一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

メキシコ湾原油流出事故、油井の封鎖にめど

2010-08-05 | よしなしごと

朗報ではありますが、ケガでいえばやっと症状固定はしたので、これから後遺症がどれくらいかの診断をするという段階です。

英BPの油井封鎖作業が進展、流出原油の大半は除去
(2010年 08月 5日 06:35 ロイター)  

米メキシコ湾の原油流出事故で、英石油大手BPは4日、前日から開始された破損油井の完全封鎖を目指す作業「スタティック・キル」について、大きな成果があったと述べた。  

米政府はこの日、事故により流出した原油のうち4分の3近くが除去、分散、または自然に蒸発・分解されたと発表した。政府の報告書によると、焼却や回収などで25%が除去され、25%が自然に蒸発・分解、24%が自然または化学的に分散された。

上の写真は、1992年にアラスカに行ったときに、89年のエクソン・バルディーズ号の原油流出事故の被害救済にあてるために地元団体が流出原油と海水を小さなボトルにつめて1ドルで売っていたものです。
20年も経つのにまだ「水と油」にくっきりと分かれたままで、おもいっきり振っても元に戻ってしまいます。 

上の記事も「24%が自然または科学的に分散された」とあり「分解」ではないので、小さな粒子とかで残っている=生態系への影響はあるんじゃないでしょうか。
今回の事故では初めてに近いいいニュースなので楽観的な話を盛り込みたいと言うことかもしれませんが、環境への影響についてまで楽観視するのは早いのではないでしょうか。
 
しかも今回の原油流出量は油井からなので490万バレル( 参照 )とタンカー座礁によるバルディーズ号の流出の20倍にもなり、仮にアメリカ政府の発表のとおり流出原油の4分の3が除去・「分解」でなくなっていたとしても、漁業や生態系の回復(完全には無理かもしれません)には相当の時間がかかりそうです。


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高齢者の所在不明についての仮説

2010-08-04 | よしなしごと
「都内最高齢者」が死亡していたことをきっかけに調査してみたら、100歳以上の高齢者で所在不明が相次いで見つかっています。

テレビ取材などでも顔を隠しながら出てくるのはこの高齢者の娘や息子にあたる大体70~80歳の人々です。
じゃあ、孫たちはなんで気がつかなかったのかという疑問もわくのですが、実はこの現在70~80歳の人たちの頃から少子化が進んでいます。

下が合計特殊出生率のグラフです。
確か2.1を下回ると人口が維持できなくなるのですが、実は昭和30年代から2.1のレベルになっています。




つまり、現在親100歳超、子供70~80歳の世代は孫のいない世帯は結構多いと思われます。

それらの世帯は生活費としては貯金か年金しかないわけで、しかも他世帯との交流も少なかったりすると、100歳超の親が死んだ場合に、葬式をあげてしかも年金がなくなる=世帯所得が減るよりは、気がつかれるまでは生きていることにしようという誘惑にかられる人も多くなるのではないでしょうか。


あくまでも仮説なのですが。



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いまどきの倒産法務事情

2010-08-03 | 乱読日記

夏枯れにつき金融法務事情1902号「特集 いまどきの倒産法務事情」などを斜め読み。
倒産直前企業の詐害的会社分割に対する対応のところが面白かったのですが、妙な読後感があったのが松嶋英機弁護士の「会社更生手続きと事業再生制約論」 。 

JALの会社更生手続きにおいて公的資金が注入されている以上、更正手続きにおいても競合会社への配慮や逆に赤字路線の切捨てなどに対して一定の配慮をすべきとの主張への反論がなされています。  

会社更生法は債権者・株主等の利害を調整して会社を再生することが目的で、更正手続開始の決定に当たっても当該株式会社会社の事業の社会的有用性は要件として考慮されていません。 
つまり敗者復活の仕組みであって、それ以上ではないわけで、会社更生(や民事再生)という「敗者復活」のルールがある以上、企業間競争もそれを前提とすべきだ、というのは当然です。 
バブル崩壊時に民事再生したゼネコンがいち早く財務体質を強化して価格競争力を持って健全な(=負債を抱えたままの)他のゼネコンの経営を圧迫したとか、アメリカで航空会社が何度もchapter11になりながら再編を繰り返しているのもそうですね。

なので、総論は論旨に賛成なのですが、ひっかかったのはこの部分  

 この種の批判は今に始まったことではなく、昭和27年に会社更正法が制定されて以来、今日に至るまで大なり小なり存在する。
(中略) 
 しかし、更正会社は利害関係人の不利益や競合会社への一定の影響を考慮しても、なお、更正会社の事業を再生させる社会的な価値を有するがゆえに、更正会社や管財人らは最大限の努力をして事業を再生しなければならないのである。仮にいわれのない外部からの批判に萎縮して事業の再生が頓挫するとすれば、利害関係人の多大の犠牲や裁判所をはじめとする関係者の努力も無に帰し、本末転倒の結果になる。 
 JALの更正手続きにおいて併用された、事業再生ADR、企業再生支援機構についても、社会的に有用な事業体の再生を目的とする点で共通するのであり、このような議論が妥当する。  

特に「更正会社は・・・再生する社会的価値を有する」の部分は、素人が読むとあたかも「会社更生手続きが認められた会社は再生する社会的価値がある」という風に読めてしまって、その後の「関係者の努力」とか事業再生ADR、企業再生支援機構への言及とあいまって、会社更生手続きが錦の御旗のような印象を与えているように思います。

