漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

【四苦八苦】

2014-03-13 10:03:47 | 雑記
 最近、勉強していて印象的に感じる熟語に出会うと、それが仏教用語であることが多い気がします。神社仏閣や仏像などにかなり興味関心がある一方で、私自身は信仰とはおよそ無縁の人間ですが、仏教の真理を説いたような言葉に感じ入ることが増えているのは、やはりそれなりに年齢を重ねたせいでしょうか。

 もともとあまり漢検とは関係ないきっかけで 【四苦八苦】 という言葉の意味を調べていたのですが、「四字熟語辞典」にも掲載されていますので、改めて漢検的観点も含めてまとめました。ご参考まで。(かっこ内は、「漢検 四字熟語辞典」初版の掲載ページですが、常用漢字改定以前の版ですので、現在出ている「第二版」とは配当級・掲載ページが異なるかもしれません。その際はご容赦ください。)



【四苦八苦】  しくはっく  (229)  5級配当
 さんざん苦労すること。非常な苦しみ。あらゆる苦しみの総称。



【生】
 生まれ出る苦しみ。
 良く言われる「生みの苦しみ」は生み出す側の苦しみのことかと思いますが、こちらは生まれること自体の苦しみ。私たち自身にはもちろん自覚・記憶のない苦しみですが、仏典ではこれを苦しみと捉えているのですね。

【老】
 老いていく苦しみ。

【病】
 病を得る苦しみ。

【死】
 死ぬことや死の恐怖の苦しみ。


ここまでが【四苦】。これに次の四つを加えたのが【八苦】。


【愛別離苦】  あいべつりく  (61)  4級配当
 別れのつらさ。

【怨憎会苦】  おんぞうえく  (115)  準1級配当(*)
 怨み憎しみを抱く者と会わなければならない苦しみのこと。
(*)平成22年の改定で「怨」が常用漢字に組み入れられましたので、この四字熟語も現在は2級配当かもしれません。

【求不得苦】  ぐふとくく  (169)  準1級配当
 求めているものが得られない苦しみ。

【五陰盛苦】  ごおんじょうく  (202)  準1級配当
 人間の心身を形成する五つの要素(=五陰)から生ずる苦痛のこと。迷いの世界として存在する一切は苦であるということ。
  【五陰】 とは色(肉体)・受(感覚)・想(想像)・行(意志)・識(判断)で、これらが 【盛】 である苦とは少し分かりづらいですが、そもそもこれらの要素は心身の形成に不可欠なものであるが、逆にそれがあるがゆえに苦しみを苦しみと感じる、すなわちこの世に生を受けて生きていることそれ自体が苦であるというような意味でしょうか。上の七つの苦をすべて包含したような苦ですね。
  【五陰】 は 【五蘊(ごうん)】 とも言い、 【五蘊盛苦(ごうんじょうく)】 と表現されることも多いようです。こちらは「四字熟語辞典」にはありませんが、あれば1級配当ですね。ちなみに、「漢検 漢字辞典」は逆に 【五蘊】 のみの掲載(P.456)で 【五陰】 は出ていません。協会の出版物には、時折こうした不統一がありますね。【五陰】 【五蘊】 【五陰盛苦】 【五蘊盛苦】 いずれも覚えておきたいと思います。