昨年の12月25日、静岡県富士市を走る岳南鉄道線を利用しました。翌日付の「岳南鉄道線に乗ってきました」でも記しましたが、昨年3月に行われたJRのダイヤ改正に伴って貨物輸送が廃止されたことにより、存続が危ぶまれる状況になりました。あるいは、決定的な危機を迎えた、とも言えるかもしれません。
その岳南鉄道について、1月24日、静岡新聞と静岡放送の共同サイト「アットエス」に、7時50分付で「岳南鉄道、鉄道事業を分割 経営改善目指す」という記事が掲載されました(http://www.at-s.com/news/detail/474560537.html)。今後の行方が気になるという内容です。
上記記事によると、岳南鉄道は、今年の4月に鉄道事業を分割した上で「岳南電車」という子会社を設立する方針を固めたとのことです。これにより、「意思決定の迅速化と財務状況の透明性を高め」て同社の経営改善を目指すとのことですが、赤字部門を本体から切り離すということは、鉄道線の廃止を視野に入れた方針である、ということでしょう。また、岳南鉄道線に対しては、富士市から年間6500万円の補助金が支払われることとなっています(2014年度まで)。そうである以上は経営努力の姿勢も見せなければなりません。1990年代に廃止され、会社も消滅した野上電気鉄道のように、補助金に頼り切り、ほとんど経営努力もしてこなかったというのでは、補助金の正当性すら疑われることとなります。
「鉄道」を名前に掲げる会社の多くでは、もはや鉄道は主力事業ではありません。岳南鉄道もそうであるかどうかはよくわかりませんが、不動産事業や物品販売事業も行っており、これらは黒字なのだそうです。かつてはバス事業も行っていましたが、全て同系列の富士急静岡バスに譲渡されています(岳南鉄道は富士急行の系列に属します)。
上記記事には、次のようなことも書かれています。
まず、子会社は、資本金を1億円とし、普通株式を1000株発行します。その上で、普通株式は全て岳南鉄道に割り当てられます。
次に、現在岳南鉄道の鉄道部門に勤務する従業員24人は、全員が子会社に移籍します。
利用者にとって最も関心が高いのは運賃とダイヤでしょう。これらは、子会社設立後も変更しないとのことです。
JR北海道で試運転が行われていたDMVも走ったことのある岳南鉄道線は、子会社に分離されることでどのようになるのでしょうか。存続か、廃止か。注意深く見ていく必要があります。
静岡県と言えば、天竜浜名湖鉄道についても議論があります。元々は国鉄二俣線であり、1980年代に現在の形態に移行された訳ですが、赤字続きであり、長らく赤字補填が続いています。現在は年間で2億円ほどで、設立から2010年度までの合計は焼く26億円にのぼります。静岡県のプロジェクトチームは5年以内の営業黒字化を求めるという内容の報告書をまとめていますが、実際には困難でしょう。元来が東海道本線の迂回ルートであり、平成の市町村合併で現在の浜松市が成立するまでは同市を経由していなかったのです。つまり、現在でも浜松市の中心部などを通らないのです。
以上の件は、やはり「アットエス」で1月16日の7時45分付で「天浜鉄道に『5年以内黒字化』要求 県検討チーム』(http://www.at-s.com/news/detail/474558355.html)として報じられていました。それによると、代替交通機関の整備が困難であるとしながらも、5年以内の黒字化達成がなされなければ改めて存続か廃止かと審議すべきであるという趣旨の提言がなされています。ただ「民間委員からは赤字体質を問題視する厳しい意見もあった」とのことです。こういう見解は必ずといってよいほど出されますが、少しばかり筋違いのような気もします。炎上を覚悟で記すならば、1980年代の国鉄分割民営化の際に、国鉄二俣線は特定地方交通線のうちの第二次廃止対象路線にあげられていたのですから、その時点で廃止していれば、今のような問題は起こらなかったでしょう。第三セクターを設立して二俣線を引き継いだということにより、問題を先送りしたのであり、そのツケが21世紀になってまわってきた、ということなのでしょう。
しかし、単純に赤字か黒字かで判断をすることができないのが公共交通機関の問題です。廃止するのはたやすいでしょう。ただ、それが地域の長期的な発展に資するかどうか、慎重に判断しなければなりません。鉄道もバスもない、自家用車か自転車だけが頼りであるという地域に、長く住み続けることはできるのでしょうか。川崎市高津区に住み、東急田園都市線を通勤などの手段として利用する私は、大分市で7年間も住んでいたにもかかわらず、車社会に戻ることができません。大分県の県庁所在地から離れて、もうじき9年が経ちます。
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