monologue
夜明けに向けて
 



 1966年、February 26付けキャシュボックス誌の首位はナンシー・シナトラの These Boots Are Made For Walkin’ だった。男性に隷属する立場から脱却する女性の自立を歌い当時の時代の空気を表していた。ナンシー・シナトラのなげやりなようなコケティッシュな魅力と相俟って半音ずつ下がる特徴あるベースラインが受けていた。
  
 わたしはこの歌が好きでアメリカのクラブのバンドでベースを弾く時、指慣らしによくこのフレイズを弾いた。すると日系二世のギタープレイヤーが嫌がった。かれは離婚して慰謝料を毎月払っていたのだ。(歌の内容のように奥さんに出て行かれたのだろうか?)
わたしにとっては面白いベースラインフレイズもかれにはその現実をまじまじ思い出させるものだったのだ。日本人なら歌の内容と楽器のフレイズがそんなに強く結びついていないだろうし、歌に対する思いはずいぶん違うものだと思わされた。以来、ベースの指慣らしにこのフレイズは封印したものであった。
fumio

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