一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『魔術師は市場でよみがえる』

2008-01-23 | 乱読日記

最近株も為替も大荒れですが、この本は1980年に創設され急拡大をしヘッジファンドとして頂点に君臨した後2000年に生産に至ったタイガー・マネジメントとその総帥ジュリアン・ロバートソンの伝記です(原題は”Julian Robertson:a Tiger in the Land of Bulls and Bears”)。

内幕ものかと思いきや、ジュリアン・ロバートソンやその関係者への綿密なインタビューと、投資家へのレポートを中心に経済雑誌の特集記事のように(それ以上に)淡々としかし綿密にタイガー・マネジメントの軌跡を追います。

ひとびとがわかっていないのは、資産運用で一番難しいのは実際に資金を運用することではなく、運用すべき資金を調達することであるという点だ。資産運用業務で成功する鍵の35%は堅実な運用成績を長期間にわたり維持することにあるが、65%は顧客関係の管理にある。

事実テクノロジー株のバブルの中、「オールド・エコノミー」の会社の割安な株を見つけるというタイガーの従来からの戦略は裏目に出て、投資家が次々と資金を引き上げたことがファンドの清算の引き金になりました。
結果から見れば、中期的にはそこでテクノロジー株にシフトするよりはタイガーの戦略に乗っていた方が運用成績はよかったわけですが。

結局ヘッジファンドですら「素人は一番高値で買って一番高値で売る」という投資家の行動の影響を受けてしまった、というのは皮肉でもあります。


現在ロバートソンは自らの資産を運用するとともに、慈善活動にも積極的に取り組んでいます。
慈善活動はタイガーのころから部下のファンド・マネジャーにも奨励していたことです。
ロバートソンの慈善活動は、自分の寄付が有効に活用されることになるか徹底して検証することにも特徴があります。
寄付した資金が正しく使われて、プログラムが約束した人々のところに実際に確実に届くかを見極めるるため、現場に出かけていって理事と面談し、団体の規約を読み、職員、顧客、参加者と話をしてから判断をくだす、という企業に投資する場合と同じプロセスを踏みます。


こういうことは、日本の企業も見習った方がいいと思いました。
CSRだ社会貢献だと言いながら、自分の行為の最後まで見ずに免罪符のように寄付をするだけでは、長続きしないと思います(景気が悪くなれば「背に腹は変えられない」となったり最悪は「NGOゴロ」のような人々の跳梁跋扈を招きかねません。)。
一方で、日本では寄付金控除の対象が官公庁や関連の法人(とか政治的に影響力のある団体)等に偏って限定されているのも問題だと思います。
「脱税の温床になる」といってもその法人の活動をしっかりモニターしていればいいわけで、「認定は厳しいが一度認定を受けたら勝ち」という役所が楽をするための仕組みはいかがなものか、と思います(あ、これって大学入学なんかもそうですね・・・)。


そうそう、年金についてはその運用や使途に疑問を持った加入者が不払いをした結果、自ら検証を余儀なくされたわけで、国民の権利であり義務として、まず税金の使途をきっちり確認することが必要ですね。
それから政府も(給油した油の使い道だけでなく)ODA資金の使途などもきちんと検証したほうがいいでしょう。



本のレビューから大きく話がそれてしまいましたが、アメリカならでは、という人物像でもあり、いろんなことを考えるきっかけになる本だと思います。







コメント
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