あきはぎの ふるえにさける はなみれば もとのこころは わすれざりけり
秋萩の 古枝にさける 花見れば もとの心は 忘れざりけり
凡河内躬恒
秋萩の古い枝に咲く花を見ると、かつての気持ちを忘れてはいないのだとわかったことだ。
詞書には、秋の野で以前知っていた相手に出会い、あれこれと語り合った機会に詠んだ歌、とあります。古い枝に咲く秋萩の花とは、久しぶりに再会した相手の比喩。はっきりとはわかりませんが、かつて互いに思いを寄せあった異性と解釈するのが自然でしょう。気持ちを通い合った相手との思いがけず再開し、思い出話に興じるうちに、その当時から変わることのない自身の気持ちにきづいたというのですから、なかなかに切ない心情ですね。
なお、私の手元の書籍では、もとの心を忘れていないのは作者ではなく再会した相手であるとの解釈となっています。個人的にはちょっと違和感がありますが、そうした解釈も採り得るようです。