ボクには絵描きの友人がいる。
かれこれ30年来の旧知の仲だ。
彼は、忽然と姿を消したかと思うと、忘れた頃に無心の電話をよこす。
一頃、彼は破竹の勢いだった。
だから羽振りもよかった。
だが彼は、自分の絵に酔いしれ、ギャンブルに走った。
妻子には愛想を着かされ、今度は女に溺れた。
サラ金にも追われ続けるようになった。
挙句、故郷を追われ、逃避行を重ねる。
今は、老いた母親を抱え、自らも身体を壊してしまった。
現在、生活保護の日々を送っている。
得てして芸術家は情緒不安定だ。
時には狂気が同居する。
ピカソやゴッホ、そしてムンクがそうであったように。
ボクは、彼の作品のコレクターだ。
彼の才能を知っている。
彼の作品に惚れ込んでいる。
モチロン、彼も好きだ。
「チョッと頼みがあるんだけど」
いつものように、はにかんだ含み笑いを受話器の向こうに漂わせながら、切り出す彼。
「また、金か」
「ウン」
「いくらだ? 何に使うんだ?」
ボクは、その気もないくせに、杓子定規に訊く。
「チョッと野暮用で、○○万円」
彼はいつものように陳腐な答えを繰り返す。
「お前に貸す金はない。 絵は描いてるのか?」
「アア、ボチボチ」
絵の具を買う金もないくせに。
ボクは、心の中で、そう呟く。
「絵を送れ、そしたら買ってやる」
今までに何度、同じ会話が繰り返されたことだろう。
いつしかボクは、彼の作品のコレクターになっていた。
「早く、有名になれよ。 お前の価値が上がると、俺は金儲けができるから」
彼は、「フン」 と鼻息を受話器に吹きかける。
「お前が死ななきゃ、価値出ないか・・・?」
彼は、
「ジャア、近いうちに、絵、送るよ」
と嘯(うそぶ)く。
いつものパターンで、受話器は切れた。
かれこれ30年来の旧知の仲だ。
彼は、忽然と姿を消したかと思うと、忘れた頃に無心の電話をよこす。
一頃、彼は破竹の勢いだった。
だから羽振りもよかった。
だが彼は、自分の絵に酔いしれ、ギャンブルに走った。
妻子には愛想を着かされ、今度は女に溺れた。
サラ金にも追われ続けるようになった。
挙句、故郷を追われ、逃避行を重ねる。
今は、老いた母親を抱え、自らも身体を壊してしまった。
現在、生活保護の日々を送っている。
得てして芸術家は情緒不安定だ。
時には狂気が同居する。
ピカソやゴッホ、そしてムンクがそうであったように。
ボクは、彼の作品のコレクターだ。
彼の才能を知っている。
彼の作品に惚れ込んでいる。
モチロン、彼も好きだ。
「チョッと頼みがあるんだけど」
いつものように、はにかんだ含み笑いを受話器の向こうに漂わせながら、切り出す彼。
「また、金か」
「ウン」
「いくらだ? 何に使うんだ?」
ボクは、その気もないくせに、杓子定規に訊く。
「チョッと野暮用で、○○万円」
彼はいつものように陳腐な答えを繰り返す。
「お前に貸す金はない。 絵は描いてるのか?」
「アア、ボチボチ」
絵の具を買う金もないくせに。
ボクは、心の中で、そう呟く。
「絵を送れ、そしたら買ってやる」
今までに何度、同じ会話が繰り返されたことだろう。
いつしかボクは、彼の作品のコレクターになっていた。
「早く、有名になれよ。 お前の価値が上がると、俺は金儲けができるから」
彼は、「フン」 と鼻息を受話器に吹きかける。
「お前が死ななきゃ、価値出ないか・・・?」
彼は、
「ジャア、近いうちに、絵、送るよ」
と嘯(うそぶ)く。
いつものパターンで、受話器は切れた。