(「こんな相撲を見るために、15日間も観ていたわけではない」の続きのようなものです)
引退や怪我などで横綱不在の場所が多い最近(照ノ富士は“致し方なし”のような気も…)……
【最近、感じること】
1.平幕力士の優勝が多い
令和以降の平幕優勝は
阿炎………令和4年九州場所(11月場所)・西前頭9枚目・12勝3敗
玉鷲………令和4年秋場所(9月場所)・東前頭3枚目・13勝2敗
逸ノ城……令和4年名古屋場所(7月場所)・西前頭2枚目・12勝3敗
大栄翔……令和3年初場所(1月場所)・西前頭1枚目・13勝2敗
照ノ富士…令和2年名古屋場所(7月場所)・東前頭17枚目・13勝2敗
徳勝龍……令和2年初場所(1月場所)・西前頭17枚目・14勝1敗
朝乃山……令和元年夏場所(5月場所)・西前頭8枚目・12勝3敗
と、異常に多い。一昔前は5年に1度くらいの頻度であった。ただ、過去にも平幕優勝が頻発する時期が散見できる。これは、横綱大関が怪我などで休場や不調が続いたせいだと推測でき、それはそのまま、現状に当てはまる。
パターンとしては、もともと役力士であったが、直前の場所で星が上がらず、平幕に転落した実力者が、星を伸ばす。(怪我により、全休や2場所連続大負けし、幕内下位まで下がって、大勝ちするケースもこれに類する)
それと、伸び盛りの若手が勝ち星を伸ばし、その勢いで優勝(若手ではないが、徳勝龍もこのパターン。この場所だけ強かった・笑)
2.立ち合いまでが非常に長い
「制限時間一杯」が告げられ、身体を拭いた後。土俵中央に向かう時、塩をまく。
そして、蹲踞(そんきょ)の姿勢(爪先立ちでかかとの上に腰を下ろし、膝を開いて上体を正す姿勢…剣道でも行う)を取る。
そこからが長い!
蹲踞の後、立ち上がる。そこから、ゆっくりと腰を割りながら状態を下げ、両手こぶしを仕切り線の上に乗せる。(足の構えや手の指の開閉は違うが)腰から上はクラウチングスタートの姿勢に似た構えを取る。そこから、行司の「八卦よい」の掛け声で前に踏み出すのだが……
腰を割りながら状態を下げる動作に移るまでが長い!
さらに
腰を割って、両手を仕切り線に付けるまでが、長い!
そりゃあ、立ち合いが勝負を分ける大きなポイントなのだから、一番のタイミングで立ち合いを決めたい。
“相手との呼吸を合わすため”というのもあるが、逆に、“相手の呼吸や気合を読んで、それを微妙に外すため”でもある。
もちろん、この立ち合いの駆け引きも、相撲の奥の深さであり、面白さでもあるが、長い、長すぎる!
3.土俵際の逆転が多い(理由として次の4つを挙げる)
①体が大きいので、足を運んで押し切る(寄り切る)よりも、勢いのまま体を預ける方が楽
②皆が、最後まであきらめなくなった(捨て身の突き落としが増えた)
③勝ち負けの判定で、「体がない」を重要視しなくなった。
「体がない」……土俵に留まることができない体勢。地面(床)に足や手や胴体がついてはいないが、押されて、土俵の外に身体が飛び出した状態。「残り腰がない」と表現される。
以前は、突き落とされて、先に前のめりで身体が落ちても、相撲の流れを重視して、押している方を勝ちと判定した。
④ビデオ機器し進歩によって、押されている力士が俵を踏み越していないのが(わずかに踵や足の裏が浮いているのを、映像で確認できるようになった
【各力士の感想】
貴景勝
押す圧力はトップクラス。万全な状態での強さで言えば、照ノ富士を除けば、1,2位。
ただし、ケガで万全な状態で臨めることが少なく、押し切れず、相撲が長くなると、勝率がガクンと下がる。
相撲を取り切るスタミナがない。それを自覚しているので、押しを受け止められた時、相撲が単調になる。
一旦、動きを止め、身体全体でぶちかます。威力はあるように思うが、相手力士も、タイミングがわかるので対応しやすく、更に相撲が長くなり、敗れる。
それと、押しを受け止められた時、分が悪くなると思うのか、張り手に頼る傾向もある。一度張り手を繰り出したら、4,5度繰り返す。「品格のない」相撲に陥る。
今場所で言うと、対正代戦。張り手を何度も繰り出したが、張り手に拘り過ぎ、まともに正代の寄りを食らってしまった。
