TBSのスポーツ中継にはがっかりさせられることが多く、過去にもいろいろ書いている。
『ロンドン五輪 バスケットボール女子最終予選 対カナダ戦 その1 【補足】』(2012年7月3日記事)
記事名はロンドン五輪についてだが、記事の補足として
2007世界陸上大阪大会でのインタビューのひどさについて書いている。
【リンクを貼り間違えていました。修正しました】
解説者に関しては、
『スポーツいろいろ』(2011年8月28日記事)
この記事の「世界陸上」の項で、増田明美氏について書いています。また、朝原氏についても、「ピストルが鳴ると観客になってしまいます」と評している。
『五輪雑感 ~総括と言うより、いろいろ、もろもろ~』(2012年8月19日記事)
この記事は世界陸上についてではありませんが、ロンドン五輪での増田氏への残念感を書いています。
特に、最初に挙げたインタビューのひどさは、「一見の価値あり」という表現は変ですが、出来れば読んでいただきたいです。
号砲が鳴ると観客と化す朝原氏
上に挙げた過去記事では、「号砲が鳴ると観客と化し、「はあ~」「ほお~」「すごい」「ああぁぁあぁ…」と言うだけになってしまう」と評しているが、今回は多少改善されていた。しかし、日本人選手を応援する気持ちが強いせいか、希望的解説になってしまう傾向がある。
今回、それが顕著に出たのは、
男子100m予選の桐生選手のレースだった。
実況「桐生のスタートどうですか?」
朝原「いいですねえ。ここからですねえ…」
実況「桐生、加速する、加速するっ」
朝原「硬くならずに、そのまま…」
【70m付近でマルチナに抜かれて3位に】
実況「マルチナに次いで、3着に入れるか、どうかっ?」
朝原「ああ、マルチナが来ましたねえ」
【ゴール直前】
実況「3着か?4着かっ?」
朝原「3着で…」
【ゴール線上】
朝原「あ(3着に)入りましたあぁぁ…」
実況「3着に入ったかっ?」
【ゴール後、2、3秒後、各選手はダウン走状態】
朝原「3着に入りましたねえ~よかったですぅ~…取り敢えずは、準決勝に…行けましたね」
実況「17歳7か月で準決勝へ。最後は接戦になりましたけれども」
朝原「よく本当に、スピードがね、落ちずに、最後まで走り切りましたよね」
【リプレイを見ながら】
朝原「スタートが決まりましたからねえ。本当に良かったです」
【50m付近の映像を見ながら】
朝原「さすがにマルチナ選手がね、あとから、もう追っかけてきましたけど、そこから、本当によく粘りましたね」
【ゴール直前の映像を見ながら】
実況「カナダのスメリーよりどうかな?と言ったところでしたがっ?」
【桐生4着と掲示されたのを見て】
実況「桐生は4着!、桐生4着!」
朝原「えっ!4着ですか?………あぁぁ」
【再度、リプレーされたゴール直前の映像を見ながら】
朝原「ぇぇ?…最後に…ああ、最後の最後に差されたんですか……ああぁぁぁぁぁぁぁ」
朝原氏は3着以内を期待して観ているものだから、一番アウトコースのカナダのスメリ―が眼中に全く入らなかったようだ(リプレイを見るまでもなく、4着ではないかと思った視聴者も多いはずだ)。更にリプレーを観ていても、やはり全く見えておらず、「桐生4着」の掲示を見て、絶句してしまった。
実況していたアナウンサーは、アウトコースのスメリ―が追いこんできたことに気づいており、3着か4着かが微妙という気がしていたようだが、朝原氏が「入りましたあぁぁ」と言い切ったものだから、「17歳7か月で準決勝へ」と実況してしまった。
この他にも、90m付近でゴールを見切ってしまうせいか、朝原氏は1着の判断を間違えることが多い。
為末氏、失敗インタビュー
