一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『この1冊ですべてがわかる 普天間問題』+『日本の戦争力』

2010-08-02 | 乱読日記

普天間問題について過去の経緯も、沖縄米軍の中での位置づけも良く知らなかったので、書名につられて読みました。
著者の小川和久氏は「軍事アナリスト」という一見怪しげな肩書きですが、「日本初の」と名乗るだけあって、各種委員やコンサルタントとして政策立案に携わり、人脈も豊富な人のようです。

結論から言うと、本書は非常に優れた概説書でした。
全体で4章に分かれているのですが、後ろの2章は著者の負担間問題解決に向けた提言なので、「この1冊の前半分ですべてがわかる」と言ってもいいと思います。
在日米軍の米軍全体における位置づけ、在日米軍のそれぞれの役割、普天間基地の位置づけなどが簡潔に整理されています。 前半部で63ページなのですぐ読めます。

普天間問題の混迷の背景について印象に残ったフレーズ

普天間飛行場の移設問題が、日米間で返還に合意した96年からすでに14年という長い年月が経過しようとしているのに、いまだに解決できないでいるのは、防衛官僚や外務官僚たちだけの問題ではありません。
私たちの政治が、問題解決のまともな方向性を示すことができず、官僚機構にすべてを丸投げし、あまつさえ埋め立て利権にあずかろうとした政治家すら蠢いて、14年の月日が無為に過ぎ去ってしまったのです。普天間問題が迷走のあげくに暗礁に乗り上げている最大の原因は、政治の不在、政治の無責任なのです。


先に私は、普天間問題における政治の不在、政治の無責任を指摘しました。
現在の百家争鳴の状態は、政治の”不在”ではなく、”過剰”というべきかもしれません。少なくとも、過去に何度も浮上しては否定された考え方が再び繰り返されることは、全く生産的ではありません。

構図としては八ツ場ダムと同根かもしれません。
鳩山元首相の取り上げ方は軽率だったと思いますが、首相も変わったところで内閣でまずは論点と問題点の認識を共有して、その認識を沖縄県民に提示すべきだと思います。
腰だめ、思いつきの解決策を出すだけでは鳩山内閣の二の舞になるでしょう。


本書で参考文献として紹介されていた小川氏の『日本の戦争力』もあわせて読んだのですが、こちらの方では「日本の戦争力」という言葉をキーワードに、自衛隊と米軍の戦力の補完関係から日米安保体制、そして国際社会の中で紛争の局面における日本の存在感・能力・役割を「戦争を遂行する軍事力」の話のみに限定せずに幅広く解説しています。

なかなかこういう俯瞰する本はないので参考になりました。

 


コメント
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