解説者は、この一番での貴景勝の張り手を見て、「張り手を繰り出すと、状態が起きてしまうので、良くない。そこを正代に突かれた」と述べたが、確かに、そういう張り手の短所もあるが、《張り手に頼ろうとした》弱い気持ちと、張り手に固執した隙が、負けを呼び込んだのである。
優勝決定戦での変化については、前記事で書いたので、書くまいと思ったが……優勝インタビューでの殊勝な言葉が評価されているのようなので……
「“絶対に負けられないという強い気持ち”で臨んだ」
確かに、大関の立場で、《若い平幕力士に優勝をさせてはいけない》という気持ちは理解できる。しかし、《優勝決定戦で若い平幕力士相手に、最初から変化して勝ちにいく》という姿勢は全く評価できない。“絶対に負けられないという強い気持ち”という言葉の響きに、世間は(マスコミも)ごまかされているように思う。
(変化について聞かれて)
「右差しを徹底して封じようと思った。ああいう形で決まるとは思わなかったですけど、きちっと集中して自分のやるべきことをやりました」
立ち合い直後、両手を上に挙げて、叩く動作に入っていたので、《右差しを徹底して封じよう》としたようには、全く思えない。
熱海富士の状態が突っ込み過ぎていたのを瞬時に判断しての“はたき込み”だった可能性もあるが、立ち合い直後の動作開始だったので、最初から変化する気持ちが大きかったと考える。
それに、《右差しを徹底して封じよう》と考えたのは事実かもしれないが、その考えと“はたき込み”は整合性が全くない。
熱海富士
熱海富士の所作を見ていると、”わんぱく相撲”が、そのまま"大相撲”になった……そんな感じがする。
猛稽古で、真っすぐな押し相撲に加え、天真爛漫さ魅力的。
足腰もよく、体幹もしっかりしている。
しかし、立ち合い前の足の裏で土俵を掃くようなダンスまがいのステップは、好きになれない。
阿炎
“外連味(けれんみ)のない相撲”というような表現があるが、阿炎の相撲は外連味がたくさん。
10%近くは、①最初から立ち合いの変化を考えている。20%は②取りあえず当たっておいて、どこかで“引こう”と。
35%は③当たっておいて、相撲の流れによっては“引こう”
35%は④強く当たって、押し切ろう(突き切ろう)……そんな感じがする。
今場所の取り口を検証してみると……対朝青龍④、対若元春③、対大栄翔④、対霧島②、対貴景勝②、対明生③、対朝乃山②、対正代③、対翔猿④、対隆の勝①、対宇良③、対遠藤①、対琴ノ若②、対熱海富士①、対北勝富士②
正攻法で押してほしいなあ。
錦木
先々場所後半から覚醒した。先々場所後半~先場所前半までの期間がひと場所だったら、文句なし優勝だった。
とにかく、低い重心から押し上げる圧力は随一。
今場所は万全ではなかったのか、押す圧力も2割減で、しかも、前に落ちることが多かった。
来場所に期待。
正代
強い時の最大値だったら、角界一かも。
大関時代は、粘り腰だけで相撲を取るようなヘナヘナさだった。大関陥落後の方が、相撲内容が良い。
強い時の比率が増せば、大関復帰も大いにある。
翔猿
外連味と言えば、翔猿も頭に浮かぶ(阿炎のそれとは、質が違う)
やや小柄なので、それを補うために、あれこれ手を出し、動く。《何をされるか分からない》という警戒感から、相手が躊躇しているうちに、どんどん自分のペースに引き込む。
とにかく、あれこれ動き、スタミナも相当ある。相手は精神的にも体力的にも消耗し、ついには、翔猿の軍門に下る…という展開が多い。
大栄翔
突き押し相撲は魅力的。
突こうとする気持ちが強すぎて、足がついていかないことがあり、前にバッタリ落ちてしまうことがよくある。
あと一足分だけ足を前に出してつくことを心がければ、もっと勝てるはず。
高安
何度も何度も優勝のチャンスがありながら、するりと逃がしてしまう……
特に、若隆景との一番。激しい相撲の末、若隆景を追い詰め、賜杯を掴みかけたと思った瞬間に、粘り腰に合い、逆転負け……
一度、優勝させてあげたい
豊昇龍
足腰、反射神経の良さは抜群(気も強い)で、魅力ある相撲。
いつも怖い顔をしているが、先場所の優勝インタビューで、家族の次に報告したのは「叔父さん」と言った時の、ニッコリ顔は素敵だった(ツンデレか?)
