英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

フェイク・バスターズ ”ウイズフェイク”時代をどう生きるか 【追記あり】

2023-09-02 20:14:15 | 時事
『フェイク・バスターズ  ”ウイズフェイク”時代をどう生きるか』
(初回放送日: 2023年8月26日)
生成AIの登場で真偽の見極めが困難な情報が氾濫。世論工作や詐欺事件に発展し、家族の絆が引き裂かれる事態も。“ウィズフェイク”とも言うべき時代をどう生きるのか?

文章・画像・動画・音声まで…、生成AIを使えば誰でも簡単に精巧なフェイクが作れるようになり、偽の商品レビューや災害、さらには世論工作や詐欺事件が横行している。しかしタイパ重視の倍速視聴やフィルターバブル現象で、私たちはフェイク情報や陰謀論に対し加速度的にぜい弱化。そこにつけ込むビジネスも現れ、家族の絆が引き裂かれ、命に関わるケースも起きている。“ウィズフェイク”時代をどう生きるか、専門家と考える。


【出演】
宇野常寛(評論家)
鈴木美穂(認定NPO法人マギーズ東京 共同代表)
平和博(メディア研究者/桜美林大学教授)
西田公昭(社会心理学者/立正大学教授)
山口真一(経済学者/国際大学准教授)

ナレーション 江口拓也(声優) 伊駒ゆりえ(声優)
声の出演 逢坂力(声優) 大井麻利衣(声優) 久嶋志帆(声優)

番組の内容としては
1.《アメリカ国防総省爆発のフェイク画像》や《台風15号による豪雨で静岡県で水害が起きた際の町全体が水没したような画像》などのフェイク画像
・国防総省爆発のフェイク画像によってニューヨーク株式市場のダウ平均株価が一時100ドル以上下落したこと
・フェイクと見破るのは困難で、株価や生活に多大な影響を与えることができる。《処理水放出による海洋汚染の予測シミュレーション》(←実は東日本大震災のあとで津波の広がりを示した画像)で”かの国民”を日本排斥する迷惑行為を扇動した
・生成AIで特別な知識や技術力は必要なしに作成でき、コストパフォーマンスが非常に良い(アクセス数による多大な広告収入も)
・フェイク判別AIを各地で開発中
・簡単に誰でもスマホなどで《フェイクかどうかを判定できるツール・システム》を開発・普及させることが求められる

2.(生成AIなどによるフェイク画像ではないが)ネット社会における落とし穴(←勝手に見出しを付けました)
・「がんに効く○○」のワナ
・陰謀論

 参考として……
 「1.フェイク画像」「2.ネット社会における落とし穴」については、下記の記事が詳しいです。
 (番組が記事を作成してアップしたのか、記事を基に番組を作成したのかは不明)
関連リンク――――
【記事】偽画像から世論工作まで… “AIフェイク”の巧妙な手口と対策の最前線
【記事】真偽判断は極めて困難… “AIフェイク”氾濫の時代を生きる術とは
【記事】フェイク情報はどんな時に拡散する?そもそもフェイク情報とは?
【記事】親が陰謀論を信じ込んでしまった… 苦しむ子どもたち
【記事】「がんに効く○○」のワナ 37歳で命を落とした女性が信じた誤情報


 今回、特に考えさせられたのは「2.ネット社会における落とし穴」
 この記事では、こちら(第2項)について述べていくが、1についても少し。
生成AIで作成されたフェイク画像を振り込め詐欺に悪用
 IT企業の社長に友人からビデオ電話(テレビ電話)があり、「入札で8500万円必要だ。貸してほしい」と。
 顔も声も本人のモノだと思ったので、疑いを持つことなく振り込んだ


 数秒の動画があれば、フェイク動画は容易に作成できるという。
 番組出演者は「こうやってテレビに出演している我々は危ない」と苦笑
 西田教授(社会心理学者)「なりすまし電話詐欺に対しては、テレビ電話を普及させればいいという確信を持っていたが…」


2.ネット社会における落とし穴
陰謀論を信じ込んでしまった母
 コロナ禍でコロナに関する情報をネットで調べるようになった。
 「新型コロナは存在しない」「ワクチンは人口削減のため」とか言うようになった。
 さらに、「地球温暖化はウソ」「あの震災は人工地震」などコロナに関するものだけでなく、“おすすめ動画”で表示される陰謀論を扱った動画を、次から次へと見ていたらしい。
   ↓
 おすすめ動画には、根拠の不確かな民間療法や健康食品も表示されるように……

