をみなへし うしとみつつぞ ゆきすぐる おとこやまにし たてりとおもへば
女郎花 憂しと見つつぞ 行き過ぐる 男山にし 立てりと思へば
布留今道
女郎花を見ながら、嫌なものだなあと思って行き過ぎたことだ。「女」なのに、男山に咲いているのだから。
詞書には「僧正遍昭がもとに、奈良へまかりける時に、男山にて女郎花を見てよめる」とありますから、「男」山に咲いている「女」郎花、という単なる言葉遊びではなく、一つ前 0226 の遍昭の歌を知っていて、それを踏まえての作歌でしょう。女郎花を見て、「女」とついているのでそれに魅かれたという遍昭に対し、「女」郎花という名なのに「男」山に生えているとは、と返す機智。
作者の布留今道(ふるのいまみち)は平安時代前期の貴族にして歌人。古今集にはこの歌を含めて三首が入集していますが、残りの二首は 0870 と 0946 ですから、ご紹介するのはかなり先になりますね。 ^^;