をみなへし あきののかぜに うちなびき こころひとつを たれによすらむ
女郎花 秋の野風に うちなびき 心一つを 誰に寄すらむ
左大臣
女郎花は、方向の定まらない秋の野風に吹かれるまま、あちらへこちらへとなびいているけれど、そのたった一つの心は一体誰に寄せられているのだろうか。
これまでは女郎花に心を揺さぶられる男性側の心情を詠んだ歌群でしたが、これは女郎花(=女性)の心のありどころを詠んだ歌ですね。
作者の左大臣(「ひだりのおほいまうちぎみ」と読みます。難しい!)とは、藤原時平のこと。太政大臣藤原基経の長男として生まれ、若くして順調に出世し、29歳の若さで左大臣に昇進。菅原道真左遷の中心人物とされ、天神信仰が広まった後世の説話などでは、極悪人として描かれました。古今集には二首入集しています。