救命救急センター

2015年07月12日 | 徒然
夜の病院。



それは、一般のイメージは「怪談」とか、静かで薄暗い廊下という
いわゆる「陰」や「負」のイメージだろう。

高次救急の患者を扱う救命救急センターは、そんなイメージとは裏腹の
ーとはいえ、そこにはやはり「死」が付きまとうのだがー
煌々と照らされた廊下と、せわしなく行き来するドクターやナース、
時には警察官も、脇役としてそこに登場する。

救急救命士(今気づいたが、救命救急センターと救急救命士、
急と命の位置が逆の言葉である)たちの手によって運ばれた患者は
専門医たちの手によって、その死の淵から生還する。


もちろん、それは100%ではないが、本来救われない命が、
24時間待機している彼らの手によって、また患者本人の生きたいという意思によって
三途の川の手前で引き返して来ることができるのである。

(ハイリスク出産でも搬送される場合があるが、この場合も
新生児の救命という、通常の救急以上に難しい状況も発生する)

助かった者の多くは後方病棟、一般病棟へ移り、やがて退院してゆく。
それは安堵であり希望でもある。

助けられなかったとしても、「死」の悲しみを受け止める暇もなく
新たな搬送患者への対応の慌ただしさによって、
救命に専念する前向きな気持ちに上書きされてしまう。

そして、「悲しみ」や死の現実は遺族たちとともに帰宅し、
病院には虚しさだけが残る。
次の瞬間には、それはスタッフたちの心の中で、
次の難局へ立ち向かうための奮起へと書き換えられる。

救命救急センター。
今夜は、その曇りガラスの向こうに、いくつの赤色灯が光るのだろうか。
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