今日の記事は、先日の『名人戦第六局 第1日』と重複しているところが多いです。ご了承ください。
森内九段は、第4局に続いて、後手矢倉8五歩型を採用しました。先手に穴熊に組ませ、先手からの攻めを受けて立つという通常の棋士なら避けたい戦型と言われていて、「なぜわざわざ、森内九段は連採するのだろう?」と疑問視される向きもあります。
しかし、第4局の△3五桂から△4七桂成の流れは先手苦しかったように感じました。(△4七桂成では、△27桂成とする方が有力で実戦数も多いのですが、こちらの変化も先手自信ありません)
第4局を踏襲して進んだ第6局は、両対局者がこの戦型をどう捉え、どのような修正、改良を重ねてきたのか、非常に興味を持って観ていました。
羽生名人は、第4局型(△3五桂~△4七桂成)、更に本流型(△3五桂~△2七桂成)の両方に対策を練ってきたはず。更に、8五歩型のみならず9五歩型にも備えてきたかもしれません。
森内九段は、このシリーズ、かなり勝ちに来ている気がします。第3局のゴキゲン中飛車に角道止め型、第4局の傍流とされている後手矢倉8五歩型の採用。あまり研究がされていないような主流でなく傍流、もちろん不利な変化ではなく、研究してこれでも指せると判断した戦型に羽生名人を引き込んでいる感があります。
そういった森内九段の戦略を、そして、その研究の綿密さを肌で感じているのが羽生名人で、第六局、第四局を踏襲しているにもかかわらず、考慮を積み重ねているのは、森内九段の研究ワールドに引き込まれないよう用心を重ねている、そんな気がしました。
逆に森内九段は、想定した局面に迷いなく進めます。そして、奥の手△5六歩(第1図)を繰り出します。
この手を指す時も、ほとんど時間を使っていません。(この手の3手後の69手目の時点で、森内九段の消費時間は31分、羽生名人は4時間15分)
とにかく、想定内に進んでいるうちは、余分なエネルギー、時間を極力消費しない方針なのでしょう。勝ちに来ています。
最終局、羽生名人が先手番になった場合、矢倉を指向すると、たとえ、第4、6局と別型の矢倉戦を採用しても、傍流変化手を繰り出され、森内ワールドに引き込まれ苦戦するような気がします。
森内ワールドに引き込まれないような力戦型が有効だと思いますが、自分の型を崩した時点で負けなのかもしれません。独断と偏見で推奨すると、早石田系でしょうか。……【続く】
森内九段は、第4局に続いて、後手矢倉8五歩型を採用しました。先手に穴熊に組ませ、先手からの攻めを受けて立つという通常の棋士なら避けたい戦型と言われていて、「なぜわざわざ、森内九段は連採するのだろう?」と疑問視される向きもあります。
しかし、第4局の△3五桂から△4七桂成の流れは先手苦しかったように感じました。(△4七桂成では、△27桂成とする方が有力で実戦数も多いのですが、こちらの変化も先手自信ありません)
第4局を踏襲して進んだ第6局は、両対局者がこの戦型をどう捉え、どのような修正、改良を重ねてきたのか、非常に興味を持って観ていました。
羽生名人は、第4局型(△3五桂~△4七桂成)、更に本流型(△3五桂~△2七桂成)の両方に対策を練ってきたはず。更に、8五歩型のみならず9五歩型にも備えてきたかもしれません。
森内九段は、このシリーズ、かなり勝ちに来ている気がします。第3局のゴキゲン中飛車に角道止め型、第4局の傍流とされている後手矢倉8五歩型の採用。あまり研究がされていないような主流でなく傍流、もちろん不利な変化ではなく、研究してこれでも指せると判断した戦型に羽生名人を引き込んでいる感があります。
そういった森内九段の戦略を、そして、その研究の綿密さを肌で感じているのが羽生名人で、第六局、第四局を踏襲しているにもかかわらず、考慮を積み重ねているのは、森内九段の研究ワールドに引き込まれないよう用心を重ねている、そんな気がしました。
逆に森内九段は、想定した局面に迷いなく進めます。そして、奥の手△5六歩(第1図)を繰り出します。
この手を指す時も、ほとんど時間を使っていません。(この手の3手後の69手目の時点で、森内九段の消費時間は31分、羽生名人は4時間15分)
とにかく、想定内に進んでいるうちは、余分なエネルギー、時間を極力消費しない方針なのでしょう。勝ちに来ています。
最終局、羽生名人が先手番になった場合、矢倉を指向すると、たとえ、第4、6局と別型の矢倉戦を採用しても、傍流変化手を繰り出され、森内ワールドに引き込まれ苦戦するような気がします。
森内ワールドに引き込まれないような力戦型が有効だと思いますが、自分の型を崩した時点で負けなのかもしれません。独断と偏見で推奨すると、早石田系でしょうか。……【続く】