為末氏は現役時代、小柄な身体ながら、理論と努力で世界選手権400mHで2度銅メダルを取り、ストリートでハードルパフォーマンスを行う素晴らしいアスリートであった。
今回、100m予選での山縣選手へのインタビューでは、非礼且つ冷たい仕打ちをしてしまう結果になったが、氏のまじめさと優しさが裏目に出た結果と考えている。
まず、「準決勝に行けたか」という山縣選手の問いに対して、
「準決ねえ、たぶん…、ダメでしたね。(10秒)21は、たぶん、通っていないと」
山縣選手が一番気になっていた結果を、いろいろ質問に答えさせた末に、かなりサラリと不通過を告げた。さすがに、落胆と少しムッとした様子で「残りの種目につなげたいと思います」と話した山縣選手が気の毒だった。
為末氏も元選手だけに、結果を伝えるのを躊躇ってしまったのだろう。それに、現実主義であり言葉を飾るのが苦手な為末氏らしいストレートな表現だったので、余計、堪えたように思える。
これは直接見ていないが、
このインタビューの最中に、近くをボルト選手が通った。それで、山縣選手を放置してボルトにインタビューをしようとしたらしい。
山縣選手に無茶苦茶失礼な行為だ。
おそらく、スタッフからボルトへのインタビューする指示が出たのだと思うが……
【補足】
実は、生中継を録画してあったのですが、何故か録画のタイトルが『天才刑事・野呂盆六⑧』となっていたので、気がつきませんでした。今日(8月20日)確認したところ、上記のようなインタビュー中断がありました。
山縣選手へのインタビューを中断したけれど、ボルトが誰かに呼ばれて行ってしまい、インタビューは叶わなかった。為末氏は山縣選手に謝罪し、状況を察した山縣選手は苦笑い、この時は≪仕方ないかな≫という表情だった。
女子マラソンにおけるインタビューと中継姿勢
私は福士選手の努力や精神力やサービス精神が好きだが、そのサービス精神が裏目に出ることが多いのを残念に思っている。
今回のインタビューでは、福士選手ははしゃぎ過ぎだった。4位入賞ながら、あと一歩メダルに届かなかった木崎選手が隣にいるのだから、彼女の悔しさを慮り、もう少し押さえるべきだった。
福士選手も木崎選手の悔しさを理解できるはずで、普段だったら思いやりのある応答ができたはずだが、福士選手の銅メダル獲得で浮かれた織田裕二氏が参戦してしまったことが、事態を悪化させた。
そういう状況なので、先に木崎選手にインタビューするとか、インタビュアーや中継スタッフが配慮すべきだった。
このインタビューに限らず(世界水泳もそう)、ほとんどが、漠然とした感想や気持ち、今後の目標を尋ねるだけだった。それに前の質問での答と重なるような質問は避けてほしい。
このマラソンに関して言うなら、「8km付近の給水所で木崎選手がバランスを崩したが、その原因と影響はなかったのか?」とか、「3人に離されてしまった時、メダル獲得はあきらめたのか?」とか、「レース展開のプランはどのようなものだったのか?」とか、勝負のポイントを聞いてほしいものだ。
他の種目のインタビューだが、女子競歩20kmでのインタビューも、今回で一線を退く大利選手に、涙を誘発するような問いかけばかりしていたのも、不快であった。
こういうインタビューの物足りなさは、テレビ局のスポーツに対する姿勢が純粋でない表れである。
今回、メダル獲得の可能性が大きくなった福士選手ばかり映像が映り、トップ争いがほとんど映らなかった。また、福士選手、木崎選手のゴール後は、その二人の姿を映すばかりで、後続の様子は皆無だった。
日本選手の頑張りも観たいが、競技としてのマラソンも観たいのに、残念である。
この点を指摘すると、「テレビ局の商業主義は当たり前なので妥当である」というご意見をいただくことが多い。
しかし、競技の本当の面白さを伝えることが、真の視聴率獲得につながると思うのである。