はぎのつゆ たまにぬかむと とればけぬ よしみむひとは えだながらみよ
萩の露 玉にぬかむと とれば消ぬ よし見む人は 枝ながら見よ
よみ人知らず
ある人のいはく、この歌はならのみかどの御歌なりと
萩の露は、玉として緒に通そうとすると消えてしまう。仕方がないから、見たいと思う人は枝についているまま見るがよい。
「ぬかむ」は「貫かむ」で、玉を緒に通す意。「よし」は漢字では「縦し」で、ここでは「仕方ない」と、やむを得ず了解・納得するニュアンス。
「ならのみかどの作との説もある」というこの歌ですが、「ならのみかど」とは第51代平城天皇のこと。正式に平城天皇の御製とされる 0090 でもご紹介しましたが、平安時代の天皇ながら、薬子の変にからんで譲位後に平城遷都を宣言してみずからも平城京に移り住んだことから、平城天皇と呼ばれています。