>私は森内九段の後手矢倉8五歩型連採に疑問を感じています。
>可能であれば、第1図と昨年の第23期竜王戦第2局54手目あたりの局面を比較してみて頂ければと思います。
その1、その2の本文でも、多少述べましたが、後手8五歩型は先手に穴熊に入られたうえ、先手からの攻めを受け続けなければならなくなるので、後手側は敬遠したい将棋かもしれません。
ただ、羽生名人、森内九段の両対局者の感触は、一般の棋士とは違うようです。
まず、第4局ですが、この将棋は控え室の研究でもやや後手持ちの内容だったと思います。実際に、第6局BS解説の阿久津七段も「第4局は後手が指しやすそうな将棋だったので、森内九段が変化したのは意外」と言うような解説をしていました。
羽生名人の感想も「攻めが細かったので、ずっと自信のない将棋でした。6三にと金ができて難しくなったかなと。その後も分かっていませんでした。▲4三角を見つけて良くなったと思った」
かなり控えめな感想ですが、容易だとは思っていなかったようです。
第4局の内容とその後の研究の結果、羽生名人も森内九段もそれぞれ手ごたえを感じて、第4局を踏襲したと考えます。
特に羽生名人は慎重に時間を消費しました。逆に森内九段は、自信があったのか、ほとんど時間を使いませんでした。
第6局は森内九段が手を変えたですが、やってみたい手だったとのこと。対する羽生名人は、「封じ手前後は心細い攻めで、ずっと悪いと思っていた。▲1三歩(127手目)でよくなったかなと思った」という感想でした。
第6局についてはその3以降で詳しく述べたいと思いますが、私ごときの棋力で云々言うのはおこがましいのですが、「後手8五歩型において、先手が攻める展開になるものの、第4局、第6局いづれの展開も先手の攻めが細くて、攻め切るのは大変」というのが私の見解です。
竜王戦のような後手9五歩型ですが、羽生名人はその後もこの戦型を避けていません(NHK杯対渡辺竜王戦)。この戦型については難解だが指せると見ているのでしょう。
いずれにしても、羽生名人は先手で矢倉を選んだからには、8五歩型、9五歩型友に受けて立つはずです。でないと矢倉は指せない。
kapkapさんの後手矢倉8五歩型疑問の根拠のひとつとして、「穴熊に入った玉の遠さが厄介」だと思います。
特に第4局のように、先手玉は詰めろが掛かりにくいです。なので、2手すきを続けていけばよいという先手にとっては楽な、後手にとっては苦しい終盤になる可能性があります。
しかし、通常の穴熊と違うので、8七の薄み故、一気に危なくなることもよくあります。先手も8八の蓋はできないにしても、9六に歩を突いておいて、△9五桂を消しておければ安心なのですが、その余裕はないようです。
私は後手8五歩型、9五歩型いづれも先手を持って攻め切るのは容易じゃないと思っています。
もし、先手羽生名人でこの戦型に進んだら非常に心配です(見てみたい気もします)。
前回コメントでも若干触れましたが、私は森内九段の後手矢倉8五歩型連採に疑問を感じています。
可能であれば、第1図と昨年の第23期竜王戦第2局54手目あたりの局面を比較してみて頂ければと思います。
現在の矢倉戦法は先手の4六銀・3七桂・3八飛からの攻撃形がほぼ完成されていて、後手は
如何にそれをいなしながら戦うか、
という争いになっていますが、後手番を持つ棋士が少数であることはご存じの通りです。
私見では
①先手に自由に攻めさせては防ぎがつかないので、なんとか制約したい。
②リスクがあっても先手玉への反撃の糸口を早めに作りたい。
の2点がポイントではないかと思います。
両局面の分岐点は後手が9筋の歩を8筋より先に9五まで伸ばすかどうか、ですね。
その違いが先手玉形の違いになるようです。
穴熊に入ることが強いかどうかは微妙(8七が薄く、7八金も狙われることになりかねない)ですが、
戦いが激しさを増すと、遠い玉になっていることだけは事実だと思います。
また、先手攻撃陣はほとんど制約を受けないまま、さばけるだけさばけています。
第1図の局面の形勢は私には分かりかねる面がありますが、仮に後手が悪くない局面であったとしても、
実際には勝つのが大変な将棋、と思えてなりません。
どうなんでしょうね。
ところで、昨日のA級順位戦、屋敷九段対佐藤九段戦は屋敷九段の勝ちになりました。
後手佐藤九段のゴキゲン中飛車に対して超急戦策に出、5六金~5四歩が見事な構想で終始リードしての勝利だったと思います。
屋敷九段の積年の努力の結果のA級昇級は賞賛に値すると思いますが、私は高橋九段と屋敷九段の活躍に非常に注目しています。
何か、新しい流れをそこに感じるのですが、それが何かはまだよく説明できそうにありません(苦笑)