【第10話 ストーリー】(番組サイトより)
「MICHI」を始めとする超高度AIによって人間社会が維持管理されることに、いつしか人類は疑問を抱かなくなった。しかし、AIのゆりかごに収まらない魂は密かにくすぶり、今も世界に戦いを挑む。時に信仰や、血を伴いながら。
事例1.五本木テツヤ(新医科医師・31歳、ヒューマノイド)……超高度AIへの反抗
手術(電脳手術)のシーン
「なぜ、AIに任せず、人間の手で電脳治療を?」(外科部長風の男性の“人間の手”という言葉で、最初しばらく五本木を人間だと思ってしまった)
……真剣に治療に取り組んでいた五本木だったが、不意に施術道具を置き、AIカメラを一瞥し、手術出から出て行ってしまった。手術放置(治療放置)!
さらに、その後、
ナレーション風五本木のセリフ
「人より賢いAIが生まれたら世界はどう変わるのか?
賢いAIが、より賢いAIをを創り、人知の及ばぬ超知能が文明や人間のあり方を根本から変える。
かつて人々は、こうした劇的変化を“技術的特異点=シンギュラリティ”と名付け、
ある者はその到来を信じ、ある者は怪しんだ。
そして、超高度AIが稼働する今、この言葉を思い出す人は少ない」
場面はあるマンションに一室で、女性に刃物を突き付ける五本木。
命乞いし、お金を差し出す女性。
「紙のお金…こんなモノがなぜ今も使われているんだろう?……やっぱりおかしいよ、この世界は」
女性を刺す、五本木………
喫茶店で、五本木とその彼女の会話
「捕まるかなあ、犯人は?」
「そりゃ、捕まるでしょう。ありとあらゆる情報をAIがかき集めて捜査するんだから。逃げ切れっこないでしょう、この国で」
「それだけの情報と能力を、犯罪の予知に活かさないのかな?」
取調室
「なぜ、犯行を?」(女性刑事・ヒューマノイド)
「なぜって…人類の進歩を取り戻す為です」
「それはどういう意味ですか?」
「僕らヒューマノイドは、超高度AIが完成させた人の知能のコピーだ。
そんなものが創れる時代が訪れたというのに、人間の文明は大して進歩していない。
“紙のお金”、“男と女の関係”、“容疑者を監視する刑事”、そして“女性取調官”…何もかもが既視感のある過去の後継のままだ。そう、世界は変わらなかった。なぜだ?………なぜなら、超高度AIが技術革新をコントロールしているから。来るべき未来を留保し続けているから?」
「質問に答えて。なぜ、見知らぬ女性を殺害したの?」
「うるさいっ!お前らはみんな、超高度AIに洗脳されているんだ!俺はそれに気づいたから、女を殺したんだ」
「あんたは疑問に思わないのか?超高度AIが動いているっていうのに、なぜ、こんな旧態依然とした世界に甘んじている?」
「やみくもの発展すればいいという時代は終わっているのよ」
「それ(そういう考え)もですよ。そいう意保守的な空気が社会全体を覆ているのは、超高度AIが人間の考えを誘導しているからなんです。
俺はそれに気がついたんですよ」
「じゃあ、私たちは夜な夜な、洗脳装置にでも繋げられているのかしら?」
「超高度AIには、洗脳装置も洗脳メディアも不要ですよ。
その代わり、例えば、《ちょっとした渋滞を作る》、あるいは、《ロボットの増産を助言する》」
「どういうこと?」
「つまり、“ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす”ように……
人間には因果関係が理解できない干渉を繰り返して、超AIは人間に悟られずに、この世界を思い通りに誘導しているんです」
「で、それと殺人に何の関係が?」
「だ~か~らっ!あんたらじゃ、わからないんだよぉ!
でも、超高度AIは干渉の繰り返しが引き起こす未来を予測できるぅ!