本来なら更正計画に基づいて事業再生を進めていったとしても、空運業は許認可事業である以上利便性に劣る便をすべてやめて儲かるところだけに特化するという方針が国交省の路線認可上認められない場合もありえます。

なので、税金が使われているから云々という批判は、資金を投入した企業再生支援機構や国交省に向けられるべきだという主張があってもおかしくないのですが、そこまでは踏み込んでいません。  

しかも脚注では株式会社企業再生支援機構法1条が引用されています  

株式会社企業再生支援機構は、雇用の安定等に配慮しつつ、地域における総合的な経済力の向上を通じて地域経済の再建を図り、併せてこれにより地域の信用秩序の基盤強化にも資するようにするため、金融機関、地方公共団体等と連携しつつ、有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中堅事業者、中小企業者その他の事業者に対し、当該事業者に対して金融機関等が有する債権の買取りその他の業務を通じてその事業の再生を支援することを目的とする株式会社とする。
(太字は私) 

これを読むと、大企業中の大企業であるJALの再生に関与すべきなのかという当初の議論を思い起こさせます。 
そしてこの議論は結局なし崩しになってしまったことを考えると、今回のJALの会社更生は、政府のメンツがかかったプロジェクトなので、JALの再生が最優先で国交省の航空行政の公益性という面からのけん制がきかないのではないか、という疑問が頭をもたげてきます。 

もっともそれは会社更生手続とは別の話ですが。  

松嶋弁護士は倒産法の大家でDIP型会社更生を主導した一人でもあるので、勢いあまって筆が滑ったという部分もあるのかもしれませんが、ひょっとすると「諸制度の大義名分を使って政府を味方につければあとは管財人が守ってあげますよ」という用心棒の売り込みなのかな、などともちょっと勘ぐってしまいました。

 

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『この1冊ですべてがわかる 普天間問題』+『日本の戦争力』

2010-08-02 | 乱読日記

普天間問題について過去の経緯も、沖縄米軍の中での位置づけも良く知らなかったので、書名につられて読みました。
著者の小川和久氏は「軍事アナリスト」という一見怪しげな肩書きですが、「日本初の」と名乗るだけあって、各種委員やコンサルタントとして政策立案に携わり、人脈も豊富な人のようです。

結論から言うと、本書は非常に優れた概説書でした。
全体で4章に分かれているのですが、後ろの2章は著者の負担間問題解決に向けた提言なので、「この1冊の前半分ですべてがわかる」と言ってもいいと思います。
在日米軍の米軍全体における位置づけ、在日米軍のそれぞれの役割、普天間基地の位置づけなどが簡潔に整理されています。 前半部で63ページなのですぐ読めます。

普天間問題の混迷の背景について印象に残ったフレーズ

普天間飛行場の移設問題が、日米間で返還に合意した96年からすでに14年という長い年月が経過しようとしているのに、いまだに解決できないでいるのは、防衛官僚や外務官僚たちだけの問題ではありません。
私たちの政治が、問題解決のまともな方向性を示すことができず、官僚機構にすべてを丸投げし、あまつさえ埋め立て利権にあずかろうとした政治家すら蠢いて、14年の月日が無為に過ぎ去ってしまったのです。普天間問題が迷走のあげくに暗礁に乗り上げている最大の原因は、政治の不在、政治の無責任なのです。


先に私は、普天間問題における政治の不在、政治の無責任を指摘しました。
現在の百家争鳴の状態は、政治の”不在”ではなく、”過剰”というべきかもしれません。少なくとも、過去に何度も浮上しては否定された考え方が再び繰り返されることは、全く生産的ではありません。

構図としては八ツ場ダムと同根かもしれません。
鳩山元首相の取り上げ方は軽率だったと思いますが、首相も変わったところで内閣でまずは論点と問題点の認識を共有して、その認識を沖縄県民に提示すべきだと思います。
腰だめ、思いつきの解決策を出すだけでは鳩山内閣の二の舞になるでしょう。


本書で参考文献として紹介されていた小川氏の『日本の戦争力』もあわせて読んだのですが、こちらの方では「日本の戦争力」という言葉をキーワードに、自衛隊と米軍の戦力の補完関係から日米安保体制、そして国際社会の中で紛争の局面における日本の存在感・能力・役割を「戦争を遂行する軍事力」の話のみに限定せずに幅広く解説しています。

なかなかこういう俯瞰する本はないので参考になりました。

 


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『恋愛適齢期』と『ロスト・イン・トランスレーション』

2010-08-01 | キネマ
あまりに暑いので週末は家でDVD鑑賞。
塩野七生の『日本人へ』で触れられていた2作が未見だったので選択。
最近面白いの映画がないのか自発的な選択をする気力がないのかは微妙なところ。


『恋愛適齢期』

ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンの大人のラブストーリー。
60台の男と50台の女のホンネを随所にのぞかせながらのウイットの効いた会話がごちそう。
ホンネの世界で勝負すると男は女に勝てない、というところをスッピンで目尻や首筋の皺も気にしないダイアン・キートンの熱演が証明してます。





『ロスト・イン・トランスレーション』

こちらはビル・マーレイ演じるミドルエイジ・クライシスの男が主人公。
小さなカタルシスはあったけど、主人公はアメリカに帰ったらいずれポルシェを買ってしまうんだろうな、というようなストーリー。
ヨーロッパだと文化へのコンプレックスがあるし、東南アジアとかアフリカだとボランティア精神に目覚めるし、南米や中近東だと文明の衝突をしてしまうので、「ロスト・イン・トランスレーション」が起きる舞台としては日本がちょうどよかったのかもしれません。


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