第65期王将戦七番勝負第4局は、郷田王将が勝って2勝2敗のタイに戻した。
(第5局は、3月13・14日(日・月)。一ヶ月近くも間が空く)
羽生名人が突撃して、郷田王将がしっかりそれを受け止め、最後に一刀両断した。
時折見られるが、「羽生名人が課題(疑問)と思っている局面を、実際に指してみてその是非を確認した」という印象を受ける将棋だった。
強引に、あるいは単純に攻め、細い攻めが切れ気味になり、最後に反撃を喰らうパターンが多く、本局もその例に加わった。
検証するのに、正攻法で妥協しない郷田王将はうってつけの相手。
羽生ファンには残念だが、攻めを見切られ、正確な寄せで、紛れる余地がなかった。

通常、7筋を突き捨ててから(1筋の突き捨てを入れることもある)▲4五銀と指すところ、単純に▲4五同銀と取ったが……
「1日目の新手(41手目・4五同銀)はこういう手もあるかなと考えた手だが、その後は駒損が次第に響いた。もう少し粘る手がありそうだったが、最後は全くダメになった。」
(羽生名人)
以下、△4五同銀▲同桂△4四銀▲7一角△8一飛と進み、羽生名人の予定はここで▲4一銀だったらしい。

しかし、△3七銀▲4七飛△4六歩▲3七飛△4一玉▲8二銀△7一飛▲同銀不成△2八角で自信がなく、予定を変更したようだ。(中継解説・局後のコメントより)
実戦は△8一飛にすぐ▲4一銀(予定図)と打たず、▲5三桂成△同銀を入れて▲4一銀と打ち、△4三銀と郷田王将が受けて羽生名人の封じ手となった。

封じ手には▲4四歩と▲5二銀成が挙げられ、どちらも難しそうと言われていた。
しかし、角も銀も当たりが掛かっており先手の攻めが急かされており、先に桂を捨てていることを合わせて考えると、この先、先手の攻めが細くなるような懸念を感じた。
封じ手は▲4四歩。
以下△4一玉▲4三歩成△同金左に▲5三角成と角を切り(角銀交換)、△5三同金左に▲6二銀と打つ。

次に▲5三銀成の厳しい狙いがあるが、この時点で銀と角桂の交換の先手の駒損となっており、後手の持ち駒は角2枚に銀桂歩(2枚)と豊富。
後手に反撃が回るとひとたまりもないので、緩い攻めが許されなくなっている。
後手としても間違えると一気に持っていかれるので気は抜けないが、手ごたえを感じていたのではないだろうか。
ここで、「固く受けるなら△4四歩(▲7二銀△8二飛▲7三銀成と寝技に持ち込まれる)だが、郷田王将なら△2二玉」と千田五段は予想(他に△5二玉、△4二銀、△4七歩も考えられた)。
△3二玉は≪先手の飛車で攻められるのは怖くないよ≫と、真正面から攻めを受け止める強い手だ。
郷田王将が“正統派”“格調高い”と讃えられる所以である。
攻めを緩められない羽生名人は、△3二玉に▲5三銀成△同金▲2二金△同玉▲4二飛成と、金を捨てて強引に飛車を成り込む。

以下△3二銀に▲5三龍と金を取り返すが、龍はイマイチの位置で金と角桂の交換と駒損のまま。手番も後手に渡り、非勢がはっきりした。
▲4五同銀(第1図)以降この▲5三龍までに、変化する手はいくつかあったが、どの変化も思わしくないようだ。ただ、勝手な私の憶測だが≪この際、“一番露骨に攻めた局面がどうなのか”、実戦で確かめてみよう≫という思いがあったのではないだろうか?
手番を得た郷田王将は△8六歩▲同銀△8八歩と反撃を開始。△8八歩は▲同玉と取らせて△8四桂を効果的にしたり、△6九銀を可能にしている。
ただ、この△8八歩には、手抜きで▲4二金の勝負手があった。
以下△8九歩成▲同玉△4一金▲同金△同飛に、(1)▲4二歩は△7一飛▲4一銀△3一金▲3二銀成△同金▲4一銀に△3一金で攻めきれない。(2)▲4二金は有力で△同飛▲同竜に、△4一金は▲8二竜△4五角に▲4二歩で先手有望。△4一金では△3一金と受けて、以下▲8二竜△4五角▲7一飛△4一歩▲7三飛成(変化図2)は、まだまだ大変とされた(中継解説・感想戦)。

この勝負手を逃して以降も、金銀交換を甘受するなど、為すがままに応じる。
ただ、▲4三歩は油断できない手。

≪間違えれば後手玉を詰ましますよ≫という手だ。8一の飛車の利きがなくなり(△8六飛と飛車切りを牽制)、先手の持駒が増えれば(厳しく攻めれば駒を渡す)、後手玉に詰みが生じる。
しかし、郷田王将はしっかり読み切り、

