monologue
夜明けに向けて
 



 物音のしない夜中に妻子が寝静まるのを待って自宅で「カリフォルニア・サンシャイン」の多重録音をするのだが幸いベースとギターは弾けるのでそれほど手こずらずにすんだ。一番むづかしかったのはヴォーカルだった。聴き直すと自分自身にOKがだせない。声がつぶれてこれ以上無理と判断すると他の調子のいい日にまわす。自宅だから時間を気にせず納得ゆくまでできた。当時はアナログからデジタルへの過渡期でミックスダウンはソニーのPCM変換器を使用してPCMデジタル録音した。

 やっとマスターテープができあがると シングルレコードのマスターリング(レコードの溝をカットして原盤を作る作業)に当時ロサンジェルスで一番評判の良かった「マスターリング・ラボ」というスタジオに予約を入れようとした。すると「今週一杯は無理です。ピンク・フロイドのディヴィッド・ギルモアが個人アルバムのマスターリングでずっとリザーブしてますから」といわれた。それでしばらく待った。

 1984年2月7日、「マスターリング・ラボ」スタジオではPCM録音のデジタル音源は初めてでロックバンド「カンサス」もそのソニーのPCM変換器を使用した音源をマスターリングしてほしいといっているのでそれ用の器具を注文して手に入ったからその器具を使ってマスターリングするという。そしてわたしの目の前でその器具をマスターリングマシンに接続して作業を始めた。

 ということでシングルレコード「カリフォルニア・サンシャイン」 は「マスターリング・ラボ」スタジオでデジタル音源をマスターリングした最初のレコードということになるのである。
費用は片面76ドルで両面ではタックス込み160ドル36セントだった。
fumio


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