英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

臨床犯罪学者 火村英生の推理 第2話「異形の客」

2016-02-09 22:02:34 | ドラマ・映画
主人公・火村英生についてなど
 犯罪社会学准教授・火村と推理小説作家・有栖川コンビは、シャーロックホームズとワトソンの関係に似ている。コンビのリーダーは変人・ホームズ(火村)であるが、ワトソン(有栖川)は変人が逸脱しないよう世話をする保護者の立場。それでいて、友情で結ばれている。
 違うのは、火村は犯罪に興味を持つに留まらず、殺人行為願望があること。第1話冒頭の火村が人を滅多突きにするシーンが、火村の妄想なのか、願望なのか、記憶なのか……
 何度も映像が流され、更に、各殺人のシーンを火村の姿で再現するのは、鬱陶しい。

 有栖川の存在意義
 過去に火村から「人を殺したいと思ったことがある」と聞き、時折、火村の異常性を感じ、火村が軌道を逸脱し大気圏外に飛んでいかないよう見守り、時には修正している。
 また、火村も有栖川と一緒にいることで、心の安定を感じているようだ。
 「有栖川の存在意味がない」という意見を目にするが、それは違うと思う。
「質量が変わる火村を関知して、有栖川が重りを機敏に調節する天秤の図」+「二人の信頼関係」がこのドラマの大きなテーマ。
 第1話のラストで、
「みんな、お前みたいに強くな……すまん、お前も俺が思うほど強くないのかもしれん」
 と火村に言う有栖川。そして、、
≪男の心の奥底に横たわる冷たく暗い海……崖の縁に立つ男の背中を、私の手はいつまで繋ぎ留められるのだろう≫
と、心の内を独白。


火村の風貌
 ネクタイを緩め、頭はモシャモシャ(“ぼさぼさ”ではない)
 番組サイトのイラストをさらにデフォルメした感がある。髪型もそうだが、“ラフな着こなし”と言うより、“だらしなさ”を感じる。
 この2話は、包帯男が『犬神家の一族』でマスクをかぶった佐清(すけきよ)を連想させ、事件現場に登場した火村は金田一耕介を彷彿させた。
 確かに、金田一耕介っぽいが、よれよれのレインコート、だらしない着こなし、モシャモシャ頭は刑事コロンボを意識している気がする。

有栖川のイメージ
 キラ(八神月)であり、平重盛である。朝の15分番組にも2度も出演するなど、かなり忙しい。
 火村が事件を解決するのを見て≪計画通り≫とほくそ笑んでいるに違いない。

 親友思いのいい奴。ワトソン役。
 推理作家であるが、今回、わざわざ旅館に行って執筆作業のはずだが、1行も書いた様子はなし。
 喋りは金田一少年の堂本剛を連想する。


火村の殺人願望に呼応する犯人の異常性
・第1話の連続通り魔犯
「知りたかった……“バーチャルな世界と現実の世界との境目が分からなくなる”…それがどんな気分なのか」

・第2話の衝動殺人&計画殺人犯
「見なよ。町中を悪者たちが平然ととぼけて笑っている。
 全員捕まえるつもり?正義の味方も大変だね」

・第3話の盗聴魔
「私の操り人形にしたかった。あの人の声、息遣い…それを聞くことしかできなかった私が、あの人の感情、行動を思うがままに操れる……あんなに甘美なことはなかった。
 彼女だけじゃない。警察も私の掌の上で翻弄されている。電車の中で彼女や警察が、血眼になって“赤い目印”を探している姿を想像するだけで私は……はあはあ」
「あの窓の向こうにも、盗聴器は仕掛けられ、向こうの灯りの中では、そこから漏れる音に耳を澄ましている人間がいる。そう思ってこの景色を見てください…はあはあ(瞳がキラキラ)」(火村「あんた、今でも楽しいか」と反撃)

 これらの犯人は、≪世の中、異常な奴ら、犯罪者で溢れている≫ことを示唆している。
 シャングリラ十字軍、夕日に怯える女子学生、謎の少年……と、今後、絡んでくると予想されるが、個人的には、シリーズを収束(最終回)に向けて盛り上がらせなくても、単話が面白い方が嬉しいのだが
……



「異形の客」
殺人現場の特徴
・指紋は拭き取られている
・浴室使用の形跡はない
・毛髪1本検出できない
・残っていたモノは、浴室の排水溝に落ちていた旅館の歯磨き粉のキャップ(指紋はなし)のみ→わざわざ歯磨き粉を持ってきて、浴室で歯を磨いた
  犯人は冷静かつ徹底的に自分の身柄を隠そうとしており、衝動的殺人ではない