砂糖玉…様々な心身の不調に効くという佐藤が原料。1ケース14,000円
微生物を培養したエキスが使われているという飲み物、1本5000円
母「風邪予防のサプリを飲んで。こっちは花粉症よ」
娘「科学的に根拠はないでしょう」
母「私はこれだけ勉強しているから、知ってるの。あなたのためなのよ。もっと勉強しなさい」

「ウクライナの戦争は嘘。ロシアの侵攻じゃなくて、ウクライナの自作自演なのよ」
「戦争なんて起こっていない。すべて捏造なの。あなたこそ目を覚ましなさい」


 ………《嘘の情報を勉強して知っていてもなあ》と反論したくなる
 (番組ではもう一例、紹介していた……参照:親が陰謀論を信じ込んでしまった… 苦しむ子どもたち

《レコメンデーションによるフィルターバブル》
 レコメンデーションによるフィルターバブルというと、何のことやらと思ってしまうが……
レコメンデーション…… ECサイトなどが顧客の訪問履歴や購入履歴などのデータに基づき、顧客に自動的に商品やサービスなどをすすめる仕組み。いわゆる“おすすめ動画(情報)”。買い物だけでなく、動画や情報でもこういった機能が使用されているのだろう。
フィルターバブル……アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境

 レコメンデーション自体は便利な機能だとは思うが、他人にPCを覗かれた場合、自分の趣味や嗜好が知られてしまうのも、善し悪しだ。
 まあ、この程度なら良いのだが、“フィルターバブル”状態は好ましくない。
 記事で取り上げられた母親などは、まさにこの状態。
 自分が関心のある情報に取り囲まれ、その情報が自分が知覚できる情報の大部分になってしまう。
 その上、《テレビで言っている情報は正しい》《ネットで書かれている情報は正しい》と思う傾向が強い世代である。
 《自分は非常に大量の事実(事実でないものも多い)をたくさん知っている》⇒《自分は正しい》という確信・信念が確立される……恐ろしい。


鈴木美穂氏(認定NPO法人「マギーズ東京」共同代表)
「1回踏んでしまうとどんどんその陰謀論の話が出てきてしまって、その話に囲まれてしまったら、信じてしまう気持ちも分からなくないですよね」
「フィルターバブルの中の危険な状態で、それを信じざるを得なくなってしまっている状況があるというのは、本人の責任だけではなくて、社会やネット上の管理体制にも責任がある」

《がんに効く飲料水》……35歳女性、子宮体がんステージ1B
主治医「子宮や卵巣は摘出する必要があるが、治療をすれば根治が見込める」
女性《将来、結婚して子どもが欲しい》と考えていた
 ⇒《手術(摘出)しなくてすむ方法はないか?》とインターネットなどで調べる。
ある“がんセミナー”の情報を聞き、足を運ぶ
ある飲料水を勧められる
「2時間おきに30ミリリットル飲んでください。あらゆる臓器に入って、癌を死滅させてしまう。副作用は全くないんです」
“特別に加工したヨウ素が入っている”飲料水は、会社の未公開株の購入者がもらえる特典
ラインで病気に関する相談もできるという


毎月50,000円を支払う

【それからの日々】
「がんを3ヶ月で治す!…“私の勝利日記”」を毎日書く
1日8回飲料水を飲み、食事内容なども詳細に綴る。
内容を会員限定のライングループにシェア
励ましの言葉や、生活習慣に関するアドバイスが逐次届くようになった
お客様窓口、不安・悩み相談、食事管理、健康機器、がんアドバイザーなどとの閉ざされた空間だけで悩みや相談を共有するようになった

(ラインの一例)
「きのう(5日ぶりくらいに)また出血が見られました(1日におりものシートを2~3回替えるくらいの量)」
「かなり良いですね! 一気に治るかもしれませんね!!
 これ ひょっとしたら ひょっとしちゃいますね
 無事にがん細胞ちゃんが出産されます(にっこりマーク)」
出血は水の効果で、がん細胞が体の外に出ているかの証拠であるかのように説明していた
      がんアドバイザー……タレント活動をしている人物。医療については独学で勉強したと語る

セミナーでは、《病院での手術や抗がん剤治療は命を縮める》と伝えられていた
「病院での治療、考えてみない?」(姉)
「病院の医者なんて信用できない!手術も抗がん剤治療もやらない!いちいち口出ししないで!」

専門医の見解……出血は子宮体がんの患者の多くに見られる症状で、進行するほど出血量は増える。”出血でがん細胞が排出される”というのはあり得ない
飲料水の分析検査……100グラムあたり、感想昆布50グラム相当のヨウ素

