現状では「国立大学改革プラン」でも厳しい見通しが示されるものと考えられるため、その準備のために募集停止を決めたということなのでしょう。
また、静岡大学の法科大学院の実績も、まとめの表の形で報じられています。それによると、募集定員は20名なのですが、入学者は2010年度が13人、2011年度が10人、2012年度が8人、2013年度も8人、2014年度が3人となっています。司法試験合格者と合格率は、2010年度が6名で16.2パーセント、2011年度が7名で14.9パーセント、2012年度も7名で14.9パーセント、2013年度が1名で3.4パーセント、2014年度が3人で10パーセントとなっています。
さて、静岡新聞社の報道にも登場するのですが、非常に気になる一節が公式サイトにあります。「なお、他の大学との連合構想につきましても、引き続きその可能性について模索し、実現に向けて努力してまいりたいと考えております」という部分です。島根大学法科大学院の募集停止の際にも言われていたことで、その際、想定されていたのは静岡大学法科大学院ではないかとも言われています。
たしかに、法科大学院については複数の大学による連合大学院などの再編も言われているところです。しかし、これはどこまで現実的な話でしょうか。法科大学院では香川大学・愛媛大学連合法務研究科(四国ロースクール)という実例がありますが、今年の5月20日付で2015年度からの募集停止を表明しています。また、この連合法科大学院は香川大学が主体となっている上で、隣県という条件になっています。高松市と松山市ではかなり距離が離れており、実際のところどのように連携していたのかは興味深いところですが、口で言うほど簡単な話ではないだろうということは想像がつきます。首都圏や京阪神地区なら複数の大学による連携なり連合なりは比較的に楽にできるでしょうが(そもそも、こういう発想が東京流の物の見方によるとも言えます。市町村合併と同じようなものです)、静岡県と島根県という遠隔地間の大学で連合を組んでどのような方法で教育を行うというのでしょうか。全ての講義で遠隔会議システムを使用するということならわかりますし、インターネットを活用する方法も当然すぐに思いつきます。しかし、これらの技術なり方法なりのみではどうにもならない問題があるでしょう。具体的な構想を知りたいものです。また、連合というのは国立大学だからこそ、とは言えないまでも、私立大学よりは国立大学に向いているものとも言えますが、中部地方、中国地方、四国地方というようなブロック、または静岡県と神奈川県というような隣県同士というような形でなければ、実現は困難でしょう。
少なくとも私立大学にとり、連合よりも現実味があるのは統合でして、法科大学院には実例があります。桐蔭横浜大学と大宮法科大学院大学は、2011年8月8日、統合を発表します。同日付の「桐蔭横浜大学法科大学院と大宮法科大学院の統合について」という文書によると、両法科大学院は統合して「桐蔭法科大学院」として存続することとなっています。或る意味で会社の合併と同様であり、2016年3月をめどに統合作業を終わらせた上で、桐蔭横浜大学の法科大学院が存続する訳です。大宮法科大学院は2013年度から募集を停止しており、学生全員が修了すれば完全に閉校となります。
しかし、募集停止→撤退を決めた法科大学院で、統合の例は桐蔭横浜大学法科大学院・大宮法科大学院だけです。他の募集停止を表明した大学は、統合という選択肢をとっていません。これには様々な事情があるのでしょうが、やはり様々に困難な問題・課題があるからでしょう。
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