一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

正直村とうそつき村

2006-07-26 | M&A

「正直村とうそつき村」という頭の体操風のクイズがあります。

旅人が正直村とうそつき村の分かれ道にたどりつきました。
そこに村人がひとり立っています。
その村人が正直村の村人かうそつき村の村人かはわかりません。
正直村の人は質問に必ず正直に答え、うそつき村の人は質問に必ずウソの答えを返します。

旅人が1回の質問でどちらの道が正直村への道かをあてるにはどうすればいいでしょうか?



 

答えは



 

あなたはこっち(たとえば右)の道が正直村への道かと聞かれたら「はい」と答えますか?

(「うそつき村」と「いいえ」でもいいです)

正直村の村人であれば当然右が正直村なら「はい」違えば「いいえ」です。
うそつき村の村人だった場合、
右が正直村なら本来「いいえ」と答えるわけで、ということは「『はい』と答えますか」の問いに対しては「いいえ」の反対で「はい」といわざるを得ません。
右がうそつき村なら「はい」と答えるので、「『はい』と答えますか」の問いに対しては「はい」の反対で「いいえ」になります。


この答えのミソは、質問の中に2つの問いがあり、自分の行動を自分に評価させるという「自己言及」のメカニズムがはいっていることで、うそつき村人の人の答えも「ウソ×ウソ=ホント」にしてしまうところです。




王子製紙の北越製紙に対する「敵対的買収」にもこれと似ているところがあります。



当初マスコミは「王子製紙が敵対的TOB実施」と報道していたのですが、王子製紙のリリースを見るとTOBはまだ実施しておらず

① 王子は7/3に北越に対し提案した経営統合の実施を取締役会で決議した。これには北越へのTOB(@860円)およびその後の株式交換等による完全子会社化を含む。
② これに対し、北越はいきなり7/19に買収防衛策を策定、7/21には三菱商事に対する第三者割当増資(@607円)および業務提携を決議したが、これは王子の経営統合提案を阻害するものであり、誠実に協議してきた王子としては遺憾である。
③ 「本件増資および業務提携が撤回される事を条件に」統合提案を維持し、撤回公表後「可及的速やかに」TOBを行う

としています。

北越の買収防衛策はいわゆる「事前警告型」で、独立委員会の勧告を経て取締役会が対抗措置(買収者以外の株主への新株予約権の無償割当)を発動する、というものです。

ここで、北越には次の選択肢が残ります。

① 三菱商事との提携を撤回しない→王子はTOBを行わない
この場合は北越の株主に@860円を蹴って三菱商事に@607円で第三者割り当て増資をしたことの合理性を説明する必要があります。

② 三菱商事との提携を撤回したうえで買収防衛策を発動する
この場合、王子製紙が敵対的買収者だという説明に加え、一度取締役会で決議までした三菱商事との提携を撤回した理由も説明する必要があります。
また、理屈だけでいえば提携を一旦撤回した上で王子にTOBというカードを切らせ、それを買収防衛策で無効にしたうえで三菱商事との提携を復活させる、という方法もありますが、①を選べば新株予約権発行などのコストをかけずに済むわけです。
さらに、将来三菱商事との提携を復活した場合、下手をすれば「風説の流布」などと言われかねません。
なので、この選択肢はとりづらいと思います。

③ 三菱商事との提携を解消し、買収防衛策は発動しない
この場合、筋からいったらTOBに賛同せざるを得ないと思います。


つまり、王子に「三菱商事との提携の撤回」という条件をつけられたことで、北越は「三菱商事か王子かの選択(説明責任つき)」というカードを先に切らざるを得なくなりました。

いきなりのTOBであれば、北越は、「三菱商事との業務提携は反故に出来ない」として買収防衛策を発動したり、防衛策は発動せず反対の意向表明をして「株主の信を問う」という逃げの策もあったわけですが、今回は自分の「いいえ」に対して「『いいえ』でいいんですね」と念を押される村人と同じ立場になってしまったわけです。


一方、王子製紙は「武装解除するならアクションを起こす」という(北越の取締役会がリスクを取るという決断をすれば機会損失はあるかもしれないですが)コストのかからないポジションを取れたことになります。
いわば回答を待つ旅人の立場ですね。


北越の取締役は「だって僕はうそつき村の出身だから"No"としか言えないんだもん」とは言えないわけで、そこが生身の人間のつらいところです。

コメント (1)
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