霧島
足腰もよく、上半身の力もあるので、まわしを取ったら強い。
うまさもあり、速い動きにも対応できる。万能タイプ。
注目される前から、個人的には注目しており、《ブログに書けばよかった》と後悔している。
北青鵬
長身で、腕力、握力が強そう。
右上手一本で相手を振り回せる。
なので、肩越しからまわしを取るような強引な取り口が多い。それでも勝ってしまう。(正攻法ではないが、魅力的)
師匠は宮城野親方(白鵬)でなので、かなり肝が据わっている。
親方も、敢えて、自ら口を出さないのだろう。
引退や怪我などで横綱不在の場所が多い最近(照ノ富士は“致し方なし”のような気も…)……
【最近、感じること】
1.平幕力士の優勝が多い
令和以降の平幕優勝は
阿炎………令和4年九州場所(11月場所)・西前頭9枚目・12勝3敗
玉鷲………令和4年秋場所(9月場所)・東前頭3枚目・13勝2敗
逸ノ城……令和4年名古屋場所(7月場所)・西前頭2枚目・12勝3敗
大栄翔……令和3年初場所(1月場所)・西前頭1枚目・13勝2敗
照ノ富士…令和2年名古屋場所(7月場所)・東前頭17枚目・13勝2敗
徳勝龍……令和2年初場所(1月場所)・西前頭17枚目・14勝1敗
朝乃山……令和元年夏場所(5月場所)・西前頭8枚目・12勝3敗
と、異常に多い。一昔前は5年に1度くらいの頻度であった。ただ、過去にも平幕優勝が頻発する時期が散見できる。これは、横綱大関が怪我などで休場や不調が続いたせいだと推測でき、それはそのまま、現状に当てはまる。
パターンとしては、もともと役力士であったが、直前の場所で星が上がらず、平幕に転落した実力者が、星を伸ばす。(怪我により、全休や2場所連続大負けし、幕内下位まで下がって、大勝ちするケースもこれに類する)
それと、伸び盛りの若手が勝ち星を伸ばし、その勢いで優勝(若手ではないが、徳勝龍もこのパターン。この場所だけ強かった・笑)
2.立ち合いまでが非常に長い
「制限時間一杯」が告げられ、身体を拭いた後。土俵中央に向かう時、塩をまく。
そして、蹲踞(そんきょ)の姿勢(爪先立ちでかかとの上に腰を下ろし、膝を開いて上体を正す姿勢…剣道でも行う)を取る。
そこからが長い!
蹲踞の後、立ち上がる。そこから、ゆっくりと腰を割りながら状態を下げ、両手こぶしを仕切り線の上に乗せる。(足の構えや手の指の開閉は違うが)腰から上はクラウチングスタートの姿勢に似た構えを取る。そこから、行司の「八卦よい」の掛け声で前に踏み出すのだが……
腰を割りながら状態を下げる動作に移るまでが長い!
さらに
腰を割って、両手を仕切り線に付けるまでが、長い!
そりゃあ、立ち合いが勝負を分ける大きなポイントなのだから、一番のタイミングで立ち合いを決めたい。
“相手との呼吸を合わすため”というのもあるが、逆に、“相手の呼吸や気合を読んで、それを微妙に外すため”でもある。
もちろん、この立ち合いの駆け引きも、相撲の奥の深さであり、面白さでもあるが、長い、長すぎる!
3.土俵際の逆転が多い(理由として次の4つを挙げる)
①体が大きいので、足を運んで押し切る(寄り切る)よりも、勢いのまま体を預ける方が楽
②皆が、最後まであきらめなくなった(捨て身の突き落としが増えた)
③勝ち負けの判定で、「体がない」を重要視しなくなった。
「体がない」……土俵に留まることができない体勢。地面(床)に足や手や胴体がついてはいないが、押されて、土俵の外に身体が飛び出した状態。「残り腰がない」と表現される。
以前は、突き落とされて、先に前のめりで身体が落ちても、相撲の流れを重視して、押している方を勝ちと判定した。
④ビデオ機器し進歩によって、押されている力士が俵を踏み越していないのが(わずかに踵や足の裏が浮いているのを、映像で確認できるようになった
【各力士の感想】
貴景勝
押す圧力はトップクラス。万全な状態での強さで言えば、照ノ富士を除けば、1,2位。
ただし、ケガで万全な状態で臨めることが少なく、押し切れず、相撲が長くなると、勝率がガクンと下がる。
相撲を取り切るスタミナがない。それを自覚しているので、押しを受け止められた時、相撲が単調になる。
一旦、動きを止め、身体全体でぶちかます。威力はあるように思うが、相手力士も、タイミングがわかるので対応しやすく、更に相撲が長くなり、敗れる。
それと、押しを受け止められた時、分が悪くなると思うのか、張り手に頼る傾向もある。一度張り手を繰り出したら、4,5度繰り返す。「品格のない」相撲に陥る。
今場所で言うと、対正代戦。張り手を何度も繰り出したが、張り手に拘り過ぎ、まともに正代の寄りを食らってしまった。
