あきののに おくしらつゆは たまなれや つらぬきかくる くものいとすぢ
秋の野に 置く白露は 玉なれや つらぬきかくる くもの糸すぢ
文屋朝康
秋の野に置く白露は玉なのであろうか。蜘蛛が巡らせる糸が露を貫いているよ。
蜘蛛の糸に露がかかった情景を、緒を貫く玉に見立てて詠んだ歌。
作者の文屋朝康(ふんやのあさやす)は、六歌仙の一人である文屋康秀の子。古今集への入集はこの一首のみですが、後撰集採録の次の歌は、百人一首にも採られています。(第37番)
しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける
白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける