一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

宮内さん(オリックス)のイメージってそんなに良かったんだ、という話。

2006-07-16 | あきなひ
ジムに行って走りながら「サンデープロジェクト」を見てました。

「オリックス宮内会長の実像」とかいうコーナーがあって、規制改革・民間開放推進会議(長い名前・・・)の議長という改革派の顔と共に、村上ファンドの生みの親という顔が明らかになったなかで、その功罪を語る、というようなコーナーでした。

おそらく「規制改革の名のもとに私腹を肥やす」という論調を期待したのだと思います。
しかし、コメンテーターはマスコミ全体の方向性の定まっていない中で、「改革の旗手」でもあった宮内氏を断罪する事にも、擁護することにも及び腰、というところが露骨に見えてました。

首尾一貫していたのが金子勝慶応大教授。ひとり「宮内悪人説」を唱えてました。まあ、彼のスタンスからはそうなんでしょう。

また奥村宏、元中央大学教授も若干批判側でしたが、金子氏の毒気に圧倒された感がありました。

擁護派の急先鋒が堀紘一(元BCG社長で今は)ベンチャーキャピタルの経営者。
「宮内氏と20年来の友人」でありながら「村上ファンドには最初から批判的だった」などと誰も信じないだろうポジション取りをしてから話し始めました。
何とか言う大阪大学大学院教授も「中立的な立場から言うと」という枕が鬱陶しかったけど結局宮内氏肯定論。

板倉雄一郎(ITベンチャーを立ち上げて上場直前で倒産させてしまった顛末を書いた『社長失格』で有名になった人。今はコンサルらしい)はどちらからも仕事がもらえるように配慮してかニュートラルな立ち位置でした。


そして田原総一郎の司会のお約束で、議論は混乱する割りにCMの時間を取るさばきだけは上手いというまとまらない話で時間切れ。


一番問題になったのは、宮内氏が「推進会議」議長の地位を利用したか、または現役の経営者がそういう公的役職につくのはおかしいのでは、ということ。

後者については金子氏が「タクシーの台数制限撤廃にしても、車両リースでもうかるオリックスの意見だけで、薄給で酷使される運転手の側の意見がないのはおかしい」などと暴走してました。
しかし、こういう委員会に民間の意見を取り入れるというのは、ビジネスの現場を知らなければ意味がないわけで、そうだとすると現役の経営者(=現場で働いている部下から情報収拾ができる)でないと現実的には機能しないんですよね。
(タクシー運転手の話は、そこで薄給でも働かざるを得ない人がいるという失業問題の世界に近いと思うのですが)

それから、「地位利用」の話は、法改正には時間がかかるので、オリックスだけが新規参入のアドバンテージを持っていたとはいえないと思います。


なので、宮内会長の「責任」というのは(村上ファンドに具体的にグリーンメイラー的、あるいは違法行為の指図をしていたのなら別ですが)、あまり意味のない議論だと思います。


それよりも、そもそもそんな議論が出てくるということは、オリックスの企業イメージが世間では「改革派(のクリーン)な企業」というイメージで見られているんだな、と感心してしまいました。


もともとオリックスはオリエント・リースというリース会社が前身です。
リース会社というのは(銀行のように預金を集めることができないので)銀行から借り入れたり、自ら社債を発行して資金調達をし、その資金を(銀行のおさえているような優良先への企業融資でなく)リースや比較的リスクの高い貸出をして収益をあげるという「さやヌキ」のが基本構造です。

そうすると、①少しでも有利な条件で資金調達をする②出来るだけ多く資金運用方法を増やす、のが企業発展のポイントになります。
上の①が企業の資金調達の自由化(直接金融へ)、②がさまざまな投資商品の自由化と利害が一致したわけですね。

その意味では宮内氏の「会議」の議長は適任だったと思います。

ただ、オリックス自身は「さや取り」の出自なので、「改革・解放」(って以前の中国みたい)に賛同したというよりは、経済原理に則って収益機会の拡大を目指して事業分野を広げてきただけだと思います。

仄聞する範囲では、オリックスという会社は成果主義が徹底しているようで、同じ商品を営業してても「課が違えば別の会社」とばかりに営業をかけるようなところがあるようです。

そもそも、そういう会社なんですよね。


結局
① オリックスは改革・解放路線が自らのビジネスチャンスの拡大につながった
② 宮内氏を議長にする、という選択は政治の側の価値判断が先にあるという前提においては適任だった
③ ただし、宮内氏もオリックスも改革・解放自体が目的なわけではない(逆に既存のリース会社に非常に有利な規制が出来たら擁護に回るかも)
④ なので、「改革・解放で私腹を肥やした」という批判は的外れ
⑤ オリックスも他の企業と同様に改革・解放の恩恵にはあずかったろうが、それは他企業と同じだし、もしオリックスしかもうからなかったとしたら、それは政策判断としてそもそも誤っていた

という事になるんじゃないかと思います。



逆にいえばいままでオリックスは宮内さんの「若手進歩派財界人」「改革派」というイメージが企業イメージとなり、新規参入した特に個人向けの商品で営業上得をしたことがあったかもしれません。


まあ、その分のお化粧ががはがれた、ということで、それ以上でもそれ以下でもないような話だと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする