なくなみだ あめとふらなむ わたりがは みづまさりなば かへりくるがに
泣く涙 雨と降らなむ 渡り川 水まさりなば 帰りくるがに
小野篁
泣く涙よ、雨となって降ってほしい。渡り川が増水して渡れなくなり、死んでしまった妹が帰って来れるように。
詞書には「いもうとの身まかりける時によめる」とあります。「渡り川」は三途の川。末尾の「がに」は程度や状態について「~ように」「~ほどに」の意を表す接続助詞。
小野篁の歌が 0407 以来久しぶりの登場。愛する妹(男から見た女の兄弟。年下に限らない。)の死を悼んでの痛切な詠歌ですね。
今日から巻第十六「哀傷歌」。人の死を悼み悲しむ歌で、ほとんどの収録歌に詞書が付されているのもこの章の特徴でしょうか。0862 まで34首のご紹介です。