解説者は、この一番での貴景勝の張り手を見て、「張り手を繰り出すと、状態が起きてしまうので、良くない。そこを正代に突かれた」と述べたが、確かに、そういう張り手の短所もあるが、《張り手に頼ろうとした》弱い気持ちと、張り手に固執した隙が、負けを呼び込んだのである。
優勝決定戦での変化については、前記事で書いたので、書くまいと思ったが……優勝インタビューでの殊勝な言葉が評価されているのようなので……
「“絶対に負けられないという強い気持ち”で臨んだ」
確かに、大関の立場で、《若い平幕力士に優勝をさせてはいけない》という気持ちは理解できる。しかし、《優勝決定戦で若い平幕力士相手に、最初から変化して勝ちにいく》という姿勢は全く評価できない。“絶対に負けられないという強い気持ち”という言葉の響きに、世間は(マスコミも)ごまかされているように思う。
(変化について聞かれて)
「右差しを徹底して封じようと思った。ああいう形で決まるとは思わなかったですけど、きちっと集中して自分のやるべきことをやりました」
立ち合い直後、両手を上に挙げて、叩く動作に入っていたので、《右差しを徹底して封じよう》としたようには、全く思えない。
熱海富士の状態が突っ込み過ぎていたのを瞬時に判断しての“はたき込み”だった可能性もあるが、立ち合い直後の動作開始だったので、最初から変化する気持ちが大きかったと考える。
それに、《右差しを徹底して封じよう》と考えたのは事実かもしれないが、その考えと“はたき込み”は整合性が全くない。
熱海富士
熱海富士の所作を見ていると、”わんぱく相撲”が、そのまま"大相撲”になった……そんな感じがする。
猛稽古で、真っすぐな押し相撲に加え、天真爛漫さ魅力的。
足腰もよく、体幹もしっかりしている。
しかし、立ち合い前の足の裏で土俵を掃くようなダンスまがいのステップは、好きになれない。
阿炎
“外連味(けれんみ)のない相撲”というような表現があるが、阿炎の相撲は外連味がたくさん。
10%近くは、①最初から立ち合いの変化を考えている。20%は②取りあえず当たっておいて、どこかで“引こう”と。
35%は③当たっておいて、相撲の流れによっては“引こう”
35%は④強く当たって、押し切ろう(突き切ろう)……そんな感じがする。
今場所の取り口を検証してみると……対朝青龍④、対若元春③、対大栄翔④、対霧島②、対貴景勝②、対明生③、対朝乃山②、対正代③、対翔猿④、対隆の勝①、対宇良③、対遠藤①、対琴ノ若②、対熱海富士①、対北勝富士②
正攻法で押してほしいなあ。
錦木
先々場所後半から覚醒した。先々場所後半~先場所前半までの期間がひと場所だったら、文句なし優勝だった。
とにかく、低い重心から押し上げる圧力は随一。
今場所は万全ではなかったのか、押す圧力も2割減で、しかも、前に落ちることが多かった。
来場所に期待。
正代
強い時の最大値だったら、角界一かも。
大関時代は、粘り腰だけで相撲を取るようなヘナヘナさだった。大関陥落後の方が、相撲内容が良い。
強い時の比率が増せば、大関復帰も大いにある。
翔猿
外連味と言えば、翔猿も頭に浮かぶ(阿炎のそれとは、質が違う)
やや小柄なので、それを補うために、あれこれ手を出し、動く。《何をされるか分からない》という警戒感から、相手が躊躇しているうちに、どんどん自分のペースに引き込む。
とにかく、あれこれ動き、スタミナも相当ある。相手は精神的にも体力的にも消耗し、ついには、翔猿の軍門に下る…という展開が多い。
大栄翔
突き押し相撲は魅力的。
突こうとする気持ちが強すぎて、足がついていかないことがあり、前にバッタリ落ちてしまうことがよくある。
あと一足分だけ足を前に出してつくことを心がければ、もっと勝てるはず。
高安
何度も何度も優勝のチャンスがありながら、するりと逃がしてしまう……
特に、若隆景との一番。激しい相撲の末、若隆景を追い詰め、賜杯を掴みかけたと思った瞬間に、粘り腰に合い、逆転負け……
一度、優勝させてあげたい
豊昇龍
足腰、反射神経の良さは抜群(気も強い)で、魅力ある相撲。
いつも怖い顔をしているが、先場所の優勝インタビューで、家族の次に報告したのは「叔父さん」と言った時の、ニッコリ顔は素敵だった(ツンデレか?)
霧島
足腰もよく、上半身の力もあるので、まわしを取ったら強い。
うまさもあり、速い動きにも対応できる。万能タイプ。
注目される前から、個人的には注目しており、《ブログに書けばよかった》と後悔している。
北青鵬
長身で、腕力、握力が強そう。
右上手一本で相手を振り回せる。
なので、肩越しからまわしを取るような強引な取り口が多い。それでも勝ってしまう。(正攻法ではないが、魅力的)
師匠は宮城野親方(白鵬)でなので、かなり肝が据わっている。
親方も、敢えて、自ら口を出さないのだろう。