ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

鉄道関係二題

2020年02月15日 11時35分00秒 | 社会・経済

 今回は、北海道および東北の鉄道関係二題、ということで。

 

 昨日(2020年2月14日)の昼に報じられていた話ですが、北海道新幹線の乗車率の平均が25%なのだそうです。朝日新聞社が昨日の12時20分付で「乗車率25%、スカスカ空席で荷物運びへ 北海道新幹線」(https://www.asahi.com/articles/ASN2F71RZN2FIIPE01C.html)として報じていました。

 現在の開業区間を頭に置けば仕方のないところなのかもしれませんが、青函トンネルで速度制限がかかることも一因かもしれません(貨物輸送を行っているためです)。それにしても25%では……、と思います。札幌まで延伸してもどれだけ乗客が増えるのか、と懸念されるでしょう。

 だからという訳でもないのかあるのか、運転手不足に悩む佐川急便がJR北海道に投げかけたのが、北海道新幹線で貨客混載を始めようということです。勿論、日本の新幹線では初のことですが、実は在来線では既に例があります。2019年4月から、宗谷本線の幌延〜稚内で、普通列車を利用する形で貨客混載を行っています。それなりの実績があるからこそ、北海道新幹線でも貨客混載を行おう、ということなのでしょう。

 宅配便というとトラックという印象が強いかもしれませんが、鉄道も使われています。貨物電車のM250系などを使ったもので、やはり佐川急便が利用しているとのことです。東京から大阪まで、東海道本線(支線を含む)を走っているので、見る機会があるかもしれません(私はまだ見たことがないのですが)。

 そう言えば、今行われているのかどうかわかりませんが、旅客列車を利用する新聞輸送を何度か見たことがあります。

 

 北海道新幹線は、現在、東北新幹線の終点である新青森から新函館北斗までの路線です。その新青森から奥羽本線の上りに乗り、弘前へ行きます。すると、東急の初代7000系を走らせている弘南鉄道弘南線に乗り換えることができます。

 少し前のことですが、この弘南鉄道に関する記事が朝日新聞社のサイトに掲載されていました。「青森)沿線5自治体が赤字全額補てんへ」(2020年2月6日10時00分付)です。

 以前、このブログで弘南鉄道大鰐線の話題を取り上げたことがあります。2013年6月30日15時08分08秒付の「弘南鉄道の大鰐線が廃止されるか」という記事です。それから7年近くが経過しましたが「やはり」と思わざるをえない話でした。

 2013年6月、弘南鉄道の社長が株主総会の冒頭で大鰐線の廃止に言及しました。株主総会の正式の議題になっていなかったこともあって、その後はどうなっていたのかと思っていました。

 弘南鉄道には、元から弘南鉄道の路線である弘南線(弘前〜黒石)と、元は弘前電気鉄道の路線であった大鰐線(大鰐〜中央弘前)の2路線があります。大鰐線は開業時から苦しく、一度廃止寸前に至ったことで弘前電気鉄道から弘南鉄道に譲渡されたという経緯があるほどで、赤字は慢性化しているようです。少なくとも弘南鉄道の下では大鰐線が黒字路線となったことがないようで、これでよくぞ維持できたものだと感心しますが、弘南線が黒字路線であったことから社内での補塡が利いた訳です。

 しかし、弘南線も2017年度から赤字となっています。勿論、輸送人員も減少しています。上記朝日新聞社記事によると、2018年度の輸送人員数は大鰐線が約44万人、弘南線が約129万人です。両線を合わせた赤字の額は、2019年度に約5920万円になると見込まれています。

 御多分に漏れず、現状では黒字への転換も非常に難しいところです。少子高齢化が進んでいるということは、通学客も減少しているということです。そればかりでなく、おそらくは全国の中小私鉄に共通する課題であろうと考えられますが、施設の老朽化が問題となっています。当然ながら輸送人員の減少と結びつくもので、線路、信号など、安全に関わる設備が老朽化しているということでは、運行にも支障が出てきます。この何十年か、中小私鉄では新車が登場することは非常に少なくなっており、大手私鉄の中古車を導入することが多くなっていますが、これは老朽化の端的な例に過ぎません。

 そこで、弘前市、平川市、黒石市、田舎館村および大鰐町は、弘南鉄道の経常損益の赤字(2019年度および2020年度)を全額補塡する方針を固めました。負担額は弘南鉄道の駅の利用客数に応じた割合に応ずるものとのことです。具体的には、次のとおりです。

 弘前市:4075万4000円

 平川市:551万6000円

 黒石市:491万9000円

 田舎館村:66万円

 大鰐町:735万4000円

 弘前市については、2月5日に開かれた市議会全員協議会の場で市長が明らかにしています。今後、正式の市議会で予算が審議されるので、そこでも問題になるでしょう。2020年度分の赤字については2021年度予算で補塡することになりますが、いつまで続けられるかが問われるでしょう。

 また、沿線市町村は「20年度の事業として、両線の『鉄道ガイドマップ作成』や大鰐線の『多言語化』『終電延長運行』などの利用促進策(952万8千円)も計画」しており、「地方鉄道への支援拡充について、国などに要望活動(17万7千円)を行う」とのことです。

 弘南鉄道も国庫補助事業の安全対策を行います。その費用は1711万6000円です。従って「同社に対する20年度の国、県、5市町村の財政支援は総額8032万円に上る見通し」であるということになります。

 今後の動向が非常に気になるところですが、存続・廃止の議論が出てくる可能性は高いでしょう。


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