きみをおもひ おきつのはまに なくたづの たずねくればぞ ありとだにきく
君を思ひ おきつの浜に 鳴く鶴の 尋ねくればぞ ありとだに聞く
藤原忠房
あなたを心に思い置いて、興津の浜に鳴く鶴のように尋ねてきたからこそ、あなたが元気であるということだけでも聞くことができました。
貫之が和泉の国にいた時に、忠房が大和の国から国境を越えてやってきて詠んでおくった、との詞書が付されています。第二句冒頭の「おき」は、「(思ひ)置き」と「興(津)」の掛詞になっています。「鶴(たづ)」「尋ね」と同音を繰り返してリズムを生む技法も用いられていますね。