ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

市長選挙が行われない市 今後は増えるのではないか

2025年02月11日 00時00分00秒 | 国際・政治

 2025年2月9日付で、朝日新聞社のサイトに「一度も市長選がない『市』で6回目の無投票 『津軽選挙』も背景?」という記事(https://digital.asahi.com/articles/AST292DRBT29UBNB001M.html)が掲載されました。

 一読して、「これは今後、日本の至る所で起こりうることではないか」と思いました。もとより、大分県姫島村など、長らく地方公共団体の首長(本来であれば「しゅちょう」と読むべきでしょうが、「くびちょう」と読み慣わされています)の選挙が行われなかった地方公共団体は、これまでにもいくつか存在しています。また、このブログでは、2017年の高知県大川村の話題2022年の神奈川県大井町の話題を取り上げました。大川村や大井町の場合は議員の成り手がいないということですが、議員であれ首長であれ、根は同じと考えてよいでしょう。

 しかし、今回の話は、平成の市町村合併の大波の結果として成立した市の話です。私がまだ大分大学教育福祉科学部の講師および助教授であった時、大分県が特に市町村合併に積極的であったという事情もあって、或る意味では成り行きで市町村合併を研究対象としていました。それだけに、合併後の地方公共団体において選挙が行われないという事態になるとは、平成の市町村合併を推進した人たちのうちの誰が予想していたのでしょうか。私は、当時を思い起こしながら「今更ながらに、市町村合併は一体何だったのだろう」と思わざるをえません。

 2005年2月11日に、合併によって成立したのが「つがる市」です(平仮名の市名のため、「 」を付けます)。つまり、今日、2025年2月11日に20周年を迎える訳です。

 その2日前、2025年2月9日に「つがる市」長選挙が告示されたのですが、立候補を届け出たのが現職市長のみであったため、無投票再選ということになりました。これで6回連続とのことです。「つがる市」が成立してから一度も市町村選挙が行われていないということで、これは平成の大合併によって成立した市では最多です(ちなみに、2番目は5回連続の和歌山県海南市です)。

 上記朝日新聞社記事には、次のように書かれています。

 「市町村合併後に行われる首長選では、新市町村のまちづくりをめぐり、旧市町村を地盤とする候補者同士の争いとなることが多い。つがる市も旧木造町、旧森田村、旧柏村、旧稲垣村、旧車力村の1町4村による新設合併。新市発足時の人口約4万人のうち、約1.9万人を占めた旧木造町の影響力が強く、旧同町長だった福島弘芳氏がつがる市長を無投票で4期務めた後、副市長だった倉光氏が継いだ。」

 たしかに、そのような面はあるでしょう。私は地元の事情を知らないので、ここで引用したところを前提としておきます。

 その上で、上記朝日新聞社記事は、「つがる市」議会がいわゆるオール与党体制となっていること、および、「つがる市」を含む津軽では「津軽選挙」(要するに金権選挙)の体質が染みついていることを指摘しています。これでは市議会も硬直化するでしょうし、市長選挙が行われないのも当然です。納得される方がおられてもおかしくありません。

 しかし、地元の事情は別として、今後、市町村長選挙が行われない市は増えるのではないかと考えられます。前述のように、議会議員選挙については無投票となる地方公共団体があります。何を隠そう、川崎市高津区も、2015年の神奈川県議会議員選挙区で無投票選挙区となりました。この他、横浜市西区、同市金沢区、川崎市幸区、相模原市緑区、鎌倉市、小田原市、三浦市、厚木市、伊勢原市および足柄上郡(中井町、大井町、松田町、山北町および開成町)において無投票となっています。人口が多いかどうかの問題でもなさそうです。首長選挙でも同様のことが生じうるはずです。理由はおわかりでしょう。

 

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