ちのなみだ おちてぞたぎつ しらかはは きみがよまでの なにこそありけれ
血の涙 落ちてぞたぎつ 白川は 君が世までの 名にこそありけれ
素性法師
血の涙に染まって激しく流れる「白川」の名は、あなたが生きていたときまでの名前であったのだ。
詞書には「前太政大臣を、白川のあたりに送りける夜よめる」とあります。「前太政大臣」は藤原良房のことで、今の京都市左京区を流れる白川の地域にある別邸を使用したことから「白河殿」とも呼ばれました。本歌はそのこと踏まえた詠歌で、良房の亡骸を送る葬送の列が白川のあたりにさしかかり、その死を悼む人々が流す血涙で赤く染まった白川はもはや「白川」という名前ではなくなる、という機智で強い悲しみを表現しています。