monologue
夜明けに向けて
 



 1870年12月25日午前7時30分、スイス、トリープシェンの作曲家リヒャルト・ワーグナー邸でかれの愛妻、コジマの33才の誕生日の翌日、集まった管弦楽団員たちは階段に並び、のちに『ジークフリート牧歌』 と呼ばれる曲『交響楽による誕生日の挨拶』を静かに演奏し始めた。睡眠中のコジマはクリスマスの朝その音色に込められた夫ワーグナーの愛によって幸せに目覚める。

 そして約百年後、1965年October 23付けキャッシュボックス誌でToys の A Lover’s Concerto という曲が首位に就いた。その曲の歌い出しに用いられているのは『ジークフリート牧歌』にワーグナーが使用した「平和のモチーフ」と呼ばれる「シー、ミ、ファ#、ソ#、ラ、シ」の旋律であった。ワーグナーの愛が時代を超えて現代に甦ったのである。あなたの耳もその旋律を聴き分けワーグナーの妻への思いを量(はか)ることができるだろうか。
fumio


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