一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『建築家 安藤忠雄』

2010-08-18 | 乱読日記
究極の受注産業に身をおきながら究極の肉食系であり続ける強烈な個性の自叙伝。

建築家は有名人ほど多弁な人が多い。
職業柄、土地と資金を出す施主に、数ある同業者に中から自分に発注してもらうためにアピールしなければならないという事情もあるだろうし、何より無から有を生み出し続けるエネルギーがないと凡庸な雇われ建築家になってしまうからだろう。

それにしても安藤忠雄の語りのエネルギーは尋常でない。
以前取り上げた遠藤楽が自由学園というクライアントを父親から受け継いだのと対極の場所から建築家としてのスタートを切ったということもあるのだろうが、有名になってからも世間が期待する過去の作品、つまり「安藤忠雄らしさ」の安住せず、常に新しいものを造り続けてきた軌跡が語られている。
 
今や大御所になっているので、斜めから見ればきれい事や大風呂敷を並べているとも読めるが、それ以上に過去のプロジェクトで施主・パトロンを得たという経験を、どんなプロジェクトにもパトロンがつきうるという信念に変え、さらに大きな創造力の原動力にしているように思える。

語りで施主を魅了して建築を決意させ、受注してからも自分の意見を通し、最後は施主に感謝させてしまうためには、単なる語りの上手さでなく、並外れた情熱・信念・覚悟が必要ということを本書で身をもって示しているように思える。
(そして、このことはコンサルタント業などにも当てはまるんですよね。)


コメント
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