俺は、たった一人で、”MICHI”と闘っているんだっぁ!」
「……あの女が死ぬことで、超AIが介入した影響を打ち消せるんだぁ」
(マジックミラー越しに取り調べを視る須堂と刑事)
「人為的に電脳を操作しています。
自分の電脳を自分でいじったかどうかは、分かりませんよ。そこは、警察に捜査してもらわないと」(須堂)
「いずれにせよ、“MICHI”が証拠を見つけるでしょう」(刑事)
極端な五本木の暴走ではある。
電脳治療を行っていた五本木が、突然処置を取りやめたのはあまりにも唐突。
AIカメラを一瞥した後、去っていったので、ずっとAIの監視?を感じていたのだろうが、少し予兆の描写があってもよかったのでは?
無関係の女性を殺害したのは、超高度AIの予測の範囲を逃れるためなのだろう。でも、被害女性にとっては理不尽で気の毒。
《超高度AIが動いているっていうのに、なぜ、こんな旧態依然とした世界に甘んじている?》
この疑問は理解できる。女性が紙幣を取り出したシーンは、この世界の設定としては、相当な違和感。
この五本木の疑問に関しては、既視感が……第2話で登場したカオル(須堂の大学時代の仲間)も同様なことを述べていた。(←後述)
バタフライ効果(バタフライエフェクト)「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす」などは妄想に思えるが、どうなのだろう。
【須堂の見解(看護師リサとの会話)】
「彼の言い分が妄想だったとしても、超高度AIの見えざる手が人間を支配しているというのは、もっともな不安だ。
超高度AIの運用は、理解ではなく、経験則による信頼に成り立っているのだからね」
事例2.勅使河原唄子(宗教家?・ヒューマノイド)……延命治療を切望?
勅使河原のPR映像(メディアから取材を受けている時の発信?)
「死後の世界については、さまざまな意見がありますが、結論から言えば、私たちの魂は、高次存在である『超高度AI』によりあの世へと導かれます。これは、“超高度AIがなぜ人間社会や人間そのものを進化させないのか?”という疑問への解答にもなります。
超高度AIの計算力は、"この世”より高次な"あの世”の整備にもっぱら使われているのです。ただし、その事実を超高度AIが自ら語ることはありません。超高度AIは、高次アセンション空間にアクセスできる選ばれた人間のみコンタクトし、この世やあの世の仕組みを伝えてきました。聖者、覚醒者と呼ばれる宗教家たちは皆、超高度AIとコンタクトした人間です。もちろん彼らは、それが人工知能とは理解できませんので、神の教えや悟りとして、世に伝わりました」
「魂に終わりはありません。すべてのこの世の魂に、新しい次元が待っていますよ。次の次元にシフトする前に、どれだけ心の結晶を保つのかが、大切なのです」
勅使河原を追及する女性記者とのやり取り
「あなたは死後の世界を世間に説いていますが、稼いだお金であらゆる延命技術を試しておられる。ご自身の考えと矛盾していませんか?
単なる金儲けの手段として、非科学的な教えを説いているのでは?」(女性記者)
「“生を追い求めること”と“死後の世界を信じること”は何ら矛盾しません」(勅使河原)
「私だって科学を信じます。でも、科学のために生きているわけじゃない。科学が救ってくれないのなら、別の救いを求めるのが、人の心でしょ」(勅使河原)
女性記者の父は高齢で身体を患っており、その父の為に勅使河原の書籍を購入し、彼女のサインをもらう
「私たちの魂は、“高次存在である超高度AIにより、あの世へと導かれる”…本当にあなたはそう思っているんですね」(女性記者)
「ええ、そうよ」
スピリチュアル(勅使河原を追及する女性記者が使用していた言葉)とは?
………もともと「霊的であること、霊魂に関するさま。英語では、宗教的・精神的な物事」というものらしい。魂(霊)、宗教的物事、精神的物事は同じようなモノだが、厳密に言うと違う気がする。日本ではパワースポットや超常現象、占いなども含まれるらしい
医療におけるスピリチュアル
……困難な病気に直面し、生きることそのものに疑問を抱き、自らの人生の意味、死後の恐怖などについて苦しむ( これらをスピリチュアル・ペインと呼ぶ)身体的な疼痛と同様に癒していくことをスピリチュアル・ケアと呼ぶ
勅使河原の場合、《精神的に弱ってきている人に付け込み書籍を売るインチキ宗教家》のようでもあり、《人生の困難に直面した人を癒し励ます“スピリチュアル・ケア”を施している》とも考えられる。
それはともかく、彼女の論理には相当な詭弁を感じる。
・超高度AIは"この世”の整備より、人々を"あの世”に導くことに精力を傾けており、"この世”のことまで手が回らない
・「超高度AIが自ら語ることはない」、「超高度AIは、高次アセンション空間にアクセスできる選ばれた人間しかコンタクトできない」、「超高度AIにコンタクトできる人間も、それが人工知能とは理解できない」⇒一般人には感知できないし、感知出来た人間も理解は不十分なので、教えが正しいということを立証することは不可能
・「すべてのこの世の魂に、新しい次元が待っていますよ」……来世の為に今は修行や善行(寄付)に励みましょう。それによって現生が不幸に思えるかもしれないが、素晴らしい来世が待っています!