包帯で顔を隠す理由
1.逃走犯かもしれない。シャングリラ十字軍かも。
2.常連客、従業員、有名人も正体を隠す必要がある
3.怪我をしている

被害者・相羽の様子
・人目を避けていた サングラスを常用
・駅前の傷害致死事件後、それが顕著になった
       ↓
 犯人か、あるいは、目撃者か

・幻の名盤を何枚も所有していた
・旅館チェックインの時刻に、部屋で観葉植物の宅配便を受け取っていた
・灰皿の複数の吸い殻から頻繁に客人があったはず

被害者の友人・幡多について
・殺害現場の旅館のひとり息子
・サークルのパーティで夜遅くまで遊び回っていて、明け方は部屋で寝ていた

包帯男の不可解な挙動
・部屋に行くときわざわざ有栖川の方を見た。あるいは、有栖川の向こうにある般若の面を見た。
・翌日、通った時は、目もくれず普通に通り過ぎた
≪あるモノではなく、ないモノに光を当てる≫
有栖川と逆方向に、大きな鏡があった
      ↓
最初の包帯男は醜形恐怖症(浴室で歯を磨いたのも鏡が嫌いだった)、逃げた包帯男は別人だった
      ↓
幡多が傷害致死事件の犯人だとしたら、相羽殺しの犯人も幡多だ」という推論が成り立つ

 相場に犯行を目撃され強請られていた。(←相場が幻の名盤を所有していたことが根拠)
 強請られた金の工面の為にと、幡多の実家への窃盗の共犯を持ち掛け、架空の犯人(包帯男)に交代で成りすます。

 仮面などを介した「被害者と加害者のバトンタッチ」というネタはありふれているが、初出は1999年なので“ありふれた”という感想を持つのは間違いかもしれない。
 駅前の傷害致死事件を火村は「衝動的(発作的)殺人」と言ったが、狂気を携帯していたようなので“発作的”は妥当ではない。


火村の幡多への言葉
「見知らぬ人を発作的に殺し、友人を計画的に殺してなお平然ととぼけて笑っている人間に自主は必要ない。
 そんな奴は、逮捕状を携えた刑事の詰問を受け、手錠を掛けられ引き立てられるのがお似合いだ」


今回の大家・時絵からの謎掛け
 金庫の番号の暗号……ないモノを探す(見えないものに光を当てる)が解明の鍵
 「見えないものに光を当てる」が事件の真相解明のヒントになった。しかし、あの暗号は、それだけで融けるのだろうか?
 金庫の中身は夏樹マリのお宝写真(若い時の写真)だった。


今回の火村&有栖川漫才
金田一幸助を彷彿させるような出で立ちで現場に到着、歩み寄りと有栖川を指差し
「犯人はお前だ!」

ふたりで事件を整理
「事件は明け方、容疑者たちはそれぞれ一人で部屋にいて、アリバイがない」
「そや…そやから俺まで疑われている」
「しかし、お前を含めた容疑者た…」
「含めるな!」



【ストーリー】番組サイトより
 山間の温泉旅館に泊まり込んで執筆することになった有栖(窪田正孝)。彼は、その旅館で顔全体を包帯で巻いた不気味な男と出会う。その包帯男も、宿泊客の一人だった。
 翌朝、有栖が散歩していると、包帯男が通りかかる。まもなく、包帯男が泊まっているはずの部屋で何者かに絞殺された男性の遺体が発見される。被害者は宿泊客ではない若い男性だった。有栖は、包帯男が殺したと断言する。

 まもなく、鍋島(生瀬勝久)ら警察が旅館に到着し、火村(斎藤工)も駆け付ける。被害者の身元は、相羽(佐野岳)という大学生と判明。殺害現場には、犯人の手掛かりとなる痕跡は何一つ残されていなかった。
 火村は、犯人が徹底的に自分の身柄を隠そうとしていることから、衝動的な殺人ではないと推理。外部から侵入できる場所もなく、旅館の中にいる人間が手引きしない限り、入れないようになっていた。現場の状況から、包帯男が相羽を招き入れて殺したと考えられた。顔を見られたくない宿泊客と従業員の中の誰かが、包帯男になっていた可能性が出てくる。

 宿泊客には有栖の他、CMで世間に顔を知られている美容整形外科医・是枝、過激派集団・シャングリラ十字軍の元メンバー・田ノ上と、彼女を旅館で待ち伏せていた男・呉。しかし誰一人、相羽と関係があった人間はおらず、彼を殺す動機がない。
 火村は鍋島とともに、相羽の住んでいたアパートを訪ねる。大家に話を聞くと、相羽がほとんど家から出ない引きこもりだったことが分かる。聞き込みの最中、相羽の友人・幡多(吉沢亮)が現れる。幡多の実家は、相羽が殺された旅館だという。幡多にも容疑がかかるが、殺害時刻には完璧なアリバイがあった。

 謎の包帯男の正体とは? そして、相羽を殺したのは一体誰なのか!?


原作:異形の客(「暗い宿(KADOKAWA)」収録)


脚本:マギー
演出:佐久間紀佳
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