ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

北大阪急行電鉄南北線の延伸は必要か(3)

2015年12月23日 12時09分36秒 | 社会・経済

 2015年2月12日1時22分3秒付で「北大阪急行電鉄南北線の延伸は必要か(1)」、2月13日0時0分48秒付で「北大阪急行電鉄南北線の延伸は必要か(2)」を掲載しましたが、しばらく空けさせていただきました。

 鉄道路線が新規に開業する場合であれ、既存の路線が延伸する場合であれ、沿線住民には少なからぬ便益をもたらしてくれるはずです。しかし、かつての国鉄のように、どう考えても需要が少ないと思われるようなローカル線を建設すれば、その路線では赤字が増えて重荷になります。膨大な建設費を投入して、その分を回収できるのであればよいのですが、短期間で済む話ではありません。

 従って、北大阪急行電鉄南北線の延長についても、実際の建設費に見合うだけの効果が発生しなければ、負債などとして残り、将来の世代にとってマイナスの財産という負担が残されてしまいます。勿論、公共交通機関の場合は便益もありますから、単純に負担のみが残されるという訳ではありません。路線を廃止することによって沿線住民に、さらには地方自治体に新たな不利益が発生することもあります。しかし、結局は費用対効果を、あるいは需要と供給とのバランスを考えざるをえません。いかに便益を提供するという存在であっても、供給過多で需要過少であれば、利便性を犠牲にしてでも事業を中断する・廃止するのが筋である、ということになります。ただ「造っておしまい」ではなく、維持しなければならないからです。

 供給過多にならないためには、需要を見積もる必要があります。運賃、競合路線など、いくつか考慮すべき要素が絡み合いますので、それほど簡易な作業ではないはずですが、避けなければならないのは期待なり思い込みに基づく、日本の公共事業ではおなじみの甘い予測です。東京湾アクアラインの例はすぐに思いつくところでしょう。他にも、日本の新交通システムでは最初に廃止された桃花台新交通桃花台線(ピーチライナー。愛知県小牧市)は記憶に新しいところです。存続している路線では、大阪市営地下鉄今里筋線や神戸市営地下鉄海岸線が、当初の需要予測をはるかに下回る輸送人員の実績しか残せなかったことで知られています(両線とも徐々に乗客を増やしてはいるようですが)。大手私鉄では京阪中之島線も同様です。

 さて、北大阪急行電鉄南北線の延伸です。この路線は、日本の(公営の)地下鉄では最も黒字額が大きく、また最多の乗降客数を記録する大阪市営地下鉄御堂筋線と(ほぼ完全な)相互乗り入れを実施しています。少なくとも関東地方からみれば、大阪では御堂筋線こそが大動脈でして、新大阪、梅田、難波、天王寺を経由する同路線の各駅に乗り換えなしで向かうことができるのは魅力です。南北線の営業区間が約6キロメートルと短いにもかかわらず、北大阪急行電鉄が準大手私鉄に位置づけられているのは、御堂筋線との相互乗り入れによるところが大きいはずです。

 南北線が延長されるならば、直通運転の範囲は中百舌鳥駅⇔新箕面駅(仮称)となります。現在のダイヤでは南北線内のみ、すなわち江坂駅⇔千里中央駅のみの運行はほとんどありません。そのため、延長しても南北線内のみの運行はほとんどないというダイヤが組まれるはずです。

 いかにも中途半端なのですが、ここで終わります。機会をみて、また記そうとも考えています。


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