英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

嘆きの中村太地……2023年度NHK杯将棋トーナメント 準々決勝 中村太地八段-羽生善治九段

2024-02-20 20:30:57 | 将棋
2023年度NHK杯将棋トーナメント 準々決勝 中村太地八段-羽生善治九段戦
 中村太地八段は、NHK杯戦に於いて、これまで思わしい戦績を挙げていないようだ。解説の谷川十七世名人も「意外なんですが、中村八段は初のベスト8進出なのではないでしょうか」と述べていた。中村八段も動画配信での解説の際、「初のベスト8で、相当、気合が入っていました」と述べていた。
 それはさておき、今期の中村八段は、1回戦で阿部光瑠七段、2回戦で広瀬八段(現九段)、3回戦で菅井八段を、激戦の末、降してきた。

 将棋は、先手の中村八段の角換わり志向に、羽生九段はそれを避けるような指し手を見せたが、結局、角換わり腰掛銀に落ち着いた。

 

 第1図は、後手が5二の玉を4二に寄せたところ。手待ちというか、間合いを計った手。よく出現する局面である。
 2019年に同戦型で、羽生九段が3連敗した記憶が残っている。
 ▲羽生九段-△屋敷九段(NHK杯)、▲広瀬竜王(当時)-△羽生九段(王将リーグ)、▲糸谷八段-△羽生九段(A級順位戦)。詳しくは、リンク記事をご参照ください。
「NHK杯戦など……羽生九段、先手番、後手番でワンツーパンチを食らい、4連敗……」(2019年11月4日記事)
「鬼門の戦型だなあ 2019A級順位戦 糸谷八段-羽生九段」(2019年12月4日記事)

 3局とも、第1図より▲4五桂と跳ね、△2二銀に▲7五歩△同歩と突き捨て▲5三桂成と仕掛けている。(▲5三桂成の前に、3筋や1筋の突き捨てを入れる実戦もある)

 以下、△5三同玉▲7四歩△4四歩▲4五歩△5五歩▲7三歩成△同金▲4六桂△5六歩▲5四桂△同玉と進んでいる。この仕掛けは最近は観ていない気がする(先手が避けているのだろうか?実戦的には後手を持ちたくないが)

 本局の中村九段は、▲4五桂△2二銀に▲3五歩と突く。この手を見て、谷川十七世名人は「少し前には、見かけた仕掛けですが」という解説をしていた。
 ▲3五歩に羽生九段は少考後、△同歩と応じる。
 ここで、▲6五歩!

 この手が、中村八段が温めていた新手!。
 NHK杯の準々決勝という晴れの舞台で、羽生九段相手に披露できる
……中村八段も心が躍ったのではないだろうか。
 羽生九段も「この仕掛けには驚いた。今まで1回も考えたことはなかった。指されてみると、先手の攻めがなかなかうるさくて、どう対処して良いのか分からなかったというようなことを感想戦で述べていた。

 この手に対して、△4四歩と桂を取りに行く手が考えられるが、以下▲6四歩△4五歩▲同銀(変化図1)で後手が困る。

 △4五同銀なら▲4五同歩でもよさそうだが、▲6三歩成△同金に▲7二角が痛い。
 「▲6四歩の取り込みが、桂1枚では釣り合わないほど大きい」(谷川解説)という。

 なので、▲6五歩は取るしかない。
①△6五同銀
 銀で取る手が第一感という人は少ないと思う。この手には▲同桂△同桂に▲6三銀が炸裂する(炸裂図)

 これを△同銀なら、▲7二角が決まる。
 よって、△6一金と辛抱するが、▲6六銀と一旦かわしておいて、先手優勢。先手の銀と桂が後手陣の急所に利いていて、次に▲6五銀と桂を取って▲3四桂もあり、後手陣は持たない。
②△6五同桂
 この手には、▲同銀△同歩▲3四桂がある。

 気持ちの良い両取りで、先手が良さそうだが、以下△3一玉▲2二桂成△同玉で、先に銀桂交換しているので、銀桂の損得はなく、先手は歩切れなので、意外といい勝負かも。実戦的には▲3四銀と嵩にかかられる手が見えるので、後手としては選択肢に入れにくいだろう。

 再掲載:新手図

③△6五同歩
 普通は歩で取るが、この後、いろいろ先手からの攻め筋が見える。羽生九段もかなり考えて、△6五同歩と応じた

「その2」へ続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする