道行く人の、帰る雁の渡るを見たるところ
ねたきこと かへるさならは かりがねを かつききつつぞ われはゆかまし
ねたきこと 帰るさならば 雁が音を かつ聞きつつぞ われは行かまし
道行く人が、雁が故郷へ帰って行くのを見ているところ
もし私が家に帰る途中であったなら、故郷へ帰って行く雁の鳴き声を聞きながら道を行ったであろうものを、ねたましいことに今は帰り道ではないのだ。
冒頭の「ねたき」は「ねたし(妬し)」の連用形で、くやしい、いまいましい意。末尾の「まし」は反実仮想の助動詞ですね。