朝日新聞に対する各紙誌の批判は止むどころか、ますます拡大する動きにすらある。
なかでも面白いのは読売新聞で、紙面での朝日批判に留まらず、その記事をちゃっかりチラシにして、
「頼りになるのは読売新聞」と、自紙の拡販に利用し始めてさえいる。
「こんな朝日はやめて、読売にしよう!」というわけだ。
しかし、これを「商魂たくましい」と笑ってばかりはいられない。
というのも、今こんな形で、あらゆる手段を駆使して朝日を追い詰めていかなければ、
結局朝日は謝罪も責任も棚上げにしたまま、これで終わりと店仕舞いしてしまいかねないからだ。
ところで、筆者はここで、「謝罪」と「責任」という言葉を使ったが、そもそも彼らの特集記事をよく読んでみれば、
彼らはそもそもそんな殊勝な気持ち自体、最初からもっていなかったことがわかる、ともいえる。
「虚偽と判断し、記事を取り消します」などと書いた以上、人のいい読者は「ようやく朝日も間違いを認めたのだ」と勝手に早とちりしてしまったが、
実は何のことはない、これまで朝日を批判してきた論者たちに、むしろ「反論」に転じていくべく、
とりあえず吉田清治に全ての罪をかぶせ、まずは身辺の障害を取り除いた、という話なのだ。それを証明するのが以下の一節だ。
「一部の論壇やネット上には、『慰安婦問題は朝日新聞の捏造だ』といういわれなき批判が起きています。
しかも、元慰安婦の記事を書いた元朝日新聞記者が名指しで中傷される事態になっています」
謝罪どころではない。むしろ自らは被害者だとアピールしようというのだ。
こうなると、「いわれなき批判」だの、「名指しの中傷」などと書かれた朝日批判派としては、
やはりこのまま大人しく引き下がってはいられないという話になる。
となれば、単なる論文上での朝日批判というレベルに留まらず、
不買運動だの訴訟提起だのという流れにもなっていくのは、もはや不可避という他なかろう。
それにしても、朝日という新聞の厚顔無恥さには驚かざるを得ない。
「記事を取り消します」といいながら、その記事がいつの記事か、どのような記事だったか、
その最低限の事実すら未だに示そうとはしていないからだ。
聞くところによると、「取り消したのはどの記事か」と問うた新聞関係者に、朝日は「答える気はない」とさえいったという。
考えてみても欲しい。欠陥品を製造販売してしまった会社が仮にあったとして、その会社がもし、
その欠陥品とはいつ販売した、どのような製品かを伝える気はない、と消費者に答えたとした場合、一体どんなことが起こるか、という話だ。
そんなトンデモ話は、少なくとも一般の製造会社の場合、およそ考えられない話であるはずだ。
それだけではない。朝日は今日まで、自社の誤報記事が国内や国外に及ぼした影響の深刻さに対し、一切それを認めない姿勢もとっている。
しかし、その朝日はかつて自ら、自らの報道が契機となり「宮沢首相(当時)が韓国を訪問して公式に謝罪し、
国連人権委員会が取り上げるに至」った、と自賛してさえいるのである(6.1.25)。
であれば、その記事を少なくとも虚偽だと認定した以上、この記事を真に受けてしまった人々に対し、
訂正の労をとるのは報道機関として最低限の責務ではなかろうか。
今の朝日に求めて得られないものは「正しい報道と誠実性」――といったらいい過ぎかも知れないが、
こんな新聞にいつまでも大きな顔をさせるわけにはいくまい。
──── 言い過ぎではありませんよ^^(Miku)
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◆伊藤 哲夫先生の略歴
日本の政治アナリスト、評論家。
日本政策研究センター代表。
< http://wwwlnk.net/cc/NGxvUygL/ >
日本会議常任理事(政策委員)。
日本李登輝友の会常務理事。
保守派の論客。
新潟県生まれ。新潟大学人文学部卒業。1984年、保守思想系シンクタンク「日本政策研究センター」を設立。
保守的な思想に基づく政策立案・政策提言に携わるかたわら、政治評論の執筆および講演活動を展開。
同時に、自民党保守系国会議員と連携しつつ政策実現に取り組む。各地の地方議員勉強会等にも積極的に赴く。
衆議院憲法調査会での参考人意見陳述、台湾における新憲法国際シンポジウムでの意見発表を行ったこともある。
安倍晋三のブレーンである五人組(他に中西輝政、西岡力、島田洋一、八木秀次)の一人として知られている。
<著作>
◆『経済大国と天皇制――国家の精神的基盤とは何か』(オーエス出版, 1987年)
◆『天皇即位と大嘗祭――憲法第一条・もう一つの読み方』 (オーエス出版, 1989年)
◆『憲法はかくして作られた』(日本政策研究センター, 1999年)
◆『憲法かく論ずべし――国のかたち 憲法の思想』 (日本政策研究センター, 2000年)
◆『憲法神話の呪縛を超えて』 (日本政策研究センター, 2004年)
◆『美しい国再生への提言――地方経済・農林業の「グリーン化」が日本を救う』 (日本政策研究センター, 2009年)
◆『国家なき日本を問い直す』 (日本政策研究センター, 2011年)
◆『教育勅語の真実』(致知出版社, 2011年)
◆『日本国家の「かたち」を考える』 (日本政策研究センター, 2012年)
◆『明治憲法の真実』(致知出版社, 2013年)
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