漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 286

2024-01-27 06:31:03 | 貫之集

いままでに のこれるきしの ふぢなみは はるのみなとの とまりなりけり

いままでに 残れる岸の 藤波は 春のみなとの とまりなりけり

 

いままで咲き残っている岸の藤波は、春の河口にとまる波のようであり、まさに春のとまり(最後)の風情なのであったよ。

 

 「とまり」は「泊まり」と「留まり(=最後)」の掛詞。169 には紅葉を秋の「とまり」とする歌がありましたね。


貫之集 285

2024-01-26 05:05:19 | 貫之集

ひともみな われもまちこし さくらばな ひとびとたちて みれどあかなくに

人もみな われも待ちこし 桜花 人々立ちて 見れどあかなくに

 

人々もみな、そして私も待ち続けた桜の花が咲き、人々は立ったままそれを見続けて飽きることもない。

 

 見つけると立ち尽くしたまま飽きることなく見入ってしまう桜の美しさ。現代人にあっても変わらない感覚ですね。 ^^


貫之集 284

2024-01-25 04:48:03 | 貫之集

みしひとも こぬやどなれば さくらばな いろもかはらず はなぞちりける

見し人も 来ぬ宿なれば 桜花 色もかはらず 花ぞ散りける

 

以前仲睦まじくした人も訪れなくなったわが家なのに、桜は変わらぬ色に咲き、そして散っていくのであるよ。

 

 うつろう人の心を、何も変わらずに訪れる春との対比で嘆ずる構図は 207、790 にも見られます。貫之にとって、ひとつの固定的なテーマなのかもしれませんね。790 は百人一首にも採録され、古今集(0042)にも入集した、最も著名な貫之歌と言えるでしょうか。

 

ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける

人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

(貫之集790 では第三句が「ふるさとの」とされています。)

 


貫之集 283

2024-01-24 04:54:34 | 貫之集

はるごとに たえせぬものは あをやぎの かぜにみだるる いとにぞありける

春ごとに たえせぬものは 青柳の 風に乱るる 糸にぞありける

 

春ごとに絶えることのないのは、風になびいて乱れる青柳の糸なのであるなあ。

 

 同じく貫之作 古今集 0026 の類歌というところでしょう。

 

あおやぎの いとよりかくる はるしもぞ みだれてはなの ほころびにける

青柳の 糸よりかくる 春しもぞ みだれて花の ほころびにける


貫之集 282

2024-01-23 05:07:21 | 貫之集

ひさしさを ねがふみなれば はるがすみ たなびくまつを いかでとぞみる

久しさを ねがふ身なれば 春霞 たなびく松を いかでとぞ見る

 

長寿を願う身であるから、春霞がたなびく松を見て、なんとかあやかりたいものだと思うよ。

 

 大寒を過ぎ、実際にもこのところ寒い日が多くて冬本番という感じですが、一方で自宅近くの公園ではロウバイが花をつけ始めていました。「春の息吹き」ですね ^^