今日(2023年10月13日)の朝日新聞朝刊8面14版△に「世界発2023」の「保護者の苦情 韓国でも悩む 23歳教師の自殺引き金 抗議広がる」という記事が掲載されていました。
「韓国でもモンスターペアレントの問題は深刻なのだな」と思いました。
モンスターペアレントの存在自体は、何も最近発生したものではないでしょう。私自身の幼少時代を思い返しても、そのような親がいたような記憶があるのです。ただ、この何年かで急速に問題化したのは、少子化の進行と関係があるのではないでしょうか。
その少子化ですが、韓国の場合、日本以上に進行しています。上記朝日新聞朝刊記事には次のように書かれています。
「韓国は昨年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと見込まれる子どもの数)が0.78と、日本を上回るペースで少子化が進む。子どもが減り、『一人っ子』にかける親の期待はより大きくなる。さらに、小学生のときから大学受験を見据えた受験競争が始まる。競争のストレスを受けた子どものいじめや学級崩壊も珍しくなく、親の苦情につながりやすい。」
これではモンスターペアレントが増えてもおかしくはないでしょう。勿論、学校側、あるいは教師個人の問題がないということではないでしょう。実際、学校の隠蔽体質が報じられることはよくありますし、いじめ、飲酒、不倫などの問題を抱える教師の話も耳にします。それに、モンスターペアレントとされる人の主張をよく読むと、意外にも筋が通っている部分があったり、正論が含まれたりしているのです。しかし、たとえそうであっても一方的に何度も繰り返されたら、筋が通っているも正論も何処かへ吹っ飛びます。教師も一人の人間ですから、人格、しまいには存在自体を否定されるような言動を甘受する筋合いはないのです。
9月16日、ソウルの国会議事堂の前に、およそ3万人の教師が集まりました。韓国全土からということなので、相当に深刻な問題が教師たちを襲っていたということでしょう。
そのきっかけは7月18日、ソウル市の小学校教師であったAさんが勤務先で自殺したことでした。まだ23歳、教師になって2年目であったとのことです。あれこれの悪戯だの何だのを繰り返す児童への対処にもまだ慣れていないでしょうし(「慣れることなんてない!」かもしれません)、モンスターペアレントに文句を言われた際の処理方法にも慣れていないことでしょう。或る意味でモンスターペアレントにとっての格好の標的であったのかもしれません(彼らも相手を選ぶでしょうから)。
Aさんは日記やメモを残しており、「クラスの子どもへの無力感、業務ストレス、同僚との関係、そして保護者」という箇条書きも見つかったそうです。
9月7日には、テジョン(漢字表記は大田)でも自殺を図った小学校教師のBさんが亡くなりました。Bさんは「保護者から児童虐待の疑いで通報されていた」とのことで、「保護者ら2人が2019~22年に計16回、この教師への苦情を申し立てていたという」のです。これが事実であれば、テジョンの教育庁は一体どういう対応をしたのかという疑問も浮かぶのですが、実際のところはどうなのでしょうか。
韓国の公立小中学校の教員で自殺した者は、2018年から2023年6月末までで100人で、2022年には19人、2023年には6月末までで11人です。今年に入ってからペースが速くなっているのかもしれません。全教員に占める割合がわからないので何とも言えない部分があるのですが、少ないなどとして無視することはできないでしょう。
上記朝日新聞社記事を読み進めると「『虐待』証拠なしで通報可能」という小見出しが気になりました。どう考えてもおかしな話だろうと思ったからです。小見出しに続いて、次のように書かれていました。
「さらに、韓国で教師が保護者からの苦情に強い負担を感じる背景として指摘されるのが、14年に施行された児童虐待処罰法だ。証拠がなくても、疑いさえあれば虐待として誰でも捜査機関などに通報できる。教師も強い言葉で指導すれば、通報され、場合によって起訴されるかもしれない。」
現場を見て即通報というのであれば理解できます。また、場合によっては証拠が残らない虐待もあるでしょう。しかし、「証拠がなくても、疑いさえあれば」というのは行き過ぎでしょう。肝心の児童虐待処罰法を目にしていませんので、これ以上は書かないようにしますが、「教師も強い言葉で指導すれば、通報され」るというのはたまったものではないでしょう。児童が悪いことをしても叱れないし、教え諭すことすら困難になりかねないのです。学校でのまともな教育環境を作れないのではないでしょうか。モンスターペアレントがどの程度まで自分の子どもにまともな躾ができているのかわからないでしょうから。
9月、韓国では初・中等教育法などの改正案が可決されました。そこで「『教員の正当な生活指導は虐待とはみなさない』と定められた」とのことです。しかし、児童虐待処罰法はそのままでした。
韓国の過酷なほどの競争社会、とくに日本以上の学歴社会、進学熱は、日本でもよく話題にされます。そのためか、日本でも生じた問題が韓国でも生じており、深刻さは日本と韓国で同等、あるいは韓国のほうが日本を超えている、という状況に見舞われているのかもしれません。このブログに2019年8月1日21時54分30秒付で掲載した「韓国でもひきこもりの問題が」において「考えてみると、韓国は日本を超える競争社会です。その点において、ひきこもりの問題が日本以上に起こりやすく、それでいて無視されやすいという状況にあるのでしょう。兵役があるかどうかは関係がないようです。しかも、韓国でも日本でもひきこもりの現状は似ているそうです」と書きました。競争社会の歪みが、ひきこもり、モンスターペアレントなど、様々な形で現れているのでしょう。
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