ホームレスに憧れた時期がある。
誰からも束縛されず、しがらみもかなぐり捨てて、自由に生きている。そう思えた。
昔、新宿で、終電車に乗り遅れ一晩ホームレスと話しながら夜を明かしたことがある。
彼は信念を持っていた。哲学があった。
「かっこいい」そう感じた。
★ ★ ★
ある日、打ちひしがれて冬空を彷徨った。
コートもなく、ポケットには小銭さえ入っていない。
道々の自動販売機を見付けては、ことごとく返却口に指を突っ込んでみる。
やっと、十円玉一個を発見。
コンビニの明かりがヤケにあったかそう。だけど十円じゃなんにも買えそうにない。
空から雪が舞い始めた。
口をあけて雪を待つ。誇りっぽい味がした。
なんだか無性に悔しくて、涙が湧き出てきた。頬を伝う涙が妙に温かい。
やるせないほどの虚脱感。
身も心もボロボロ。
もう限界だ。
どこでもいいから横になりたかった。
時折走る車の前に飛び出そうかとも思った。
身震いを覚えたとき、交番の前に立っていた。
「すいません、ちょっと横にならせてもらえませんか」
恥を忍んで、蚊の啼くような声で言った。
「家出か?奥さんにでも逃げられたんだろう。どうせ仕事なんかしてないんだろ?」
警官の軽蔑した矢継ぎ早な科白が、空ろに響く。
返す言葉が見つからない。
ホームレスにもなりきれない、自分の情けなさにうなだれるのが精一杯だった。
誰からも束縛されず、しがらみもかなぐり捨てて、自由に生きている。そう思えた。
昔、新宿で、終電車に乗り遅れ一晩ホームレスと話しながら夜を明かしたことがある。
彼は信念を持っていた。哲学があった。
「かっこいい」そう感じた。
★ ★ ★
ある日、打ちひしがれて冬空を彷徨った。
コートもなく、ポケットには小銭さえ入っていない。
道々の自動販売機を見付けては、ことごとく返却口に指を突っ込んでみる。
やっと、十円玉一個を発見。
コンビニの明かりがヤケにあったかそう。だけど十円じゃなんにも買えそうにない。
空から雪が舞い始めた。
口をあけて雪を待つ。誇りっぽい味がした。
なんだか無性に悔しくて、涙が湧き出てきた。頬を伝う涙が妙に温かい。
やるせないほどの虚脱感。
身も心もボロボロ。
もう限界だ。
どこでもいいから横になりたかった。
時折走る車の前に飛び出そうかとも思った。
身震いを覚えたとき、交番の前に立っていた。
「すいません、ちょっと横にならせてもらえませんか」
恥を忍んで、蚊の啼くような声で言った。
「家出か?奥さんにでも逃げられたんだろう。どうせ仕事なんかしてないんだろ?」
警官の軽蔑した矢継ぎ早な科白が、空ろに響く。
返す言葉が見つからない。
ホームレスにもなりきれない、自分の情けなさにうなだれるのが精一杯だった。