………………苦痛の中で37歳でこの世を去る

鈴木美穂氏(認定NPO法人「マギーズ東京」共同代表)
「ああいう人たちは、やさしいし甘いことばをかけてくるんですよね。
 不安を抱いている時って、“絶対大丈夫”、“絶対治るよ”って言ってもらいたいです。
 だけれども、命や医療は不確実性の多いので、本当に誠実な医師は“絶対大丈夫”、“絶対治るよ”とかは言えない。
 “絶対大丈夫”、“絶対治るよ”と優しく言ってくれる方に行きたくなる」

 ラインでの“ガンアドバイザー”の言葉など、軽薄そのものだが、何の疑いも持っていなかったようだ。


この会社の社長らは“国に届けを出さずに株を売り出していた”金融商品取引法違反の疑いで、今年3月に逮捕、起訴された

警視庁によると《昨年4月までの5年間で約80億円集めていた》
社長は2か月で保釈、5月に株購入者たちの前に姿を現し
「金商法(金融商品取引法)違反は形式犯と言われていますけれど、これ、何かと言いますと、駐車違反などと一緒です。
 テレビの報道を信用してしまえば、それが不安や恐怖となり、うちの治療ができない。
 人の命を救う製品であるので、正しい商品、良い商品は世の中に出すべきだって、主張を強くしていきたいかなって思います」


 命を奪う詐欺(資産強奪)をしたというのに、「“駐車違反”と同じ」と公然と言い切り、「命を救う」正義を主張……
 逮捕起訴されたのも、詐欺ではなく金融商品取引法違反に過ぎない……世の中、間違っている

「閉ざされた携帯の中だけのやり取りで、死のうが何しようが、カモにできてお金が取れればそれでいいんだ。
 死んだところで別に、向こう側にしてみれば、痛くもかゆくもない」

……被害者の姉の怒りの言葉が心に残る…………


平 和博氏(メディア研究者)
「メディアに対する信頼が低下してきているが
 しっかりと情報を検証した上で発信している期間はマスメディアぐらいしかない」


 インターネットの即時性・機動性に押され、「テレビの時代は終わった」と言われているが、テレビ(マスメディア)が今こそしっかりしてほしい。


【追記】
フェイク画像・映像による事件や騒動のポイントとして(本文でも述べたが)
山口真一氏(経済学者/国際大学准教授)
「AIによる作業がコストパフォーマンスが良すぎるということがキーポイント。
 技術のハードルが低い割に、ものすごく大きな利益を得ることができる」


 実行する技術や手間が簡単なら、それを行うことのリスクを大きくすることが有効である。
 リスク、つまり、罰金や実刑をとてつもなく大きくすればよい!

陰謀論について
 取材に応じた動画配信者・ひろ氏(30代)
「都市伝説や陰謀系のユーチューブは、“非常にコスパがいい”」

……もともとは食べ歩きなどの動画を投稿していたが、コロナ禍で関心が高まった陰謀論の配信を始めた。
例えば 『人工地震は本当?  数字の46がすべて関わっている 全て人口茶番劇』
 ……地震は何者かが人工的に引き起こしている説
「人工地震て、最近、自分が面白いと思ったのが、数字の46が入っている事件や事故や地震は全て人口ではないか?
 阪神淡路大震災が起きたのは、平成7年1月17日午前5時46分。東日本大震災、2011年3月11日14時46分
 46という数字を見たら、気をつけた方が良い」

 ……これって、大きな事件事故の共通項(この場合、「46」)を拾い上げて、列挙するだけでよい!
 しかし、視聴者の反応は
「すごい洞察力だ。全く気がつかなかった。確かに46ですね」
「大切なことを教えてくださって、ありがとうございます」
「真実は近くにある。みんな目を見開いて」

 陰謀論をテーマにすると、済生会数が伸び、チャンネル登録者数も6万人に増えた。
 視聴者は1再生当たりの広告単価が高いという45歳以上が8割を超え、効率的に収入を得られるようになった。


“本当かウソか分からないものを発信する重みや責任は?”
「そうですね。重み責任というモノを考えると……
 “間違ったことだけは絶対に広げてはいけないな”という気持ちはありつつ、しかしながら、
 “間違っているかもしれない”という気持ちもありながら、発信はしているですが、
 そこも含めて、楽しんでいただくというがすべてというか、エンターテインメントというモノを楽しんで見てほしい」


 結局、発信することに責任を持たない。それっぽくて興味を引くことを発信して、広告収入を得られれば、いいようだ。
 この番組で、陰謀論に嵌ってしまった母を持つ娘の話を見てほしいものである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする