漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 281

2024-01-22 04:58:31 | 貫之集

わかなつむ はるのたよりに としふれば おいつむみこそ わびしかりけれ

若菜摘む 春のたよりに 年ふれば 老いつむ身こそ わびしかりけれ

 

若菜を摘む春にちなんで、年をとって老いを積むわが身を思うとわびしい思いがすることよ。

 

 「つむ」という同音異義語を重ねて「若」と「老」を対比させての詠歌。巧みな修辞ですね。


貫之集 280

2024-01-21 05:34:33 | 貫之集

延喜の末よりこなた、延長七年よりあなた、内裏の仰せにて奉れる御屏風の歌、二十七首

はるたちて かぜやふきとく けふみれば たきのみをより たまぞちりける

春立ちて 風や吹きとく 今日見れば 滝の水脈より 玉ぞ散りける

 

延喜の末から延長七年(929年)にかけて、帝の仰せによって奉った御屏風の歌二十七首。

立春となった春風が氷を溶かす今日見ると、川の深いところで水しぶきが玉となって散っている。

 

 「延喜の末」は、文字通り最後の年だとすれば923年ですので、929年までの6年間に詠まれた歌ということになります。「二十七首」とありますが、実際には 317 まで38首採録されています。
 春が来て風が氷を溶かすというと、古今集0002 の著名な貫之歌が思い出されますね。私もとても好きな一首です。なお、この歌は新拾遺和歌集(巻第一「春上」 第18番)に入集しています。

 

そでひちて むすびしみづの こほれるを はるたつけふの かぜやとくらむ

袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ


紀貫之


貫之集 279

2024-01-20 04:35:37 | 貫之集

よのなかに ひさしきものは ゆきのうちに もといろかへぬ まつにざりける

世の中に 久しきものは 雪のうちに もと色かへぬ 松にざりける

 

世の中で長く変わらないものは、雪の中でももとの色をかえることのない松であるよ。

 

 末尾の「ざりける」は「ぞありける」が縮まった形ですね。


貫之集 278

2024-01-19 05:56:46 | 貫之集

まつがえに ふりしくゆきを あしたづの ちよのゆかりに ふるかとぞみる

松が枝に 降りしく雪を 葦田鶴の 千代のゆかりに 降るかとぞ見る

 

松の枝に降りしきる雪を、鶴との千代の縁で降るのかと思って見ている。

 

 「葦田鶴」を鶴を意味する歌語。松と雪と鶴の組み合わせもしばしば見られ、貫之集でも 051074366 に登場します。


貫之集 277

2024-01-18 05:55:13 | 貫之集

もみぢする くさきにもにぬ たけのみぞ かはらぬものの ためしなりける

紅葉する 草木にも似ぬ 竹のみぞ かはらぬものの ためしなりける

 

紅葉する草木にも似ても似つかない竹こそが、変わらないものの良い例なのであるよ。

 

 個人的には「だから何?」系の歌 ^^;; で、祝賀の歌としては正直あまりピンと来ませんでした。