週刊プレジデントのオンライン版であるPRESIDENT Onlineに、昨日(2021年3月7日)付で「『女性が逃げ出す地方は消滅する』コロナ渦でも東京一極集中が止まらないワケ」という記事が掲載されています(https://president.jp/articles/-/43858)。木下斉さんが書かれたものです。以前から、木下さんは地方移住の問題点などに関する著作や記事を書かれており、私も読んでいますので、この記事も読んでみました。
2020年にCOVID-19の感染拡大に見舞われてから、東京一極集中は鈍化した、むしろ東京都からの人口流出が流入を上回っているという記事が目に付きます。実際の人口動態統計を目にしないと確かなことは記せないというのが本当のところでしょうが、東京都からの人口流出があるとしても人口が増えたのは神奈川県など東京都の近県であるという話もありますし、東京の繁華街では閉店が相次いで空きテナントが増えていても都内のワンルームマンションの売れ行き(あるいは賃貸借契約数)は落ちていないという趣旨の記事もあります。
木下さんは「昨年のコロナ禍の流行が始まった頃に「『もう過密の東京は危険だから一極集中は終わる。そうすれば地方に人が流れてくる』といったような大変都合のよい幻想を抱く方がかなりいました」が「結果は2020年、東京都人口は約8600人の増加。転入減少の中身をみても外国人の占める割合が多く、地方から東京への移動が減ったというのは限定的です。さらに東京から出ていった人たち半数は、行き先が埼玉、千葉、神奈川であり、東京圏で見た場合、約10万人の転入超過となりました」と書かれています。
コロナ渦よりもはるかに前から、地方移住・定住政策を進めている市町村が少なくありません。都営地下鉄や東京メトロの電車に乗っていると、ふるさと納税と地方移住・定住の広告で埋まっている、と記すと大袈裟ですが、それらに関する広告をよく見かけます。しかし、書店やWebでは、地方移住・定住政策が上手くいっていないことを示唆する本や記事をよく見かけます。失敗例も少なくないようです。また、地方移住といっても、都道府県単位で考えると県庁所在都市に人口が集中する傾向も見受けられますし、地方の代表都市への集中という傾向も存在します。
上記記事の最初のほうには、「そもそも東京が悪くなって地方に人がくる、なんていう棚ぼた移住を期待するような人たちの地域に、どうして東京が嫌になったとしても行く人が出てくるでしょうか」、「人が向かう地域は、確実に自らが動き変革を起こして、東京とは全く異なる軸で成長を実現しています。そういう地域はコロナ頼みの人口移動に期待はしていません。他人の没落を期待する前に、自分たちの改善と向き合うのが先であり、そちらのほうが確実にできる努力なのです」という文章があります。記事の結論を暗示する文であるとともに、木下さんの著作に一貫している姿勢が現れています。ふるさと納税で汚職事件が発生した奈半利町は極端な例でしょうが、安直な金集めや人集めは失敗するということでしょう。
それでは、何故に東京一極集中は止まらない(あるいは止まらなかった)のか。木下さんは「そもそも地方からの人口流出は前述の通り、若者であり、女性です。より具体的に言えば、20~24歳の女性が地方に見切りをつけて、東京に向かっています」、「2019年、20~24歳の男性の東京都への転入超過数は2万5512人。一方、女性は3万1685人となりました。最新の2020年統計をみても、2019年と比較すれば減少しているとはいえ、男性の20~24歳の転入超過数は2万2921人、女性は2万7418人です。女性優位は続き、流入超過数もあまり変わっていません」と指摘しています。若い女性が地方を捨てるのは「地方企業の女性雇用が全く魅力的ではないことです」。これは必ずしも企業に限られないのではないかと思われますが、その点は脇へ置きます。とりわけ、愛知県の例は興味深いものです。
例のオリンピック組織委員会問題に結びつけたのか、それとも結果的に結びつくものなのかはわかりませんが、企業(およびその経営者)の意識が、20代前半の女性を地方から遠ざけている。これが木下さんの結論であると言えます。そして、私も同感であるのが「いまさら国費をかけて、自治体間で人口の取り合いをしても不毛でしかありません」という文です。
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