自玉の不詰めを見切り、ビシビシ攻め、飛車を切り、桂を捨てて、一気に寄せ切った。

郷田王将らしい勝ちっぷりだった。
(第5局は、3月13・14日(日・月)。一ヶ月近くも間が空く)
羽生名人が突撃して、郷田王将がしっかりそれを受け止め、最後に一刀両断した。
時折見られるが、「羽生名人が課題(疑問)と思っている局面を、実際に指してみてその是非を確認した」という印象を受ける将棋だった。
強引に、あるいは単純に攻め、細い攻めが切れ気味になり、最後に反撃を喰らうパターンが多く、本局もその例に加わった。
検証するのに、正攻法で妥協しない郷田王将はうってつけの相手。
羽生ファンには残念だが、攻めを見切られ、正確な寄せで、紛れる余地がなかった。

通常、7筋を突き捨ててから(1筋の突き捨てを入れることもある)▲4五銀と指すところ、単純に▲4五同銀と取ったが……
「1日目の新手(41手目・4五同銀)はこういう手もあるかなと考えた手だが、その後は駒損が次第に響いた。もう少し粘る手がありそうだったが、最後は全くダメになった。」
(羽生名人)
以下、△4五同銀▲同桂△4四銀▲7一角△8一飛と進み、羽生名人の予定はここで▲4一銀だったらしい。


しかし、△3七銀▲4七飛△4六歩▲3七飛△4一玉▲8二銀△7一飛▲同銀不成△2八角で自信がなく、予定を変更したようだ。(中継解説・局後のコメントより)
実戦は△8一飛にすぐ▲4一銀(予定図)と打たず、▲5三桂成△同銀を入れて▲4一銀と打ち、△4三銀と郷田王将が受けて羽生名人の封じ手となった。

封じ手には▲4四歩と▲5二銀成が挙げられ、どちらも難しそうと言われていた。
しかし、角も銀も当たりが掛かっており先手の攻めが急かされており、先に桂を捨てていることを合わせて考えると、この先、先手の攻めが細くなるような懸念を感じた。
封じ手は▲4四歩。
以下△4一玉▲4三歩成△同金左に▲5三角成と角を切り(角銀交換)、△5三同金左に▲6二銀と打つ。

次に▲5三銀成の厳しい狙いがあるが、この時点で銀と角桂の交換の先手の駒損となっており、後手の持ち駒は角2枚に銀桂歩(2枚)と豊富。
後手に反撃が回るとひとたまりもないので、緩い攻めが許されなくなっている。
後手としても間違えると一気に持っていかれるので気は抜けないが、手ごたえを感じていたのではないだろうか。
ここで、「固く受けるなら△4四歩(▲7二銀△8二飛▲7三銀成と寝技に持ち込まれる)だが、郷田王将なら△2二玉」と千田五段は予想(他に△5二玉、△4二銀、△4七歩も考えられた)。
△3二玉は≪先手の飛車で攻められるのは怖くないよ≫と、真正面から攻めを受け止める強い手だ。
郷田王将が“正統派”“格調高い”と讃えられる所以である。
攻めを緩められない羽生名人は、△3二玉に▲5三銀成△同金▲2二金△同玉▲4二飛成と、金を捨てて強引に飛車を成り込む。

以下△3二銀に▲5三龍と金を取り返すが、龍はイマイチの位置で金と角桂の交換と駒損のまま。手番も後手に渡り、非勢がはっきりした。
▲4五同銀(第1図)以降この▲5三龍までに、変化する手はいくつかあったが、どの変化も思わしくないようだ。ただ、勝手な私の憶測だが≪この際、“一番露骨に攻めた局面がどうなのか”、実戦で確かめてみよう≫という思いがあったのではないだろうか?
手番を得た郷田王将は△8六歩▲同銀△8八歩と反撃を開始。△8八歩は▲同玉と取らせて△8四桂を効果的にしたり、△6九銀を可能にしている。
ただ、この△8八歩には、手抜きで▲4二金の勝負手があった。
以下△8九歩成▲同玉△4一金▲同金△同飛に、(1)▲4二歩は△7一飛▲4一銀△3一金▲3二銀成△同金▲4一銀に△3一金で攻めきれない。(2)▲4二金は有力で△同飛▲同竜に、△4一金は▲8二竜△4五角に▲4二歩で先手有望。△4一金では△3一金と受けて、以下▲8二竜△4五角▲7一飛△4一歩▲7三飛成(変化図2)は、まだまだ大変とされた(中継解説・感想戦)。

この勝負手を逃して以降も、金銀交換を甘受するなど、為すがままに応じる。
ただ、▲4三歩は油断できない手。

≪間違えれば後手玉を詰ましますよ≫という手だ。8一の飛車の利きがなくなり(△8六飛と飛車切りを牽制)、先手の持駒が増えれば(厳しく攻めれば駒を渡す)、後手玉に詰みが生じる。
しかし、郷田王将はしっかり読み切り、


自玉の不詰めを見切り、ビシビシ攻め、飛車を切り、桂を捨てて、一気に寄せ切った。

郷田王将らしい勝ちっぷりだった。