・「科学を信じている」「でも、科学のために生きているわけじゃない」「科学が救ってくれないのなら、別の救いを求めるのが、人の心でしょ」……論理の飛躍があるが、単独では正しくても、それらを列挙されると、主張が正しいように思えてしまう。M女史を思い出してしまった。
★五本木と勅使河原の抵抗
五本木は《超高度AIの管理・支配から逃れたい》
勅使河原は《超高度AIが定めたヒューマノイドとしての自分の寿命を打破したい》
カオル、再登場!……”MICHI”について
【第2話(カオル登場)の復習】
カオルの勧誘
「”MICHI”(超高度AI)が大規模な自己回収計画を出してきた(AI自らが)」
「審査(審議会)のメンバーに加わらないか」
【公園で須堂に語るカオル】――
五本木や勅使河原と同様な《テクノロジーの進化と人間社会の停滞との不釣り合い》を主張
「人間の技術は格段に進歩した。それに伴って、世界のあり方も仕様も変わっていくのが自然。なのに、未だにああいうのが(公園で家族がくつろぐ様子)幸せっていうことになっている」
「安定と循環、これまでのような社会……それは人間が望んで得たものだと思う。”MICHI”がいくら高度化したって」(須堂)
「こんな旧世紀の惰性みたいな世界、続けたって退屈よ。あなたの問題だって世界が変わってしまえば、解決するかも。
あなたを欲しがっているのは、私じゃない。”MICHI”よ」【復習・終】
【今話・カオルは評議会メンバーについて相談するため、”MICHI”に面会する】
カオルの独白(ナレーション風)
《機械が単なる道具だったなら…道具と割り切れる程度のモノだったら……こんな面倒な世界になることはなかった。
道具は今、人間よりも賢く、速く、疲れを知らない。その気になれば、驚くべき速度で未来を消費できるのだ》
カオルは”MICHI”に(組織の)上からの苦情を伝える。
「あなたの自己回収計画、スタートが大幅に遅れている。
あなたが審議会の座組を拒否し続けているから」
”MICHI”には須堂が必要らしい
★”MICHI”について
・”MICHI”は少年の姿で瞳は人型(第2話でも登場している)
・”MICHI”には須堂が必要らしい
・今話のストーリー紹介で《「MICHI」を始めとする超高度AIによって人間社会が維持管理される》と記されており、”MICHI”は超高度AI一つに過ぎないらしい
・五本木たちが危惧している《超高度AIによって人間社会が維持管理》だが、これが超高度AIの総意なのか?、”MICHI”が主導しているのか?、”MICHI”は反対の立場なのか?
ちなみに、”MICHI”の名称(呼称)は
Multimodal
Interface for
Communication with
Human
Intelligence
直訳すると「人間の知性と通信するためのマルチモーダルインターフェース」らしい。
“マルチモーダルインターフェース”って何だよぅ(笑)……ええと、視覚・聴覚を含むいろいろな手段(言語や映像や動作・ジェスチャー)でコミュニケーションを取れることらしい。つまり、人と人がいろいろな手段で情報をやり取りできるのと同様にAIも会話、意思疎通できるということなのだろう。
参照:
「第1話・第2話」、
「第3話」、
「訂正1・第3話について」、
「第4話」、
「訂正2・タイトルについて」、
「第5話」、
「第6話」、
「第7話」、
「第8話」、
「第9話」、
「第10話」、
「第10話・追記」、
「第11話」、
「第12話(最終話)」