あきはぎの はなさきにけり たかさごの をのへのしかは いまやなくらむ
秋萩の 花咲きにけり 高砂の 尾上の鹿は 今や鳴くらむ
藤原敏行
秋萩の花が咲いた。今頃は高砂の尾上の鹿も鳴いていることだろう。
歌意はわかりやすいですね。「高砂」は現在の兵庫県高砂市で、しばしば歌に詠まれてきた歌枕ですが、「砂が高く積もったところ」ということで一般的に「山」の意味でも使われるようです。「尾上」は山の頂という意味で、「高砂」「尾上」とくれば思い出されるのは百人一首に採録(第73番)された次の歌。
たかさごの おのへのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ
高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ
権中納言匡房
実際の兵庫県の高砂は海岸で、「山」「峰」と言えるような場所はないそうですから、この両歌の高砂は一般的な「山」「高いところ」の意と考えておきましょう。